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日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【729】モヒカン娘(もひかんむすめ)【青森】 

2012.3.1 21:29
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青森県弘前市 三浦酒造店
青森県弘前市 三浦酒造店

【娘シリーズ 全2回の①】

 わたくしは、王道的な旨い酒を飲みたい。が、その一方で、キワモノ的な酒にも強い関心を示す。キワモノ的な酒名(たとえば「刑事」「死神」「タクシードライバー」…)、キワモノ的なラベル(たとえば「色おとこ」「雪男」…)。いちど知ると、飲まずにはいられない。要するに、遊び心が人よりかなり多くあるのだ。

 そのわたくしのキワモノ感性をくすぐるメールが、酒友Zさんから来た。わたくしがキワモノラベルに執着していることを知り尽くした上でのメールだ。「こんなのありますよ(笑)」といった感じで送られてきたメールに記されたリンクアドレス。

 どれどれ、と軽い気持ちでクリックしたら、「味ノマチダヤ」のサイトに飛んでいき、ドドーンと「モヒカン娘」のラベル!!!

 な、な、なんだ、このラベル。まず、この旭日旗はな、な、なんなんだああ??? 帝国海軍旗か?海自艦旗か? そうおもわせるような度肝を抜く旗をバックに、な、な、なぜモヒカン刈りの女性なのだ??? その女性の浴衣模様が、な、な、なぜアサガオなんだあああ??? そして、「モヒカン娘」というネーミングは、いったいぜんたい、な、な、なんなんだあああ???

 まちがいなく、わたくしがこれまで見てきた酒のラベルで、一番印象が強い、というか衝撃的というか、はたまたブッ飛んでいる、というか、インパクトが強いというか、ま、そんなトンデモラベルだった。わたくしは逆上した。ほしくてたまらない。飲みたくてたまらない。実物をこの目で見てみたい。矢も盾もたまらず、注文した。

 「モヒカン娘」がやってきた。う~む、やっぱしエグい。このラベルを生で見られてよかった、どうせ、味なんて期待できないからね、とラベルを見ただけで満足する。

 だって、この酒は、1升1,890円。普通酒並みの価格。しかも、スペックもクラスもまったく不明。こりゃ、てっきり普通酒だあ、旨みも何も無い酒とおもい込んでいた。だから、味には全然期待していなかった。

 ところが、だ。世の中、分からないものだ。このトンデモラベルのモヒカンが、旨かったのだ。まず冷酒で飲んでみたが、腰を抜かすほど驚いた(抜かさなかったけど)。

 旨みあり、甘みあり、酸味あり。フルーティーな香り華やか。とろり感があるものの、すっとキレる。やわらかい飲み口。かなりのハイレベルではないか。これはびっくり。下手な純米吟醸以上の酒質だ。しっかりした味。余韻はやや強い甘み。これはすごい。全体として甘旨酸っぱい飲み口で、バランスが良い。ジューシーだ。飲みやすい。

 これは驚いた。ラベルを見ると、蔵は「豊盃」蔵ではないか。だったら、不味いわけがない。旨くて当然。豊盃蔵と組んだ、「味のマチダヤ」の企画商品だったのか。企画モノというのは、味的にはイマイチなものが多いが、こいつは違っていた。旨いのだ。

 次に、ぬる燗(40℃)にして飲んでみた。

 辛さが出てくる。華やかな香りが出てくる。もともとキレが良いが、キレが非常に良くなる。甘旨酸っぱい感じが強まる。軽快感がある。余韻は辛さだが、すっといなくなる。ややアルコール香がするが、気にならない。豊盃DNA的な複雑な旨味感がある。いやはや、すばらしい。

 ラベルを見ると「原材料名 米(国産)・米麹(国産米)」としか書かれていないので興ざめだが、後日、あらためて酒屋さんのホームページを見ると、なんとクラスは「純米」ではないか。それまでは普通酒とおもっていた。しかも原料米は、なんと「山田錦」ではないか!

 酒屋さんのホームページは、この酒に「スーパー晩酌酒」というタイトルをつけていた。なるほど、1,890円のスーパー晩酌酒なら、酒のクラスもスペックも原料米品種もラベルに書くとかと書かないとかと違う次元なんだ。仕事が終わった、帰宅した、さあ、難しいことを考えず、クイクイ飲もう、というような酒なんだ。わたくしは、そう理解した。

 それにしても、ああ驚いた。エグいラベルなのに、真っ当な旨さの酒。このアンバランスに眩暈がする。

 ちなみに、ネット情報によると、「モヒカン」の語源は、「『も』う『ひ』とつ『かん』(燗)酒を」に由来するらしい。

酒蛙

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