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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【1112】龍力 特別純米 しぼりたて ひもん家(たつりき)【兵庫】

2013.3.26 18:37
兵庫県姫路市 本田商店
兵庫県姫路市 本田商店

 酒友Kは、仕事柄全国各地を渡り歩き、その土地の居酒屋に入って酒を楽しんでいる。そして気に入れば、わたくしにその酒を送ってくれる。わたくしは当地のお酒をお返しとして送っているので、結果的にKは、晩酌酒として当地の酒を買っていることになる。

 そんなKから「龍力 特別純米 しぼりたて ひもん家」が送られてきた。「龍力」は毎度おなじみの銘柄だが、「ひもん家」は初めてだ。「龍力」のラベルはかなり多く見てきているが、これは「龍力」のパターンにはないラベル。

 「これはいったい、どんな酒なの?」とKに聞いたところ、友人と東京都目黒区碑文谷(ひもんや)にある、地鶏と地酒のお店「ひもん家」で飲んでいたところ、旨酒に遭遇し感動、ぜひわたくしに飲んでもらいたい、と送ってきたのだという。Kいわく「お店の大将自ら酒蔵と交渉して造りあげた物だそうです」。すなわち「ひもん屋」のPB酒だったのだ。

 さっそく、冷酒でいただいてみる。とろりとした、重厚感のある力強いタッチ。含み香は、セメダイン香が鋭く来る。そして瞬間的後に酸が来て、瞬間的に次に旨みが来る。中盤から甘みが来て、余韻も含め後半は甘みが全体を支配する。余韻には苦みと辛みも加わるが、苦みが勝る。そしてこの間、全体に流れるのはセメダイン香。好きだなあ、こういうタッチのお酒。わたくしが大好きな「龍力 特別純米生 耕」(当連載【142】参照)に相通じる酒質だ。

 次に、ぬる燗40℃でいただいてみる。まず含み香のセメダイン香が来て、その次に酸が来て、甘みが来る。感覚的には含み香のセメダイン香が冷酒のときより強くなり、全体としては冷酒のときより軽めになるが、基本的には重くて厚い酒質には変わりない。

 このあと、再び冷酒でいただいてみた。おおっ! 甘旨酸っぱい。重厚なタッチの濃醇酸味酒。この表現は馬から落ちて落馬した、と同じだが、まあいいのだ。余韻は苦み。そして全体にセメダイン香が流れる。

 いやあ、好みの酒だった。一人の飲むのはもったいないので、なじみのH居酒屋の店主にも飲んでもらった。彼は「濃いなあ。酸味を感じる。舌にしっかり酸味が残る。濃口だなあ。焼鳥に合う。脂を洗い流してくれそう」と旨そうに飲んだあと、「Mさん(店主の友人)も好きにちがいない」と言いながら、「いい酒があるから飲みにおいで」と早速メール。しばらくしてから店にやってきたMさんも「おいしい、おいしい。好みの酒だ」と喜んでいた。

 瓶の裏ラベルには「しぼりたての新鮮な風味をそのままビンに閉じ込めた生原酒です。華やかな香りと適度な米の旨味が楽しめ、発酵による微かな炭酸ガスが後味を引締める季節限定酒です」。「華やかな香り」とは、わたくしが感じたセメダイン香のことか。また、「適度な米の旨味」とあるが、わたくしにとっては「重厚な米の旨味」に感じた。

 原料米は、ラベルによると、兵庫県豊岡市「コウノトリ育む農法」特別栽培米「五百萬石」100%使用。精米歩合は65%。

 「コウノトリ育む農法」とは耳になじまない言葉だ。ウィキペディアで検索したら、ちゃんと出ていた。以下にその説明文を貼り付ける。

「コウノトリの餌場となる水田を増やすことで、人と自然が共生する豊かな環境を目指した自然農法である。コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県豊岡市において、2003年より但馬県民局やたじま農業協同組合を中心に学習会や推進フォーラムを開催し、普及に取り組んでいる。

2003年に地元の農家3人が1haから始めたコウノトリとの共生政策は、2005年度に栽培技術がほぼ確立し、2006年6月には栽培面積が100haを越えた。2009年には豊岡市の水田の1割にあたる212haに拡大した」

酒蛙