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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【617】山崎醸 純米吟醸 原酒 ひやおろし(やまざきかもし)【愛知】

2011.10.15 13:15
愛知県西尾市 山崎合資会社
愛知県西尾市 山崎合資会社

 祝日の夕方、歩いてふらりとH居酒屋へ。晩酌をやるためだ。入口左に置いている酒の冷蔵庫を見る。新しい酒が3本入っている。「山崎醸」「帰山」「屋守」。どれから飲もうか。「帰山」と「屋守」は、別のクラスのものを以前、飲んだことがある。ということで、初めて見る「山崎醸」から飲んでみることにする。

 酒蛙「知らない銘柄だなあ。これから飲むよ」

 店主「以前、飲んでいますよ」

 酒蛙「えっ? 知らないなあ」

 店主「『奥』ですよ。『奥』と同じ蔵なんですよ」

 酒蛙「なあんだ。『奥』は知っているよ。『奥』は、甘くて香るイメージだったなあ」

 店主「はい、そうでした」

 「奥 純米吟醸 無濾過無調整原酒」は、当連載【302】で紹介している。このときの印象は「甘い。香る。とろりとしている。デザート酒に向いている感じ」だった。かなりインパクトの強い酒だった。そのときの味をおもい浮かべながら、「山崎醸」を、まず冷酒でいただいてみる。

 酒蛙「旨いっ! 酸が立って適度な旨みが広がる。濃醇なイメージだ。しかし、後味は太くない。だから、濃醇でありながら、シャープな印象もある」

 店主「そうです」

 酒蛙「甘さが際立つ『奥』とは全然違うタッチだね。香りが抑えられている」

 店主「はい。『奥』とは全然違います。パンチがあります」

 酒蛙「吟醸香を抑えているが、ちょっとセメダイン(酢酸イソアミル系の芳香)っぽい香りがある。こりゃあいいわあ。きれいな酒だ。かなりの高レベル。すごいな。びっくりしたよ」

 店主「これはいいっすよ、これはいい」

 酒蛙「パンチがあるけど、品がある」

 店主「そう。おとなしめで品があります」

 このような酒質の酒は、ぬる燗にすると映える場合が多い。さっそく、ぬる燗をつけてもらう。温度は、ちょうど40℃。

 店主「わあああっ! ものすごく酸っぱい」

 酒蛙「酸がすごい。その反作用で甘みが引き出されて甘酸っぱい。というか、旨みがあるので旨甘酸っぱいぞ。こりゃ、旨いなあ。そして酸が全体を引き締めているから、飲み飽きしないよ。いいよ、これ」

 「奥」のイメージを描きながら飲んだので、その違いにただただ仰天するばかりだった。予断をくつがえす、自分の舌にぴたり合った酒に出会ったときは、ことのほかうれしいものだ。ああ、うれしいなあ。ああ旨いな。

 酒の裏ラベルには、この酒の口上が以下のように書かれている。

 「このお酒は、愛知県産米を全量使用し、人の手による麹造りと蔵独自のきめ細やかな醪管理を行う事で誕生しました。華やかな香りと濃醇な味わいを併せ持っているのが特長です。当蔵の自信作を心行くまでご堪能ください」

 ラベルでは「華やかな香り」が特長という。しかし、わたくしの舌には、そうは感じられなかった。ま、個人差ということにしていただく。

 この酒は、「夢山水」という酒米を醸してつくられたものだ。「夢山水」は1988(昭和63)年、愛知県農業総合試験場山間農業研究所(北信楽郡稲武町)で、「山田錦」に「中部44号」を交配し、選抜と育成をくりかえし開発した品種だ。2001年に品種登録された新しい酒米だ。「夢山水」で醸した酒はすっきりして雑味のない、きれいな酒になるといわれている。たしかに飲んだ印象は、前述した通り、きれいな酒だった。逆に言うと、この「山崎醸」は、酒米の特長をよく引き出した酒といえる。

酒蛙

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