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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2073】悦凱陣 純米 無ろ過生 丸尾神力(よろこびがいじん しんりき)【香川】

2015.8.15 23:09
香川県仲多度郡琴平町 丸尾本店
香川県仲多度郡琴平町 丸尾本店

 打ち合わせのあと、お約束の懇親会。会場は、秋田県全蔵の酒を用意している、という触れ込みの居酒屋。「全蔵の酒を用意」という言葉を見て、瞬間的に逆上、興奮した。お~し、可能な限り“未飲蔵”のお酒を飲んでやろう。身体がうち震える。ところで、秋田県の酒蔵数は、仙台国税局がまとめた2014年12月1日現在の酒蔵マップによると、43だそうだ。

 この店は時間制限制飲み放題。その時間内にわたくしたちは、10種類の秋田酒を飲んだ。普通酒9種類に本醸造1種類。かなりエキセントリックな飲み方だったが、10種類の酒に共通性があった。それは、「すっきり淡麗系で、酸が立つお酒」だった。それが、いまの普通酒のトレンドなのか、秋田独自の個性なのかは分からない。

 時間制限タイムアウトで懇親会はお開き。そこから、酒好きが自然発生的に集まり、S、H、わたくしの3人が二次会場をめざした。二次会場は、わたくし行きつけのK居酒屋。チーママのYちゃんのおなかが大きくなってからご無沙汰状態。まずは、Yちゃんの近況報告を聞く。母子ともに健康で、ご長男はやんちゃ超元気とか。「いったい、誰に似たんでしょうね」とYちゃん。すかさず「Yちゃんに似たんだろうがあああ♪」と言ってやった。幸せそうなYちゃん。よかった、よかった。まずは一安心だ。

 さて、お酒。SとHが飲みたいお酒「るみ子の酒 山廃づくり 純米吟醸 阿波山田錦」(当連載【435】で掲載済み)をいただく。この店ではわたくし、飲む酒はすべてぬる燗で飲んでいるので、これも燗酒でいただく。そして、燗酒ならコレ!という「宗玄 純米 山田錦 無濾過生原酒」(当連載【69】で掲載済み)を次にいただく。

 そして3番目は「悦凱陣 純米 無ろ過生 丸尾神力」だ。「悦凱陣 純米 無ろ過生」のコメ違いシリーズはかなり飲んできたつもりだったが、「神力」は初めてだ。興味津々でいただいてみる。これも、ぬる燗だ。温度はちょうど40℃。

 コメの香りがたっぷり。旨い。濃い。酸が立つ。辛い。味が太い。そして力強い。やわらかさは無く、やや、とんがったところがある。余韻も辛み。旨みを伴う辛みではなく、ソリッドな辛み、という印象。直前の「宗玄 純米 山田錦 無濾過生原酒」の燗酒がやわらかかったので、舌がそれに影響を受け、ことさらソリッドに感じたのかもしれない。

 ラベルの表示は「原料米 神力、精米歩合65%」。肩ラベルは、赤地に黒の筆文字で「情熱神力」。熱い。

 秋田の酒10種類が淡麗酸味酒だった反動なのか、K居酒屋ではいずれも、しっかりしたフルボディー系の酒を選んでしまった。何事も、そんなものかもしれない。

 ところで、酒米の「神力」について、オエノングループのサイトが「『神力』物語」と題し、以下の解説文を掲載しているので転載する。

「言い伝えによると・・・

明治10年、兵庫県の農業家丸尾重次郎が、自分の水田に特別に穂の重い稲が生長しているのを発見しました。わずか3本の穂を種にし、苦心して改良したところ、この品種からは大粒で多くの米が収穫できたことから“神から賜った米”として『神力』と名付けられました。次第に『神力』の評判が近隣に広がり、丸尾重次郎は『神力翁』と呼ばれるようになりました。

抜群な収穫量を誇り、全国に普及した『神力』は、『麹がつくりやすく、もろみで溶けやすく、酒に雑味を与える成分が少ない』という性質から、酒造好適米としても高い評価を受けるようになります。しかしながら、昭和の初めになると、稲作形態の変化と激しい品種改良競争のなかで、姿を消すこととなりました。

それから、半世紀近い年月が流れ、“幻の米”となった『神力』は、酒造りに適した性質が再び見直され、復活を果たします。丸尾重次郎は『神力』の繁栄を見ずに逝去しましたが、『神力』は今も人気の酒造好適米として、また、多くの酒造好適米の祖先米として、後世に脈々と受け継がれています」

 ところで疑問がある。ラベルに赤文字で書かれている「丸尾神力」の丸尾の意味だ。ふつうは単に「神力」と表示するのだが、なぜ「丸尾」を付けているのだろうか。上記沿革にも書かれている、「神力」の発見者・丸尾重次郎に敬意を表し、「丸尾神力」と表示したのだろうか? あるいは、醸造元の丸尾本店が田植えから刈取り・精米まで自ら生産したコメ「神力」だから「丸尾神力」と表示したのだろうか? そのどちらかだとおもうが、“丸尾違い”で、はなはだややこしい。

酒蛙