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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【692】房島屋 純米 7号酵母 超辛口(ほうじまや)【岐阜】

2012.1.18 17:29
岐阜県揖斐郡揖斐川町 所酒造
岐阜県揖斐郡揖斐川町 所酒造

【3人酒 全2回の②完】 

 T居酒屋に、遠来の酒友K、Nを招いての3人酒。午後6時スタートの予定だったが、予期せぬトラブルなどで、わたくしが2人に合流したのは2時間遅れの午後8時だった。が、急ピッチで酒を飲み、間もなく2人に追い付く。

 T居酒屋では、「浪花正宗」「獺祭」「鍋島」を飲み、近くのM居酒屋に歩いて移動する。M居酒屋に転戦するのには、ある目的があったからだ。それは、「新政 やまユ」シリーズを飲むこと。同シリーズを飲んだわたくしが感激、それをKに伝えたら、Kは「ぜひ飲みたい」。こうしてKは、遠路はるばる当地に来たのだった。

 M居酒屋に入るや「『やまユ』ください」と注文。だが、驚くべきことに「無くなったんですよ」と店主。聞くと、桃色ラベルの「やまユ」、青色ラベルの「やまユ」とも、それぞれ3本ずつ入れたのに、すぐに無くなってしまったのだ、という。

 「ショック! 『やまユ』を飲みに来たのに」と動揺を隠せないK。高額な航空運賃が無駄になったため、Kの心の葛藤たるや、いかばかりか。「申し訳ありません。人気なんですよ。すぐ無くなるんですよ」と、消え入りそうな声で謝る店主。

 が、すぐに態勢を立て直し、別の酒を選ぶ。しばし、冷蔵庫を眺めた結果、選んだのは「房島屋 純米 7号酵母 超辛口」だった。「房島屋」は、何種類か、これまで飲んだことがあるが、いずれも濃醇酸味の典型的なフルボディー酒だった。が、この酒は、これまでのイメージとはまったく違う「超辛口」のラベルが貼られている。これは面白そうだ。

 飲んでみる。「かれぇ~なぁ~!」。まず、Nが反応した。へ~、「房島屋」も、そんなに辛い酒をつくるのか、とおもいながら、わたくしも含む。たしかに辛口だが、コクがある。辛さと酸味がすこし、それに旨みがある。含んだ最初は、それほど辛さを感じないが、だんだん辛さが増し、余韻も辛さ。おもわず「辛いなあ」と言いながら、余韻を楽しむ。

 なかなかいいではないか。濃醇酸味フルボディーの「房島屋」もいいけど、超辛口の「房島屋」もまたいい。単なる、ドライな超辛口にはせず、旨みやコクも出しているあたりは、さすが「房島屋」だ。

 瓶の裏ラベルのスペックは「日本酒度+10、酸度1.8」。たしかに超辛口の数値。しかし、+10ほどには感じないのが面白い。そして、ラベルには「ぬる燗でもおいしく飲むことができます」と書かれている。今回はぬる燗を試してみなかったが、この酒質なら、たしかにぬる燗も良さそうだ。

 また、蔵のホームページでは、この酒を「房島屋風『超辛口』。キンキンに冷やすとより味の輪郭がはっきりします。夏はロックもオススメ」と紹介している。

 超辛口酒の次に飲んだのは、バランスが絶妙な「醸し人九平次 純米大吟醸 別誂」(当連載【370】参照)。「これは、すげぇ~酒だ。名古屋にこんな酒があるのかああ???」。その旨さにKは激しく反応する。

 その次は「与右衛門 特別純米 無濾過生原酒 直汲み 自家田美山錦55%」(当連載【390】参照)。そのセメダイン香(酢酸イソアミル系の芳香)を楽しみ、最後は「益荒男 山廃純米 無濾過生原酒」(当連載【59】参照)。どっしり骨太で、濃淳酸味フルボディー酒。圧倒された3人は「旨い! 旨い! 旨い!」としか言えず、言語が幼児化。現代の名工・農口尚彦さんが醸した酒を存分に楽しんだ。

酒蛙