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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【970】薩州正宗 純米酒 生貯蔵酒(さっしゅうまさむね)【鹿児島】 

2012.12.5 18:14
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鹿児島県いちき串木野市 薩摩金山蔵
鹿児島県いちき串木野市 薩摩金山蔵

【日本酒研究会月例会 全7回の①】

 異業種の“酒飲み人”が月1回、M居酒屋に集う日本酒研究会。研究会とは名ばかりで、単なる飲み会だ。今回はフルメンバーの6人が参加した。

 この日本酒研究会3~4年前、47都道府県の酒を飲んでみよう、と目標を立て、飲んだことがあったが、鹿児島県だけに酒蔵がなく、46都道府県どまりだった。いちおう“全国制覇”したのだが、イマイチ釈然としないものが残った。

 その後、「鹿児島県の酒」と銘打った「幸寿」(当連載【758】参照)があるのを知り、M居酒屋の店主に入れてもらい、味わった。コメ、水、酵母は鹿児島県産なので「鹿児島県の酒」と銘打っているわけだが、醸した場所は熊本県の鹿児島県境付近。これまた、イマイチ釈然としないものが残った。

 そんな状況の中、去る10月下旬、当連載の読者「むしゃ」さんが、「せんだって、鹿児島県産の清酒が発売になりました」とコメント欄に書き込み、教えてくれた。おおおっ、今度こそ、正真正銘の鹿児島県の酒だ。勇躍、M居酒屋の店主に指令を出す。「ぜひとも、入れてくれ」。こうして、「薩州正宗」が、わたくしたちの目の前にあらわれた。

 蔵のホームページでは、清酒をつくったいきさつについて、「薩摩でただひとつの清酒」という主見出し、「本格焼酎の進化のために。薩摩の清酒の価値がそこにあります」という脇見出しのあとに、以下の文を掲載している。

 「この本格芋焼酎の本場、薩摩の地にあって、約40年間造られてこなかった清酒。これは、当時、南国鹿児島では温度管理が難しく、安定的においしい清酒を供給しづらい環境であった事が大きく起因しています。

 そういった背景のもと、各焼酎蔵は、本格芋焼酎がどうやったらおいしくなるか日夜、研究に研究を重ね今日のような全国のみなさまにおいしく飲んでいただける本格芋焼酎をお届けすることができるようになったのです。

 ただ、本当にいまある本格芋焼酎の姿が完成形なのでしょうか?

 『いま』を進化するために薩摩金山蔵は薩摩で唯一の清酒を造りました。

 本格焼酎造りでは見えなかった知恵や技といった気づき、そういったものを次の焼酎造りに活かせるように、清酒の名門蔵元で修行を重ねた杜氏が、どこに出しても恥ずかしくない薩摩の清酒を造り上げました」

 また、「薩摩金山蔵が清酒を造る意味―本格焼酎の進化と真価を求めて」と題し、以下の文も掲載している。「本格焼酎を通じて薩摩の文化と歴史を次の時代に継承する薩摩金山蔵は、2012年より清酒造りに挑戦します。それは伝統を守るだけでなく、異なる領域から学ぶことで進化を重ね、本格焼酎の真価を高めることができると、信じているから。薩摩の清酒と焼酎の未来に、どうぞご期待ください」

 ふ~む。より良い芋焼酎をつくるために清酒づくりに挑戦するとは驚きだ。清酒づくりから、あたらしい焼酎づくりの技を見つけよう、という。なんとも斬新な発想ではないか。が、主が焼酎で従が清酒というイメージはぬぐえない。さて、いただいてみる。

 M 「昔風の香りだね」

 酒蛙「おっ、丸くない感じ。タッチがちょっと粗いね」

 J 「酸がある」

 酒蛙「うん、酸が強い。樽香がちょっとする。若いというか、ちょっとこなれていない感じがする。しかし、想像していたより、かなり良い出来だとおもう」

 M 「コクがちょっとすくないね」

 J 「そりゃ、最初だからしょうがないよぉ~」

 店主「想像していたより飲みやすい。のどにちょっと引っかかる感じがするが、鹿児島で清酒をつくったのはとてもいいことです」

 H 「よくぞデビューしてくれた」

 酒蛙「余韻に甘みがずーっと続く。辛口酒じゃないね」

 これで、47都道府県全国制覇の目標達成だ。麻雀好きのHは、これを「役満達成だ」と表現。麻雀がからっきし下手なわたくしは「13牌じゃなくて47牌の役満だあ」と続けた。

 蔵のホームページは、この酒について「高品質の米・米こうじ・いちき串木野の冠岳伏流水を仕込み造られた清酒です。米のふくよかな香りとふくらみもありながら、きれいな味わいが楽しめます。精米歩合70%・アルコール分15%、日本酒度は純米吟醸酒に比べ弱く、酸度のある清酒です」と紹介している。言葉を尽くした自信満々の表現だ。たしかに酸味のある酒だった。

 裏ラベルには「焼酎蔵が本格焼酎の進化のために清酒を造りました。通常の本格焼酎造りでは得られない真価を求めて、米、米こうじ、冠岳の伏流水だけで丁寧に造った薩摩の清酒をぜひ、心ゆくまで味わってください」とPR文が載っている。

 ここで、とんだハプニング。この文章は字が小さいうえ、M居酒屋の店内は薄暗く、しかもわたくしたちは老眼で小さな字が見えない。この三重苦の結果、Jが、こともあろうにPR文の中の「進化」を「悪化」と読み違えたのだ。

 J 「ラベルによると、本格焼酎の悪化のために清酒を造ったんだってよ」

 H 「焼酎が売れなくなったのか? で、酒を造ったのか?」

 J 「あっ、違った、違った。悪化じゃなく、進化だったああ!」

 H 「真逆じゃないか」

 全員「大爆笑」

 鹿児島県40年ぶりの清酒販売に先立ち、蔵では「薩摩の清酒 名付け親」を募集。7,000通をこえる応募の中から去る9月23日、「薩州正宗」という名前が決まった、という。応募の数の多さにびっくりだ。焼酎王国でも清酒に対する関心が高いんだなあ、とあらためておもう数字だった。

酒蛙

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