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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【1543】銀河鉄道 長期熟成酒 純米大吟醸 生酒 凍結酒 (ぎんがてつどう)【愛媛】

2014.4.17 18:41
愛媛県喜多郡内子町 千代の亀酒造
愛媛県喜多郡内子町 千代の亀酒造

【H居酒屋にて 全2回の①】

 夕食をとりに、歩いてH居酒屋へ。パストラミをアテに「若波 純米 生」(当連載【1470】参照)、「若73 純米」(同【1471】)、「和心 純米 朝日米 辛口 無濾過生原酒」(同【1235】)を飲み、そろそろ仕上げに入ろうか、とおもっていたところ、店に電話が入った。

 電話の主は、異動で当地に赴任し、新たにH居酒屋の常連になったA。「凍結酒」をお土産に、奥さんと一緒にこれからH居酒屋に来る、という。凍結酒というと、わたくしは「福寿 凍結酒」(同【1104】)と「福寿 凍結梅酒」(同【1106】)しか飲んだことがない。Aが持ってくる凍結酒を飲みたい。ということで、帰るのをやめ、Aを待つことにする。

 その凍結酒は「銀河鉄道」だった。Hとわたくしが即座に「岩手県の酒だろ? 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の絵だから」と反応するが、奥さんは「違います。愛媛のお酒です」。これにはHもわたくしも「え~~~っ!!!???」と大騒ぎ。Aだけが「なんで宮沢賢治が銀河鉄道なの?」と一人蚊帳の外。奥さんから「宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を知らないなんて、信じられな~~い」とバカにされ、かなりへこんでいた。

 奥さんが愛媛県出身で、お土産の定番酒なんだそうだ。半分ぐらい解凍したとき、瓶をシェイクしシャーベット状態でいただくのだそうだ。が、Aが持ってきた「銀河鉄道」は解凍が進み過ぎ、シャーペットはわずかしかなかった。それでもまだ、瓶の表面には霜がおりている。期待を込めていただいてみる。

 酒蛙「舌先にピリピリ感がある。旨み、甘み、酸味があまり感じられず、すっきりしている。非常に繊細で淡麗だ。余韻にすこし辛みがある」

 店主「香りがフルーティー。たしかに甘み、旨み、酸味が感じられない」

 酒蛙「さらっとしているが、重みがある。氷が解けたら酸と旨みが出てきた。みぞれ状態のときは味が縮こまっていたんだろうな」

 店主「ベースがいいよ」

 酒蛙「酸がだんだん強くなってきた。余韻も酸。余韻に苦みも入ってくる」

 ここでわたくしが提案した。「燗にして飲んでみよう。おそらく蔵元さんは燗を想定していないだろうな」。これに店主とAの奥さんが「燗酒、飲みたい、飲みたい」と同調。さっそくぬる燗をつける。さあ、ぬる燗ができた。

 酒蛙「酸っぱい!」

 店主「酸っぱ苦い」

 酒蛙「旨いっ! 奥にひそかに甘みがある」

 A 「ちょっとクセがあるね」

 店主「うめぇ~!」

 酒蛙「キレがある。じわじわ甘みが出てきて、甘酸っぱい飲み口になる」

 A 「俺は、この燗酒が苦手だ」

 酒蛙「あっ、熟成香が出てきた。それにしても旨いなあ。厚みたっぷりで旨いなあ。みぞれ状態より、ぬる燗の方が旨いなあ」

 店主「そんなことを言うと、蔵元さんが怒るかも」

 酒蛙「いいんだ、どんな飲み方をしようと、それは飲み手の勝手だよ」

 面白さは「みぞれ状態」、旨みは「ぬる燗」といったところだろうか。また、「みぞれ状態」では淡麗辛口、「ぬる燗」だと芳醇旨口。温度や状況によって味がずいぶん変わる、七色仮面のようなお酒だった。

 多くの居酒屋の冷蔵庫や家庭の冷蔵庫では、1升瓶を丸ごと入れられる冷凍庫は無いだろうから、栓を開けたら一気飲みをしなければならないだろう。凍結酒はシャーベット状になればすぐ解けるから、10-20人規模の飲み会で、一気に飲んでしまうのが、この酒の一番賢い飲み方といえる。

 瓶の裏ラベルは、保存方法として「必ず冷凍(-18℃以下)で保存して下さい」、おいしい飲み方として「半分位解凍時にビンごと振り、固まりを砕き、みぞれ状をお楽しみ下さい」と指導している。

 蔵のホームページは「この『銀河鉄道』は地元で作られたお米の中でも、特に大粒を選び、その中心部だけを使っています。低温で前発酵させ、もろみの良い部分のみを良く晒した木綿袋にて雫を垂らすように取り上げ、さらに低温で十年以上熟成させ、香気豊かで円やかな味わいに育て上げた貴族的な日本酒です」と、この酒を紹介している。

 「みぞれ」のときは感じなかった熟成香が、ぬる燗にしたら出てきたことを不思議におもっていたが、説明文を見て納得。10年以上古酒だから、熟成香が出て当然だったのだ。

 瓶の裏ラベルの表示は「原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)、精米歩合40%」にとどめており、使用米の品種が非開示なのは残念。

 飲みながら、蔵のサイトにアクセスし価格段を調べたら、なんと1升21,600円! 価格を口にしたらAは「やめてください、やめてください」ときまり悪そうな表情でうろたえていた。

酒蛙

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