×
メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【969】雑賀 雄町 純米吟醸 ひやおろし 生詰(さいか)【和歌山】

2012.12.4 17:15
和歌山県岩出市 九重雑賀
和歌山県岩出市 九重雑賀

 なじみのH居酒屋の店主から電話がかかってきた。「Tさん(店主とわたくしの共通の友人)が飲みに来ている。蛙さんも飲みにこないか」。いいとも、いいとも。午後8時ごろ、H居酒屋の暖簾をくぐる。Tは、ビールを飲み終え、酒を飲み始めたところだった。

 Tは勝手に飲んでいるので、わたくしも勝手に飲むことにする。店の冷蔵庫の中から「雑賀 雄町 純米吟醸 ひやおろし 生詰」を選ぶ。Tは「俺もそれを飲む」。3人で「雑賀」を味わってみることにする。まずは冷酒で。

 酒蛙「酸が出ている。余韻に苦みがある。吟醸香は抑えられている」

 店主「苦みが出ています」

 T 「うん、苦みがある」

 酒蛙「飲んでいると、だんだん苦みが強くなる。ビター酒だ」

 T 「ちょっと酒が若いかな」

 酒蛙「厚みは適度。旨みも適度。それほど辛くない。ラベルに書いていないけど、酒度は+3~+4くらいかな」

 T 「うん、そのくらいの感じだね」

 酒蛙「これは酸苦複雑味酒だ」

 わたくしの飲む流儀として、冷酒のあとは燗酒を試してみる。まずは40℃のぬる燗で。

 酒蛙「酸がとんがらなくなり、丸くなった。すこしやさしくなった」

 T 「苦みもとんがらなくなった。もすこし温度を上げて飲んでみたいな」

 錫のちろりをお湯に入れ、温度を50℃まで上げてみる。

 酒蛙「おやおや、酸が立ってきたよ」

 高い温度の燗酒もいいが、総じて、40℃くらいの温度が、わたくしたちの舌にはベスト温度だった。苦みの強い、“大人の酒”だった。地味めで、いささか愛想のない武骨チックなお酒。飲み飽きしない、いかにも雄町酒らしい仕上がりだった。オマチスト(雄町酒の好きな人のことをいう新造語)のわたくしとしてはうれしいお酒だった。食中酒としては抜群の実力を発揮ししそうだ。ラベルによると、原料米は雄町100%、精米歩合は55%。

 ラベルに興味深いことが書かれているので、次に転載する。「(備考)ラベルの模様は私共の祖先である雑賀一族の『旗指物』をイメージしたものです」

 当連載【208】の「雑賀 純米大吟醸 本生無濾過」の項に、雑賀衆について書いたことがあるので、以下にその部分を再掲する。

 「雑賀は、『雑賀衆』で知られる。ネット情報によると、雑賀衆は、紀州雑賀荘を中心とする一帯(現在の和歌山市の雑賀崎)を根拠地とした戦国時代の地侍集団。大量の鉄砲を使いこなす戦術に優れ、領土防衛のほか、戦国大名の傭兵として各地を転戦。信長・秀吉などの権力とは一線を画し、独立性を最後まで保ち続けた、という」

 酒のラベルに「私共の祖先である雑賀一族」と書いているということは、今の世でも子孫の方々は、雑賀衆に、かなり強い誇りを持っていることがうかがえる。時代を超えて先祖に誇りを持ち続けるのは、すばらしいことである。

酒蛙