メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【634】大典白菊 純米吟醸 雄町米 五五磨き 生酒(たいてんしらぎく)【岡山】

2011.11.3 17:54
岡山県高梁市 白菊酒造
岡山県高梁市 白菊酒造

 晩酌のため、なじみのH居酒屋へ。冷蔵庫の正面に「白菊」の文字が見える。

 酒蛙「おっ、珍しいな。『白菊』のラベルの地色は白なんだけどな。こんな赤いのは初めて見たよ」

 店主「あのね、その『白菊』じゃないんだよ」

 「その『白菊』」とは、石川県の「奥能登の白菊」のこと。この酒は、濃醇甘口で広く知られている酒だ。わたくし、けっこう好きだ(当連載【179】参照)。

 酒蛙「じゃあ、どこの酒なの?」

 店主「岡山県です」

 酒蛙「へ~っ、『大典白菊』ね。初めて見たよ」

 店主「はい。俺もです。買ったはいいけど、酒名の読み方が分からないので、売ってくれた酒屋さんに電話で聞いちゃったよ」

 酒蛙「知らない酒をよく入れたよね。なぜ、この酒を入れたんだ?」

 店主「あはは。『奥能登の白菊』を入れるつもりで間違ったんだよ。『白菊』が複数種類あるとは知らなかった」

 なるほど、だ。しかし、間違って入れたとはいえ、縁があってH居酒屋に“輿入れ”した「大典白菊」。ここは、きちんと飲んであげるのが、「大典白菊」に対する礼儀である。まずは、冷酒でいただく。

 酒蛙「酸が立つ。その酸に苦みが伴う」

 店主「甘さが固まって押し寄せるイメージだ」

 酒蛙「吟醸だが吟醸香が抑えられている。コメの風味があふれる。存在感がある。甘さもある。余韻は苦味だね」

 雄町酒らしい、愛想があまり無いが、オマチスト(雄町で造った酒が好きな人をいう新造語)のわたくしとしては、そこがうれしい。そして、あまり例をみない飲み口のお酒だった。が、舌が酒に慣れてきたら、展開が違ってきた。

 酒蛙「飲み進めていたら、甘さが前に出てきた。飲み進めていたら、酸が引っ込んだぞ。おおっ、二通りの味が楽しめるよ」

 わたくしは、この酒と粕鍋と合わせた。別に、わたくしが粕鍋を選択したのではなく、先付けとして店主が出したものだ。量が多いので、この日のアテは粕鍋だけで済ます。

 次に、ぬる燗(40℃)をいただく。

 酒蛙「おおっ、酸っぱい。酸が前に出て来るぞ」

 店主「うん、酸っぱい。まろやか。味が、やわらかく膨らむ」

 酒蛙「甘酸っぱい飲み口になる」

 店主「はい、甘酸っぱいですね。武骨さが消える。これ、全然いい。好きだあ」(「全然いい」なんて、店主は相変わらず若者言葉を使う)

 酒蛙「余韻はやっぱり苦み。燗にしたら、コメの風味も一段と強調されるね」

 この酒瓶の裏ラベルには、以下の口上が書かれている。

 「岡山県特産の酒造好適米『雄町』(おまち)を厳選し、自社精米で55%まで磨き上げ、備中杜氏が丹精込めて醸しました。雄町ならではの柔らかくふくらみのある味わいと香りをお楽しみ下さい」

 「柔らかくふくらみのある味わい」の部分は同意するが、「香りをお楽しみ下さい」の部分は、ちょいと首をかしげたくなる。なぜなら、前述したように、わたくしは、この酒は香りが抑えられているように感じたからだ。

 このあとわたくしはH居酒屋で、「仙禽 山廃 亀ノ尾80」を飲む。甘めのフルボディー酒。いつ飲んでも旨い。

 「仙禽」を飲み終わってからわたくしは、T居酒屋に移動し、「鍋島 生もと純米 雄町」「山和 純米吟醸 美山錦50」「司牡丹 船中八策」を飲む。折りしも、プロ野球セリーグのクライマックスシリーズを大型テレビが中継していた。

 YS-G戦。劣勢だったYSが、同点打、逆転打。いやはや、いい感じの試合展開だ。ふだんはYBが贔屓チームだが、今回はYSを応援する。飲みながら応援し、店主とともに盛り上がる。ま、昭和の居酒屋的雰囲気だな。

酒蛙