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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2047】蜻蛉 純米 にごり酒(とんぼ)【福岡】

2015.7.30 22:00
福岡県大川市 若波酒造
福岡県大川市 若波酒造

【若波酒造 全2回の②完】

 わたくしがホームグラウンドにしているH居酒屋の店主もわたくしも、若波酒造が醸すお酒のファンである。数年前、店主が初めて「若波」を入れ、彼もわたくしも、いっぺんに好きになった。どこが好きか、と問われても困る。人を好きになるのに理由はいらないのと同じ。と言ってしまえば身もふたもないのですこし具体的に言うと、味覚、身体、頭の全体が、若波酒造のお酒と相性がいいのだ。人との付き合い(結婚を含む)は相性が一番大切。酒と人の関係も同じだとおもう。

 そのH居酒屋の店主からメールが来た。「若波酒造の酒を2種類入れたので、飲みに来てください」。もちろん、すぐ行った。「ももいろにごり酒」と「青とんぼ」。まずは変化球的な「ももいろにごり酒」からいただき、次に直球的な「蜻蛉 純米 にごり酒」(愛称・青とんぼ)をいただく。

 店主「最初に苦みがきて、次に酸がくる。そしてずーっと酸が続き、最後は辛み」

 酒蛙「香りはおだやかで控えめ。ファーストアタックは、甘みがすこし。そのあとずっと続く苦みがやや強い。アルコール分をやや強く感じる。アルコール分はいくつなの?」

 店主「17度です」

 酒蛙「数値よりアルコールが強く感じる。余韻は辛み」

 店主「苦みが残ります」

 酒蛙「旨みをすこし抑えているような、すっきりとした感じを受ける。辛口酒ではないが、ドライ感・清涼感がある」

 店主「そうそう、ドライな感じです。後味は辛いわあ」

 酒蛙「ひとことで言えば苦辛酒。夏のくそ暑いとき、キンキンに冷やし、クイっと飲むと爽快だろうなあ。そんな酒。真夏にふさわしい酒だ」

 店主「そう。ドライなので、真夏向き。暑いとき、クイっとやる酒だ。もちょっと酸がほしいかな。ラベルの酸度1.7という数値ほどには酸を感じない」

 酒蛙「うん。酸度1.7より低く感じる。酸がもすこしあれば、さらに爽やかになるね」

 店主「温度がすこし上がってきたら、甘みが出てきた」

 次に、ぬる燗を試してみる。温度は40℃ちょうど。蔵元杜氏さんは、おそらくは、この酒が燗で飲まれることを想定していないとおもう。でも、大吟醸でも夏酒でも、冷酒とぬる燗の双方で飲んでみるのが“わたくし流”。ずっとそうやって飲んできた。だから今回も。さて、湯煎のぬる燗ができた。いただいてみる。

 店主「いい酸だ。酸っぱくなった」

 酒蛙「ん? 俺は酸をあまり感じない。苦みと辛みを感じる」

 店主「うん、苦みが強くなる」

 酒蛙「甘みが出てきた、旨みも出てきた。味が開いた感じ」

 店主「辛みも強いね」

 酒蛙「温度がすこし下がってきたら、あっあっ! 酸が出てきた。この酸、かなり強いよ。俺的には冷酒よりぬる燗の方が口に合うかも」

 店主「飲みやすくなります」

 酒蛙「俺的には、ぬる燗の方が味が整ってきたような気がする。でも、冷酒のドライでシャープ感・清涼感のあるタッチも好き」

 若波酒造の酒は、けっこう種類を飲んできたつもりで、中でも主力選手「蜻蛉 特別純米」の、やわらかく、ほっこりしたイメージを強く持っていた。しかし、「青とんぼ」は大きく違っていて、苦みと辛みとドライ感を感じた。だから、大いに戸惑った。本来であれば、主力選手「蜻蛉 特別純米」と大きく酒質は変わらないはずなのに…、と不思議なおもいが頭の中を駆け巡った。

 なぜだ。しばらく考え、いま、はたと気づいた。低アルコールで甘い「ももいろにごり酒」を先に飲んだため、舌の味覚細胞が甘味を記憶してしまい、「青とんぼ」を苦辛く、そして強く感じてしまったのではないか、と。だとしたら、本来の味を感じられなかった「青とんぼ」に申し訳ないことをした。舌がまっさらな状態で「青とんぼ」を飲み直そう、とおもったが、すでにH居酒屋の「青とんぼ」は売り切れだった。

 瓶の裏ラベルの表示は「原材料 米(国産)・米麹(国産米)、精米歩合60%」にとどまるが、酒屋さんのPR用パンフレットでは以下のようにこの酒を紹介し、使用米の品種名も開示している。

「地元福岡の酒米である夢一献(ゆめいっこん)で醸した特別純米酒・蜻蛉の季節限定シリーズである『青とんぼ』の出番がやってきました! 季節シリーズ(黒・青・赤~とんぼ)とは、同じ酒米・酵母・製造方法で醸したお酒が、月日と共にどのような熟成を織りなすか、日本酒の醍醐味である季節感を味わって戴きたいとの願いから誕生しました。

 若き女性杜氏である今村友香さんが愛情を込めて醸した純米うすにごり酒です。適度な酸味がきいていて、飲み易く、飲み飽きしない、どんなお料理にも合う青とんぼです♪ 通年商品の『特別純米酒 蜻蛉』に加え、日本酒の醍醐味である季節で楽しむ魅力! ~季節蜻蛉が飛び立ちます」

「夢一献」は、福岡県農業総合試験場農産部が1993年、母「北陸160号」と父「夢つくし」(その父は「コシヒカリ」)を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定、2003年に命名、2006年に種苗法登録された。

酒蛙

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