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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【1005】五十嵐 純米吟醸 直汲み 無濾過生原酒(いがらし)【埼玉】

2013.1.16 17:07
埼玉県飯能市 五十嵐酒造
埼玉県飯能市 五十嵐酒造

 日曜日の夕方。ふらりと近くのH居酒屋へ。考えてみれば、新年初めて、H居酒屋の暖簾をくぐる。例年であれば10日までに顔を出すのだが、今回は出遅れた。冷蔵庫を見たら、新しい酒が入っていた。「五十嵐 純米吟醸 直汲み 無濾過生原酒」。見慣れない銘柄だ。後で知ったのだが、この蔵の主銘柄は「天覧山」。これなら知っている。

 酒蛙「なぜ、この酒を入れたの?」

 店主「五十嵐さんを意識して入れました」(なるほど、五十嵐さんはH居酒屋の常連さんの一人だ)

 酒蛙「五十嵐とは苗字みたいな酒名だけど、なぜ五十嵐なんだろう?」

 店主「醸造元が五十嵐酒造だから」

 酒蛙「あ、なるほど」

 さて、まずは冷酒でいただいてみる。

 酒蛙「旨いっ! 立ち香にコメの風味がある。酸が前に出て、含み香の吟醸香が適度。フルーティー、果実的。上品な旨みがやわらかくふくらむ。バランスがいいね」

 店主「シュワシュワ感、爽快感があります」

 酒蛙「ん? 俺はあんまりシュワシュワ感を感じないなあ」

 店主「裏ラベルにそう書いています」

 酒蛙「酸が強いから爽快に感じるんだろうね」

 店主「いいお酒ですね」

 酒蛙「あっ、グラスの内側に気泡がいっぱいできている」

 店主「シュワシュワの気泡ですね。やっぱりシュワシュワ感はあるんだ」

 酒蛙「無濾過生原酒というと重いイメージだが、これは重くないね。甘みもある。余韻に苦みがある」

 店主「おとなしいお酒です」

 ここでわたくしは「ぬる燗にしよう」と提案する。わたくしは、初めて飲む酒を冷酒で1合飲んだら、次にぬる燗で1合飲むことにしている。冷酒だけだとその酒は分からないし、燗酒だけでもその酒は分からないからだ。

 店主「甘さが強調され、酸が立ちそうだ。でも、蔵元さんは、この酒の燗を想定していないだろうなあ」

 酒蛙「うん、甘みと酸が出そうだな」

 こんなことを言いながら、燗酒ができるのを待つ。燗酒の温度をデジタル温度計でチェックしていた店主が突然、声を上げた。「わっ、泡がすごい。炭酸ガスがいっぱい出てきている。これ、燗してはいけない酒かもしれませんよぉ」。「うん、泡がすごいね。でも、燗していいんだ。飲み手の自由だ」とわたくし。さて、ぬる燗(40℃)ができた。いただいてみる。

 酒蛙「お~~~っ、酸がすごい。予想通りだ。でも、甘みは強調されない」

 店主「ゲホゲホゲホ。酸が強くて、むせちゃいました。酒でむせたのは久しぶりだなあ」

 酒蛙「苦みも強調されてきた」

 店主「はい、たしかに苦みが出てきました。かなり苦い」

 酒蛙「俺は、この燗、いいとおもうよ」

 店主「燗しちゃいけない酒かもしれませんよ。最初に酸っぱさがきて、後味は引きずる苦さです」

 酒蛙「甘旨酸っぱいね。厚みがあり、吟醸香も広がる」

 店主「燗冷ましになると、苦みが引っ込んで、酸が強く出る。この感じがいいな」

 酒蛙「うん、たしかに」

 店主「あれれ、ラベルによると酸度は1.4です」

 酒蛙「ふ~ん、これは1.8くらいありそうな酸の強さだ」

 店主「全然いい酒です」(歳を食っているのに、若者言葉を話す店主である)

 酒蛙「かなりいい酒だよ」

 大相撲初場所がこの日初日だったことを突然おもいだし、ワンセグ携帯をテレビモードにする。ちょうど白鵬と松鳳山の取り組みが始まるところだった。店主もわたくしも大相撲が好きなのだ。

 相撲を見ながら、晩酌酒をたのしむなんて、ジジくさい話ではあるが、ま、世間一般的にはジジの年齢だからしかたがない。旨い酒を飲みながら相撲をテレビ観戦するのも、なかなかの醍醐味である。

 さて、この酒の瓶の裏ラベルには、「搾ったままのお酒を特別に壜詰めしました。シュワシュワとした爽快感とフルーティーな香りをお楽しみ下さい」と紹介文が書かれている。フルーティーなのは、まったく同感だ。

 ラベルによると、この酒の原料米は「吟ぎんが」100%。「吟ぎんが」は、岩手県農業研究センター銘柄米開発研究室が1991年、母「出羽燦々」と父「秋田酒49号」を交配、選抜と育成を繰り返しながら開発、2002年に品種登録された酒造好適米だ。

 精米歩合は55%。ラベルに「限定300本」と書かれているのがうれしい。なんてったって、限定品に弱いわたくしである。

酒蛙