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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【964】酒一筋 純米大吟醸(さけひとすじ)【岡山】

2012.11.29 17:04
岡山県赤磐市 利守酒造
岡山県赤磐市 利守酒造

【水無月会月例会 全5回の①】

 不特定少数の酒飲み人たちが月1回、Y居酒屋に集う「水無月会」。年齢、職業、フルネームも知らないまま足掛け4年、毎月開いてきた。今回、メンバーの女性Sさんの友人という女性Nさんが加わった。固定メンバーになるのか、今回限りの参加なのか分からない。そんな緩い会だ。唯一のルールは、わたくしたちが飲んだことがないお酒を女将が5種類ほど用意すること。

 今回は9人が参加。トップバッターは「酒一筋 純米大吟醸」。雄町米を復活させた蔵として知られる利守酒造のお酒だ。雄町はいまや人気酒米で、あちこちの蔵でこのコメで醸した酒をつくっているが、山田錦はどこの蔵でつくっても、「あ、山田錦だなあ」という共通点のようなものを感じるが、雄町の場合は、蔵によって酒の表情がまったく違う。べらぼうに甘みが出たり、やたらに硬かったり、力強かったり、水みたいな酒だったり…。できた酒がこれほど違う酒米もそんなにないのではないだろうか。

 その中で利守酒造は、雄町の本家本元。この“本家蔵”の雄町酒は、地味めで愛想はあまりないが、どっしりした存在感をみせ、飲めば飲むほど旨いとおもう酒、というイメージをわたくしは持っていた。

 この酒の瓶の裏ラベルに、雄町米を復活させた経緯について書き込んでいる。以下に貼り付ける。

 「酒蔵がある軽郡(旧・軽部村)は、昔から『雄町米』の中でも特に良質の物が採れる地域として知られ、戦後の農業の機械化と共にいつしか幻となっていたこの軽部産『雄町米』の復活に立ち上がったのが利守酒造です。当時の農家にとって、『雄町米』の栽培は簡単に着手出来るものではありませんでした。

 しかし、利守酒造の熱心な姿勢に賛同する人々が徐々に増え当社が農業に所得保証するなどのリスクを背負うことで『雄町米』の栽培がスタートしました。

 その後、良質米推進協議会を発足させ酒蔵と農家、農協、農業試験所さらに行政が一体になって『雄町米』の栽培を推進。

 この復活させた軽部産『雄町』を『赤磐雄町米』と命名し利守酒造では使用しております。

 『酒造りは米作りから』と言われるように、米作りから酒造りまでを一貫したつくりが出来る蔵を目指しています」

 強いプライドと意思を感じる。さて、冷酒でいただいてみる。

 酒蛙「旨いっ! 旨みが適度で、樽香の風味がする。余韻に苦みがある」

 男性Iさん「表現がむずかしい。わたしは初めて体験した風味」

 男性Sさん「おいしいなあ」

 酒蛙「おとなしめで上品な酒。大吟醸にしては香りを抑えている」

 男性Iさん「吟醸香とは違う風味がある」

 酒蛙「樽香的、古本屋的、複雑的風味がする。奥に若干、酸がある。味に深みがある。じんわり、しみじみ旨い酒だ。いいね、本家雄町酒らしいよ」

 女性Oさん「ラベルによると中辛ですって」

 女性Nさん「私には中辛には感じない」

 酒蛙「辛くはないけど甘くもないから中辛さ」

 全員「あははは」

 冷酒を飲んだとき経験的に、燗上がりしそうな酒質におもえた。このため、女将にぬる燗をつけてもらう。このところ女将は、めきめき燗付けの腕を上げ、希望する温度ちょうどの燗酒を提供する。さて、ぬる燗ができた。 

 旨みが出て、酸が出る。味が広がる。味わいが豊かになり、メリハリも出る。非常にまとまっている印象。実においしい。みんなも「こりゃ、旨いなあ」。たちまち1升が空になった。飲み会のとき、舌は正直だ、とづくづくおもう。旨い酒はすぐ空になる。飲みにくい酒はいつまでも残る。

 この酒の精米歩合は50%。

酒蛙