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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3644】阿武の鶴 点と線(あぶのつる)【山口県】

2018.11.23 11:50
山口県阿武郡阿武町 阿武の鶴酒造
山口県阿武郡阿武町 阿武の鶴酒造

【H居酒屋にて 全3回の③完】

 なじみのH居酒屋の店主から電話がかかってきた。「お酒が3種類入りました。テイスティングに来てください」。で、おっとり刀で暖簾をくぐった。わたくし、H居酒屋に、一言コメント付きの酒メニューをつくってあげているのだ。「お酒の特徴がよく分かり、注文するときに便利」と、お客さまから大好評とのこと。そのためにはテイスティングをしなければならない。

「金婚 純米吟醸 ひやおろし」「北信流 純米生原酒」と飲み進め、最後3番目にいただいたのは「阿武の鶴 点と線」だった。阿武の鶴酒造は2017年、34年ぶりに蔵を復活させた話題の蔵。この蔵の酒をわたくしは「三好 純米吟醸 Green 無濾過生詰」(当連載【2666】)と「三好の冬 純米吟醸 無濾過生原酒 おりがらみ」(当連載【3315】)の2種類を飲んだことがある。ともに甘み、旨み、酸味のバランスが絶妙でとくに酸が良い、実にチャーミングなお酒で、非常に好感を持っている。さて、いただいてみる。

 酒蛙「甘旨酸っぱい。直前に飲んだ『北信流』を軽くしたような味わい。やわらか、ふくよか、マイルド。やさしい甘旨み。果実感もありジューシー。う~ん、実に旨い」
 店主「うん、旨いね。これ、いいね」
 酒蛙「重からず、軽からず。酸が上質なので、飲み飽きしない。余韻は酸・苦・旨」

 わたくしの口に合う激旨酒だった。しかし瓶の裏ラベルの表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、アルコール分16度、製造年月30.6」にとどまる。

 使用米の品種名が非開示なのは残念だし、何よりも特定名称の区分が明らかにされていない。ネット情報を見ても、この酒を「純米吟醸」と紹介している酒屋さんもあれば、「純米吟醸 無濾過生詰」と紹介している店もあるなどまちまちだ。このような現象を無くするためにも、蔵元さんは特定名称の区分をきちんと示すべきだ。もし「飲み手の判断に任せるから示さない」という考えに基づくものならば、あまりに上から目線だとおもう。

 ところで、この阿武の鶴酒造は復活蔵。そのいきさつについて、2018年01月07日付のYOMIURI ONLINEが長文の記事を掲載している。長いので、わたくしが以下のように勝手ながら要約した。

「蔵元の三好隆太郎さん(34)が2017年4月に酒造りを再開するまで、蔵は30年以上、静寂に包まれていた。1915年創業の老舗。銘酒『阿武の鶴』で全国清酒品評会優等賞を獲得したこともある。だが、日本酒の消費低迷を受け、経営が悪化。三好さんの祖父で4代目の桂太郎さん(故人)が1983年、蔵を閉じた。
 三好さんは 東京の大学で建築や設計を学び、都内のデザイン会社に就職。デザイナーと顧客を仲介する仕事をしていたが、『人の暮らしに身近なものを自分で作ってみたい』と考えるようになり、25歳で退社した。
 ハローワークの求人情報をもとに最初に飛び込んだ千葉県の蔵で酒造りの奥深さを知り、求人を見つけては、埼玉や岐阜、青森各県の蔵元を6年間渡り歩いた。
 自分で一から酒を造ろうと、2014年に帰郷。『東洋美人』で知られる澄川酒造場(萩市)の4代目、澄川宜史さん(44)が声をかけてくれた。澄川さんは自社のタンクを提供。三好さんは澄川酒造場などの杜氏に加わって技を覚え、澄川さんからは経営手法を学んだ。
 2017年4月、蔵で34年ぶりの仕込みを再開し、6月には新酒の発売にこぎつけた。三好さんは『まだまだ修業の身。支えてくれた人たちへの恩返しのためにも、永く愛される酒を造っていきたい』。」
(以下は原文。https://www.yomiuri.co.jp/local/yamaguchi/feature/CO032172/20180106-OYTAT50009.html)

 ネット情報によると、蔵元さんは特約店の酒屋さんに以下の資料をリリースしている、という。

「【名称『点と線』について】『点と線』の点は今までの経験や出会いです。線はつながりです。今までの経験や出会いの1つ1つすべてが線でつながってきていることを実感しています。これからも1つ1つをの点を大切にしていきながら、線でつないでいけるようにという思いを込めて名付けました。このお酒を手にとったお客様にも、お酒を通して多くの方々とつながってもらえたらと考えています。ですのでこのラベルデザインもゴールドとシルバーの線が混じり合い、パールの点と線がつながっていくことをイメージしました」

 なるほど、これで分かった。瓶のゴールドのシールの下に貼りついている真珠色の突起は『点』の意味だったのだ。わたくしも店主も『このポッチは何なんだろうね???』と頭にハテナマークを巡らせながら飲んだものだった。願わくば、この説明文を裏ラベルに印字してほしかった。飲み手の99.99%は意味が分からず飲んでいるとおもうので。

 主銘柄名および蔵名の「阿武の鶴」の由来は、地名に縁起ものの鶴を付けたものだ。

酒蛙

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