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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2103】香露 大吟醸(こうろ)【熊本】

2015.9.4 0:53
熊本県熊本市 熊本県酒造研究所
熊本県熊本市 熊本県酒造研究所

【T会 全6回の①】

 仕事で知り合ったTが、共通の知人であるヨネちゃんとわたくしに「飲み会を開こう」と提案してスタートしたT会。それが非常に楽しかったため、2カ月に1回開き、定例化した。場所はなじみのM居酒屋。会の名はTの苗字をとって「T会」。なんだか、暴力団的な会名だが、ま、いいのだ。

 お酒の選択はM居酒屋の店主にお任せだ。店主がまず持ってきたのは「香露 大吟醸」だった。ヨネちゃんがすかさず反応した。「ここの蔵は、9号酵母の発祥蔵なんだよぉ~♪」

 このヨネちゃん発言についてすこし噛みくだいて説明する。日本醸造協会が全国の醸造元に頒布している酵母を「協会酵母」という。その協会酵母の中で現在、広く知られているのが6号、7号、9号の3つ。

 6号酵母は1930(昭和5)年、秋田市の新政蔵の醪から分離された。現在も使われている酵母の中では最古で、清酒の酒質を劇的に高めた革命的酵母である。7号酵母は1946(昭和21)年、長野県諏訪市の真澄蔵の麹から分離された。華やかな香りを出す、吟醸酒の発展に寄与した酵母。

 そして9号酵母は1953(昭和28)年ごろ、今回の香露蔵の保存酵母から分離された。吟醸香を強く出し、吟醸酒の発展に非常に大きな役割を果たした。別名「熊本酵母」と言い、一時期、鑑評会出品酒の多くは、金賞狙いで香りを出す9号酵母を使った。

 この動きは「YK35」に代表され、「YK35」は清酒業界の“流行語”というか“公式”になった。すなわち、鑑評会で金賞をとるためには、米は山田錦(Y)を使い、酵母には熊本酵母(K)を使用、さらに精米歩合は35%(35)まで磨けばいい、という内容だ。各蔵はこぞって「YK35」の酒を造り、鑑評会に出品したものだった。

 前段が長くなった。「香露 大吟醸」をいただいてみる。

 ヨネちゃん「久しぶりに、おいしい酒を飲んだよぉ~♪ おいしくて、濃くて、バランスが良いよぉ~。好きだよ、これぇ~♪」

 T 「これは旨い」

 酒蛙「上立ち香は華やか、含み香は適度に華やか。まろやかで上品なお酒だ。中盤から余韻は辛み。重からず、軽からず、甘み、旨み、酸味、辛みのバランスが非常に良いお酒だ」

 ヨネちゃん「極めて無難でおいしい」

 K 「これは旨い。ベーシック・オーソドックスなお酒だ」

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように説明している。

「吟醸酒とは、良質の米を半分以上も磨きぬいてもろみに仕込み、わが子のように大切に育てあげた宝のようなお酒です。大吟醸『香露』は、熊本酵母の醸しだすフルーティーな芳香とまろやかな風味に満ちあふれ、吟醸酒の逸品として全国酒造専門家の賞賛の的になっております。熊本酵母<協会9号>の誕生蔵にふさわしい上品な味と香りを存分にお楽しみ下さい」

 この説明文は、冒頭の「吟醸酒とは、良質の米を半分以上も磨きぬいて」の部分が微妙に間違っている。「良質の米を半分以上も磨きぬいて」のお酒は「大吟醸酒」である。「吟醸酒」の精米歩合が60%以下と定められているので、「吟醸酒」の中には半分以上磨いていない酒もあるのだ(たとえば精米歩合55%や60%の吟醸酒)。だから、説明文の冒頭の部分は「大吟醸酒とは、良質の米を半分以上も磨きぬいて」と書くべきだった。

 ラベルの表示は「原材料名 米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール、精米歩合 麹米、掛米38%」にとどまり、使用米の品種が非開示なのは残念だ。

 ところで、「香露」は角瓶が特徴。以前、酒友Fと一緒に「香露 純米吟醸」を飲んだとき、Fは角瓶の肩が張っているあたりをなでなでし、「あああぁぁぁ~~」とあやしげなヨ○リ声を出しながら恍惚の表情を浮かべていたのをおもい出した。以来、わたくしたちは彼のことを「瓶フェチ」と言っている。

酒蛙

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