メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【1205】初緑 夏純吟 火入れ(はつみどり)【岐阜】

2013.6.23 10:52
岐阜県下呂市 高木酒造
岐阜県下呂市 高木酒造

 例によって例のごとく、週末の夕方、ふらりとH居酒屋へ晩酌に。家から、ぶらぶら歩いてなじみの居酒屋に行くという非日常的日常がいい(ちょっと分かりにくい表現だが、これ以上の表現がおもいつかないのでご勘弁を)。

 店主が「今回、4本入れたんですよ」。そうか、そうか、いい時に店に来た。H居酒屋では一定期間を経て4本くらい新しい酒を入れ、冷蔵庫の中を回転させている。一部定番酒を除けば、酒の顔ぶれが適度に入れ替わっていくのが同店の魅力だ。

 いくら30-40本の酒を置いても、そのすべてが定番常備酒ばかりだと、客は面白くない(そうおもうわたくしのような客はすくないのかもしれない。定番常備酒ばかりでも気にしない客の方が多いかもしれない)。さて、4つの中から「初緑 夏純吟 火入れ」を選択する。特別な意味はない。この日は暑かったので、単にさわやかさを求めたのかもしれない。まずは、冷酒でいただいてみる。

 店主「あ、これ、いい」

 酒蛙「旨い! すっきりして酸があって、さわやかな飲み口。しかし、旨みがある。香りは抑え気味で上品」

 店主「味がしっかりしていますよ」

 酒蛙「いいね、キレが良い」

 店主「はい、キレがいいですね」

 酒蛙「さっぱりして軽めのタッチ。いかにも夏酒だなあ」

 店主「俺は、さっぱりには感じない。酸味を感じる。意外にクラッシュアイスに注ぐといいかも。すっきりした飲み口になるとおもう」

 酒蛙「なるほど、クラッシュアイスはいいかも。このお酒、アルコール分が低めなので飲み疲れしない。酸がありメリハリがあるので、飲み飽きしない」

 次に、ぬる燗(40℃)にしていただいてみる。わたくしが燗を所望したら、店主は「この酒を燗にする人はいるんですかね。蔵元さんだって想定していないのでは?」というが、わたくしは「どう飲もうと、飲み手の勝手だ」と揺るがない。さて、ぬる燗ができた。

 酒蛙「おおっ、辛みが出てくる」

 店主「うむ、辛みが出てきますね」

 酒蛙「辛みがかなり出てきていいね。余韻も辛みだ」

 店主「すっごい辛い。かなり辛い。残る辛さだ」

 酒蛙「味が強い。夏酒とはおもえない。冷酒のときと顔が全然違うよぉ」

 店主「うむ、味がすごい強い」

 酒蛙「酸もある。辛酸酒だ。辛酸なめ子だ」

 店主「燗冷ましが旨い。酸がふくらむよ」

 酒蛙「余韻に苦みがある。この燗酒いいなあ」

 冷酒のときは夏酒タッチの飲み口だったが、ぬる燗にすると俄然変わり、なんと力強い辛口酒に大変身だ。冷酒と燗酒で、これほどタッチが違う酒も珍しい。だから、冷酒だけでは、その酒を知ることができない、というのが、わたくしのかねてからの主張だ。冷酒と燗酒の両方で飲んでみなければ、その酒を知ったことにならないのではないだろうか。

 「初緑」はなかなかいい酒だったが、店主は「抱き合わせ4本セットで買ったとき、4本目に選んだのがこの酒。こういうのって、意外にいいんだよね」と脱力的発言。

 ラベルによると、原料米は兵庫県産「山田錦」100%、精米歩合は50%。

 また、瓶の裏ラベルは、「初緑」の由来について「『緑と水に囲まれた山里の酒」という意味が込められた銘酒『初緑(はつみどり)』は、江戸後期天保年間、尾張の殿様より命名されました。華やかな香りとコクを存分にお楽しみください」と紹介している。

 蔵のホームページはこの酒を、「夏限定の爽やかな純米吟醸酒!」と題し、以下のように紹介している。「兵庫県産酒造好適米『山田錦』100%使用の純米吟醸酒です。極寒期に上槽したお酒が春を越え、コク・味わい共に飲み頃となりました。おだやかなで落ち着いた香り、バランスの良いコクのある風味のあとスッとキレる味わいは格別です! 冷からぬる燗まで楽しめます!」。おっとぉ、ぬる燗も想定内の飲み方だった。やはり、ね。この酒のぬる燗、旨いもんね。

 余談だが、この酒を飲んでいるとき、BGMのピアノのアドリブフレーズに、頭の神経が「ん?」。酒に集中していた神経がジャズに奪われた。ん~、どこかで聞いたことがあるようなアドリブフレーズ。「木住野佳子か?」「はい、正解です。どうして分かったんですか?」「なんとなく日本人に心地よいフレーズだったから」。

 わたくしは時々、BGMの演奏者を質問する。それが正解だったときは気分が良く、酒がいっそう旨く感じる。店主も、意識して、わたくしが好きそうなプレーヤーのCDを図書館から借りてきて店内に流す。昨日は「Wynton Marsalis」が流れていた。わたくしは“また借り”をし、「Wynton Marsalis」を聴きながら、この駄文を書いている。

酒蛙

関連記事 一覧へ