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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【772】綿屋 特別純米 生原酒 美山錦(わたや)【宮城】

2012.4.24 21:10
宮城県栗原市 金の井酒造
宮城県栗原市 金の井酒造

【K居酒屋にて 全3回の①】

 午後9時まで業界の飲み会が予定されていた。飲み会が終わっても飲み足りないはずだ。ということで、事前に仕事のパートナーHさんに連絡をした。「午後9時から飲まないか? いつものK居酒屋で」と。「いいですとも、いいですとも」とHさんは二つ返事。

 予定通り午後9時前に飲み会は終わり、わたくしは強い雨の中、傘をさしながら約15分歩いてK居酒屋へ。Hさんは2時間近く前に到着し、すでにだいぶ出来上がっていた。「やあやあ、しばらく」などとあいさつするが、1カ月ほど前、一緒に飲んだばかり。まあ、1カ月が「しばらく」という飲み関係だ。

 酒メニューを見る。ラインナップはあまり変わっていない。少ないニューフェースの中から「綿屋 特別純米 生原酒 美山錦」を選ぶ。ん? このラベル、以前、見たような気がする。飲んだことがある酒を、初めての酒のつもりで飲み、あとから飲んだことがある、と気付いたときは、かなりショックを受ける。

 最近、そんなことが非常に多くなった。たぶん、アルコール性健忘症なのだろう。いや単なる歳なのかもしれない。ということで最近、健忘対策として新兵器を導入した。iPod touchだ。これに飲んだことのある酒のラベル写真(自分で撮影したもの)を入れ、検索で写真を呼び出す。検索は県別でもいいし、キーワード検索でもいい。そうすれば、初めての酒かどうか、たちどころに分かる。かなりの写真を入れたため、時間は相当にかかった。

 その汗と涙の結晶iPod touchを駆使し、「綿屋」で検索してみた。やっぱり同じラベル写真が出てきた。自分の記憶は正しかった。しかし、ラベルは同じでも中身が違っていた。「綿屋 特別純米 幸之助院殿」(当連載【520】参照)。ということで「綿屋 特別純米 生原酒 美山錦」は、わたくしにとって初めての酒であることが分かる。いやはや便利な文明の利器。ぬる燗でいただく。

 H 「へー! 美山錦が、こんな酒質になるんだあ。ビターだね」

 酒蛙「酸とビター。キレがものすごく良い。酸もすごい。旨みがすこしあとから来る」

 H 「甘みを抑えた感じ」

 酒蛙「辛さがいいね。しかもコクがある。『綿屋』的なきれいなお酒だ」

 H 「これ、美山錦ですかあ?」

 酒蛙「俺個人的には、美山錦は、もっとやわらかくまろやかな旨みを感じるイメージを持っていたけど、これは苦みと辛さが強調される。俺にとっては新しい美山錦の世界だ」

 H 「肉料理とか脂のある料理に合う酒質だとおもいますね」

 いやあ、旨い酒だった。しっかり芯の通った、存在感のある酒だった。酸と旨みと苦みがいい。最高の食中酒。最初にこんないい酒を飲むと、気持ちがたちまち高揚するものだ。とくにわたくしは3時間ほど飲んできたため、下地ができあがっており、瞬間的に高揚した。ああ、酒っていいなあ。

酒蛙