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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【1417】櫻正宗 特別純米 宮水の華(さくらまさむね)【兵庫】

2014.2.5 21:16
兵庫県神戸市東灘区 櫻正宗
兵庫県神戸市東灘区 櫻正宗

【お江戸にて 全10回の⑤】

 孫の誕生日に合わせ、お江戸で息子家族と会うことになった。昼は「O蕎麦屋」で、蒲鉾と焼き海苔をアテに普通酒「大関」の燗酒を飲む。夜は息子が予約したY居酒屋へ。ここで「〆張鶴 純米吟醸 純」と「超 王祿 無濾過生酒」を飲む。

 このあと婦女子軍団をホテルに送り届けたわたくしと息子は、どちらからともなく「行くか?」「うん」。これで話が通じる。要するに、「居酒屋に行こうではないか」。わたくしなじみの銀座・K居酒屋に行こうとおもい電話をかけたら「ごめん。不幸があって臨時休業なんです」。

 こんどは息子が懸命にスマホを操作。「面白そうな居酒屋を見つけた」。息子も初めて行く店という。どこでもいい。酒が飲めれば。そこは、なんと銀座・松屋デパートの中央通向かい地下1階の「酒の穴」だった。こんなところに居酒屋があったとは! ここ何年も日中まったく気づかなかった。

 中央通りに面している店とは思えないほど庶民的な、敷居の低い居酒屋だった。酒の種類もきどっていない。何よりも感動したのは、各テーブルに燗付け器が備えられていることだった。このようなテーブルを初めて見た。120%逆上、テンションが上がった。

 酒は、わたくしが選んだ。トップバッターは「櫻正宗 特別純米 宮水の華」。なかなかシブい選択だ。氷を砕いてざらめ雪状のものを詰めた升に、酒を入れた「たんぽ」を差し入れ、冷酒として客に出す。見た目が新鮮だ。

 まずは冷酒でいただいてみる。かなり熟成感が強く腰が引ける。旨みがすこしきて、中盤からやや辛みがくる。厚みはあまりなく、すっきり軽快感あり。酸味はほんのわずか。

 次に、ぬる燗でいただく。酒を入れた「たんぽ」を2個使用できるように、蓋付きの穴が2つあいている。穴をのぞくと、中は熱湯。温度が一定に保たれているようだ。正しい湯煎ではないか!!! いやはや、大感激だ。まずは試験的に1合を1分くらい入れてみる。温度はまさしく40℃前後。絶妙ベスト的ぬる燗だ。すこし温度が下がると、再び湯煎し温度を上げる。まめにたんぽを出し入れし、40℃前後をキープしながら飲む

 その、ぬる燗をいただく。酸味が出てくる。酸が前に出てくるため、強い熟成感があまり気にならなくなった。これはぬる燗の方がいい。

 瓶の裏ラベルは「使用米 山田錦100%、精米歩合65%」と表示。この酒を「宮水の発見蔵として水の良さにこだわり、米の旨味を活かしたすっきりタイプの純米酒を醸しました」と紹介。飲み口としては「やや辛口」と分類している。また、蔵のホームページはこの酒を「“宮水の華”は、酒造りに適した兵庫県産の『山田錦』を65%に磨き醸した、淡麗でやや辛口の純米酒です」と紹介している。

 ラベルには創醸寛永2年(1625年)と書かれている。かなりの老舗だ。瓶の表ラベルは、「宮水の発見」と題し、以下のように水へのこだわりを載せている。「天保11年(1840)櫻正宗6代目当主山邑太左衛門は西宮と魚崎で酒を造っておりました。しかしいつも西宮の酒が優れていることから蔵人を入れ替えてみたり、米も同じものを使うなどいろいろ試みましたが、やはり西宮の酒が優れていました。最終的に水しかないと意を決し、西宮の水を魚崎に運び酒を造ったところみごとに西宮同様、魚崎の蔵でも優れた酒を造ることに成功し宮水の発見となりました」

 清酒には「●●正宗」というように「正宗」が付く酒名が多い。この「正宗」の第一号が「櫻正宗」という。これについて、日本経済新聞2013年1月26日付ウェブ記事が詳しく紹介しているので、以下に貼り付ける。

   ◇

 日本酒の銘や社名に「正宗」を使う蔵元は全国に多い。元祖は中堅酒造会社の桜正宗(神戸市)だ。正宗が全国へ広がった経緯を探っていくと、商標の管理という日本企業が今日直面する問題が浮かび上がってきた。

 桜正宗は1717年創業の老舗。11代目当主の山邑太左衛門氏(49)の説明によると、当時、灘地域(神戸市、兵庫県西宮市)では酒銘を競っており、「助六」や「猿若」など歌舞伎役者に関する酒銘が多かった。同社も役者名を取り「薪水」を使っていたが、6代目山邑太左衛門は酒銘が女性的で、愛飲家にふさわしいか悩んでいたという。

 6代目は1840年、京都の元政庵瑞光寺の住職を訪ね、机上の「臨済正宗」と書かれた経典を見て「正宗」がひらめいた。正宗の音読み「セイシュウ」が「セイシュ」に近く縁起も良さそうだと思ったようだ。ただ、同寺の現在の住職、川口智康さん(60)はこの由来について「昔のことでわからない」とのこと。

 酒銘へのこだわりだけでなく、6代目が酒造りにかける情熱はすさまじかった。今日の吟醸造りの原型となる「高精白米仕込み」に取り組んだほか、西宮で酒造に適した「宮水」を発見、灘が最大の産地となる原動力になった。桜正宗など灘の清酒は「下り酒」と呼ばれ江戸で爆発的に売れた。1717年から江戸で灘の清酒を扱う酒類卸、ぬ利彦(東京・中央)の中沢彦七社長(70)は「正宗は吉原や藩主の屋敷で評判を呼び、江戸庶民に広がった」と話す。

 人気が高まるにつれ、正宗の名にあやかる蔵元が全国で続々と現れた。正宗の名は普通名詞となり、1884年に政府が商標条例を制定した際、桜正宗は正宗を登録したが受け付けられなかったほど。特許庁は「慣用商標の中で代表的な事例の一つ」(商標課)と説明。そこで桜正宗は国花の「桜」をつけた。

 正宗は北前船などで全国に運ばれた。北海道函館市の老舗レストラン「五島軒」は開業した1879年から今日まで桜正宗を提供している。

(中略)

 明治の商標条例の制定時に苦い経験をした桜正宗は今、再び商標の壁にぶつかる。相手は中国だ。4~5年前、輸出を始めるために現地で商標登録しようとした。ところが、既に桜正宗の商標は現地企業に取得されていることが判明した。現在も係争中で、同社の原田徳英執行役員(50)は「中国から輸出要請はあるができない状況」と話す。

酒蛙