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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【690】豊盃 つるし酒 大吟醸(ほうはい)【青森】

2012.1.16 22:03
青森県弘前市 三浦酒造
青森県弘前市 三浦酒造

 類似他社のYは昔から、わたくしを兄貴のようにみてきた。わたくしは、お前を弟だとはおもっていない、と言っても、兄貴扱いする。だからときどき、一緒に飲んできた。もちろん、飲みの払いは兄貴だ。そんな関係になってから30年ほどたつ。

 その弟分が、なにをトチ狂ったのか、酒を送ってきた。「豊盃 つるし酒 大吟醸」。「豊盃」は知っているが、「つるし酒 大吟醸」は知らない。はて、いくらくらいする酒なんだろう。送り主の気持ちを探るため、ネットで調べてみた。どひゃ~~っ! が~~んっ! おっそろしく高い酒だった。むろん、そのような金額の酒は、わたくし、買ったことがない。はてさて、こんな酒にふさわしいお返しは、いったいどんなものなのだろう。悩む。それはさておき、いただいてみる。

 温度は15℃。ほぼ「涼冷え」の温度でいただく。大吟醸なら、このくらいがいいんじゃないかなあ、と勝手におもっての温度設定。まず、華やかな立ち香が来る。含み香も華やか。フルーティーで、果実香が豊か。一番インパクトがあるのが、香りだ。この吟醸香は一連の豊盃に共通してあるDNA的香り。この酒の香りは、一連の豊盃の中でも、とりわけ上品な香りだ。

 酒質は、とろりとしたタッチで、旨み、甘み、香りが一気に開き、あっという間に潔くキレていく。奥にやや酸味がある。余韻に辛みと、やや苦みがある。やわらかで、なめらかなタッチ。ふくよか。バランスが良く、完成度が高い。

 桐の化粧箱の中に、栞が入っていた。それには、以下のように書かれていた。

 「極寒の津軽、白い吐息の中、蔵の中にはピンと緊張感が走る。杜氏のかけ声で『つるし酒』の作業が始まる。酒袋といわれる袋に、もろみが入り、蔵人の手から手へと渡り吊るされる。機械の力を一切かりず、一滴づつ自然の力で落ちてくる。(別名『雫酒』ともいう)

蔵人達の情熱が一つの輪になり、蔵最高峰のお酒が生まれる。その年により数量が異なる限定酒です。和みのある至福の逸品を、御賞味ください」

 蔵最高峰のお酒かあ。稀少なお酒を飲めるしあわせをかみしめながらいただく。インパクトがある香りだが、酒質はくどくはない。だから、けっこう飲み飽きしない。いい酒だなあ、とおもいながら、そして、弟分に感謝しながらいただく。

酒蛙