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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2161】亀萬 純米 気合の一回火入れ 野白金一式九号酵母(かめまん)  【熊本】

2015.10.12 10:19
熊本県葦北郡津奈木町 亀萬酒造
熊本県葦北郡津奈木町 亀萬酒造

 月曜日の夕方、会社から帰宅後すみやかに着替え、ふらりと近くのH居酒屋へ。わたくしは土曜、日曜、月曜日にH居酒屋に行くことが多い。これがすっかり日常の生活。居酒屋は一般的に非日常の世界なのだが、わたくしにとっては日常。この店ではホワイトボードに書かれている酒メニューの中から、飲んだことのない酒を上から順番に飲んでいくことにしている。わたくし、飲食店で注文品を選ぶのがとても苦手なのだ。上から機械的に選べば、選択のストレスがなくなる。

 ということで、今回は「亀萬 純米 気合の一回火入れ 野白金一式九号酵母」を飲む順番だ。「亀萬」については、当連載【2104】で、「亀萬 純米 無濾過生原酒 中汲 野白金一式九号酵母」を紹介している。「亀萬 純米 無濾過生原酒」の方は、濃醇酸味の旨酒という印象が強い。火入れの方がどうか。

 酒蛙「火入れで『気合』というのが分からないなあ」

 店主「ふふっ…。味が深い。味が乗っている。開封のときは可も無く不可も無かったが、開栓してしばらくたったら、味が出て濃く感じる。フルーティーじゃないけど。苦みと辛みを感じる」

 酒蛙「おとなしい上立ち香。酸を予感させる香りだ。含むとやっぱり酸がずいぶん出てくる。酸が来て、旨み甘みが来る。甘みより旨みの方が多い。これは旨い酒だ」

 店主「飲みやすい」

 酒蛙「酸が非常に立ち、ややとろり感がある。余韻は苦み。全体的に力強くしっかりした味わい。これは旨い。温度がすこし上がってきたら、甘みがずいぶん出てきた」

 次に、ぬる燗にしていただいてみる。温度はちょうど40℃。

 酒蛙「ううううっ、酸っぱい!」

 店主「酸がずいぶん出てくる。ああ、いい酸だ。甘みもかなり出るなあ。おおっ、酸苦甘が一気にくる。濃いなあ。味が強いなあ」

 酒蛙「甘みが出るね」

 店主「すごい。しっかりした味だ」

 酒蛙「余韻は苦み。旨いなあ」

 店主「久しぶりにしっかりした味わいの酒を飲んだ」

 酒蛙「45℃の上燗になったら、苦みが非常に出てきた」

 店主「うっ、そうだ。苦いなあ。ちょっとの温度の変化で酒の表情がずいぶん変わるもんだな」

 「亀萬 純米」は、無濾過生原酒も火入れも、濃醇酸味の激旨酒だった。近年、このような味わいのお酒が増えてきたが、その中でもヘビー級だ。

 瓶の裏ラベルには、杜氏さんの口上が書かれているので、以下に転載する。

「協会九号酵母はのちに『酒の神様』と称された熊本の野白金一博士によって分離され60年、今でも、全国の吟醸酒で多く使用されています。このお酒は、熊本が誇る九号酵母を用いて熊本の米・熊本の水で仕込んだ純米酒です。温故知新の精神で満足のいく一杯のために挑戦し続けます。 杜氏・竹田瑠典」

 裏ラベルの表示は「原材料 米 熊本産『レイホウ』、米麹 熊本県産『神力米』」。「レイホウ」は農林水産省九州農業試験場作物第1部作物第1研究室が1959年、母「ホウヨク」と父「綾錦」を交配、育成と選抜を繰り返して品種を固定。1969年に命名された主食用米。昭和40年代後半が作付けの最盛期で、昭和47(1972)年には品種別で全国3位の作付面積を誇った。

「神力」については、オエノングループのサイトが「『神力』物語」と題し、以下の解説文を掲載しているので転載する。

「言い伝えによると・・・

明治10年、兵庫県の農業家丸尾重次郎が、自分の水田に特別に穂の重い稲が生長しているのを発見しました。わずか3本の穂を種にし、苦心して改良したところ、この品種からは大粒で多くの米が収穫できたことから“神から賜った米”として『神力』と名付けられました。次第に『神力』の評判が近隣に広がり、丸尾重次郎は『神力翁』と呼ばれるようになりました。

抜群な収穫量を誇り、全国に普及した『神力』は、『麹がつくりやすく、もろみで溶けやすく、酒に雑味を与える成分が少ない』という性質から、酒造好適米としても高い評価を受けるようになります。しかしながら、昭和の初めになると、稲作形態の変化と激しい品種改良競争のなかで、姿を消すこととなりました。

それから、半世紀近い年月が流れ、“幻の米”となった『神力』は、酒造りに適した性質が再び見直され、復活を果たします。丸尾重次郎は『神力』の繁栄を見ずに逝去しましたが、『神力』は今も人気の酒造好適米として、また、多くの酒造好適米の祖先米として、後世に脈々と受け継がれています」

酒蛙

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