メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2274】奥播磨 山廃 純米 播秋 兵庫夢錦 生(おくはりま)【兵庫】

2016.1.13 20:27
兵庫県姫路市 下村酒造店
兵庫県姫路市 下村酒造店

【B蕎麦屋にて 全3回の②】

 当地からおよそ100km離れたところに、お気に入りの蕎麦屋がある。B蕎麦屋。まず、蕎麦が美味い。オヤジとわたくしの相性が良い。そして、酒の品ぞろえが豊富。これだけの好条件がそろっていれば、100kmなんて距離は問題ない。列車を利用すれば1時間だ。

 この蕎麦屋で師走のある日、タケちゃんと飲んだ。タケちゃんは、わたくしがリーダーを務める登山グループのコック長。2人だけの忘年会。タケちゃんはB蕎麦屋の近くに住んでいるのだ。

 B蕎麦屋は定番酒を25種類ほど置いているが、オヤジの隠し酒が面白いので、わたくしはいつも隠し酒を出してもらう。今回の隠し酒は「天宝一 特別純米 八反錦」だった。

 2番目にいただいたのは定番の一つ「奥播磨 山廃 純米 播秋 兵庫夢錦 生」だった。この酒が定番に名を連ねているなんて、すこぶる付きのユニークチョイス。居酒屋でも、この酒を定番に置いているところはすくないはず(その後、当地のB居酒屋の冷蔵庫の中にもあった)。

 わたくしお気に入りの銘柄の一つが「奥播磨」である。以前、かなり「奥播磨」を偏愛し、これだけを飲み続けたことがある。その中でも、「奥播磨 山廃 純米」のぬる燗が理性を失うくらい旨く、「奥播磨 山廃 純米」(当連載【218】で紹介済み)は今でもわたくしの“ぬる燗ベスト5”の一つだ。今回は、その「奥播磨 山廃 純米」の生酒。興味津々でいただいてみる。

 タケちゃん「コレハ複雑な味だああ」

 酒蛙「うめぇ~! 濃醇。酸が立ち、深い甘旨みが酸に絡む。奥播磨のDNAであるところの、コメ的穀物的古本屋的菌類的表現不能的複雑旨みがドドドーンとくる。全体として力強い。う、う、うめぇ~! 奥播磨を飲むのは久しぶりだが、やっぱりうみゃ~」

 次に、ぬる燗を注文する。「温度を40℃にねっ!」と注文したが、出てきた燗酒は、なんと55℃くらいの「とびっきり燗」だった(わたくしの舌は絶対温感に近い正確さ)。女将さんがテキトーに燗をつけたのがありあり。なのに「は~い、ぬる燗で~す」と堂々と持ってくるあたりが憎めない。陶器のぐいのみに入れ、ちょっと時間を置き、温度を40℃くらいに下げて飲む。

 酒蛙「酸味が著しく立つ。旨みも激しく立つ。卒倒するくらい旨い」

 タケちゃん「まろやか。幸せ♪」

 酒蛙「コメの風味いっぱい。厚くてふくよか。“奥播磨DNA”が炸裂だあああっ!!!」

 やっぱり「奥播磨」の山廃は絶品だった。ただ、わたくしの記憶に残る「奥播磨 山廃 純米」は、よりシャープ感があり、今回の「奥播磨 山廃 純米 生」は、より丸みがあるようにおもえた。同じ条件で飲み比べをしてみたいものだ。わたくしの感想が変わるかもしれない。それにしても、この“奥播磨DNA”は、ハマれば病み付きになる悪魔的な誘惑因子を持っているとしかおもえない。訳の分からないことを書いたが、要するに、非常に個性的ということ。

 蔵のホームページはこの酒を「まったりと甘く香り、香ばしい旨み、しっかり骨太の味わいです。味の多さゆえ、旨みが濃く、飲み進めるに従って、さまざまな穀物を思い起こさせるような旨みが口中に広がります」と紹介している。この文章は、かなり正鵠を射ているとおもう。

 肩ラベルには以下の紹介文が書かれている。「播秋(ばんしゅう)  米処、播州で穫れた酒米『兵庫夢錦』を使用して山廃仕込にて醸しました。豊かな秋の味わいをお楽しみ下さい」

 ラベルの表示は「原料米 兵庫夢錦100%(兵庫県産米)、精米歩合55%」。「兵庫夢錦」は兵庫県立中央農業技術センター酒米試験地が1977年、母(「菊栄」と「山田錦」のF2)と父「兵系23号」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定、1986年に命名、1987年に種苗法登録された酒造好適米。

酒蛙