メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【748】宗玄 漲 特別本醸造 無濾過生原酒(そうげん、ちょう)【石川】

2012.3.25 10:44
石川県珠洲市 宗玄酒造
石川県珠洲市 宗玄酒造

【K居酒屋にて 全4回の②】

 酒友「オタマジャクシ」との飲み会。年上のわたくしが「蛙」なら、年下の彼は「オタマジャクシ」。彼は最近、そう名乗っている。

 トップバッター「天遊琳 手造り 純米 直汲み生 伊勢錦2009」の旨さに仰天した蛙とオタマジャクシが次に選んだ酒は「宗玄 漲 特別本醸造 無濾過生原酒」だった。「宗玄」はこれまで、10種類ほど飲んだことがあるが、これは初めて。酒メニューにこれを見つけ、即断即決だ。

 「漲」。酒メニューにこの字を見たとき、ウスバカ蛙は「ん????」。読めない。しかし、賢いオタマジャクシは「みなぎる、だああ」。なるほど。どこの世界でも“愚兄賢弟”。

 ちー女将のYちゃんを呼んで、この酒を注文する。「『ちょう』ね」とYちゃん。「えっ? 『みなぎる』じゃないの?」と愚兄賢弟。「あ~ら、ラベルに『ちょう』って書いているのよぉ」とYちゃん。な~んだ。

 Yちゃんが持ってきた瓶を見てびっくりした。各種「宗玄」はたいてい、「宗玄」の2文字を強調するラベルデザイン。しかし、これは違っていた。「漲」1文字が個性的な筆で、ドドドーンと書かれているではないか。書くというより、パフォーマンスか。読めない。真ん中の「弓」がずいぶん強調されている。

 さて、45℃のお燗でいただく。

 酒蛙「直前に飲んだ『天遊琳』よりは軽快な飲み口だが、旨みをちゃんと感じる」

 オタマジャクシ「こっちの方が『天遊琳』よりは甘みがすくない」

 酒蛙「後味や余韻に辛さがある。飲みやすいね」

 オタマジャクシし「こっちの方がストレートな感じ。いいですねぇ~♪」

 酒蛙「飲み進めて、口に慣れてきたら、酸を感じるしっかりした味で、なめらかな感じにおもえてきた」

 オタマジャクシ「丸くなってきました。後口は辛味が残ります」

 酒蛙「そうそう。そんな感じ」

 あらためて、ラベルを見る。表ラベル右下の隅に「みなぎる は わが こころいき」というフレーズが手書きされている。「漲」(みなぎる)の、力強く勢いのある字は、蔵元さんや杜氏さんの心意気を具現化したものなんだ、と分かる。

 そのようなおもいで、あらためて、この酒を味わう。やや軽快で、すっきりしたタッチながらも、豊かな味わい、芯のある力強さを感じる。ラベルの「字」の方が元気溌剌力強いが、おおむね、字で酒質を具現化している、とみた。

 瓶の裏ラベルに、ラベル字を書いたとおもわれる人の自筆散文が掲載されている。

「ある日、ある時、

杜氏も蔵人もいない

明和蔵から平成蔵までを

案内いただき、

諸道具の美意識ある片付け方に

次の出番までゆっくりやすめるように

とのいつくしみを

五感でうけとめ、

でてきた言葉は

「みなぎるは わがこころいき」

抒情書家 室谷一柊」

 ここで、表ラベルの「漲」のメーン文字と、右下の「みなぎる は わが こころいき」は、室谷一柊さんの筆によることが分かる。

 ネット情報によると室谷一柊さんは、京都美山で21年間、創作活動をしていたが2006年5月、家族とともに奥能登の石川県鳳珠郡能登町に移り住み、創作活動を続けている。

 ラベルの原材料名表示は「米(国産)・米こうじ(国産米)醸造アルコール」だけで、原料米の品種表示はしていない。いい酒なんだから情報開示をしていただきたい。

酒蛙