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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2356】喜久盛 タクシードライバー 純米原酒 生酒(きくざかり)【岩手】

2016.3.17 18:21
岩手県北上市 喜久盛酒造
岩手県北上市 喜久盛酒造

【日本酒研究会拡大月例会 全6回の⑥完】

 毎月1回、異業種間の飲み会を開いて足掛け10年になる。よく続いたものだ。その間、異動でメンバーはすこしずつ変わった。そこで、いつもの現役メンバーに当地を離れたメンバーを加えて研究会を開くことになった。研究会といっても名ばかりで、単なる清酒を飲む会だ。場所はいつものM居酒屋で。

「越乃白雁 純米 中取り無濾過 生酒」と「嘉山 越淡麗 純米吟醸 無濾過原酒 生酒」「与右衛門 特別純米 無濾過 岩手吟ぎんが50%精米」「ゆきの美人 純米大吟醸 出品仕様 生」。「美丈夫 純米吟醸 純麗たまラベル」「阿櫻 純米吟醸 美郷錦 無濾過生酒」と飲み進め、M居酒屋の最後7番目は、満を持して「新政 瑠璃 2014 純米 美山錦」(当連載【2003】で紹介済み)だ。〆を飾るにふさわしい酒だから、当初から、この酒をトリに使おうとおもっていたのだ。

 これで、一次会は終了。近年の日本酒研究会は二次会無しでやっているが、スタート当初は、M居酒屋で一次会、H居酒屋で二次会が定番だった。ということで、スタート当初を懐かしみ、H居酒屋で二次会をすることになった。

 H居酒屋に行ったら、店主が「SKさんからお酒が届いていますよ」。なんと、SKはさきほどのM居酒屋に自分の分身である「与右衛門 特別純米 無濾過 岩手吟ぎんが50%精米」を送ったほか、H居酒屋にも分身を送っていたのだ。ありがたいことだ。こちらの分身は「喜久盛 タクシードライバー 純米原酒 生」である。

「タクシードライバー」は大ブレイクし、今や全国的に超人気酒。造りのコンセプトや蔵の現状、大ヒットのきっかけなどについては、「dancyu」の2016年3月号に詳しい。当連載でも「喜久盛 タクシードライバー 純米原酒」(当連載【706】で紹介済み)を取り上げたことがある。今回の酒は「喜久盛 タクシードライバー 純米原酒」の生酒である。

「タクシードライバー」“誕生”については、2012年1月に共同通信が配信した記事に書かれている。以下に転載する。

「岩手県北上市の喜久盛酒造が手掛ける『タクシードライバー』の由来は同名の米国映画。日本酒離れが進んでいると感じていた社長の藤村卓也さん(39)が、人目を引く名前で興味を持ってもらえればと考えた。

 東日本大震災後、被災地の酒蔵を支援していた、きき酒師として知られる葉石かおりさん(45)の紹介で、2011年9月から大手コンビニの通販サイトで販売することが決まった。

 映画ファンがブログで取り上げるなど反響も出始めており、藤村さんは『どんなきっかけでもいい。とりあえず飲んでもらえれば日本酒の良さを感じてもらえるはず』と期待を込める」

 裏ラベルの記述によると、「命名・ラベルデザイン 高橋ヨシキ」とクレジットされている。ウィキペディアによると、同氏は「1969年生まれ、東京都新宿区出身のアート・ディレクター、ライター、デザイナー」という。「タクシードライバー」は、ロバート・デ・ニーロのヒット作として著名。

 B 「ガツンと来たよぉ~♪ いい酒だなあ、これ」

 F 「いいね」

 酒蛙「旨っ! 旨みと酸が立ち、辛みも立つ。濃醇で極めてパワフル。味が残る。すこし昔っぽい酒というか、野武士っぽい酒というか、田舎くさいところがそこはかとなくある」

 F 「この田舎くさいところがいいんだよぉ」

 K 「これ、いい。昔の風味がしているのがいい」

 B 「上品なだけがいいってもんじゃないんだあああ」

 酒蛙「甘みもある」

 みんな勝手なことを言っているが、総じて力強く個性的な酒、ということで共通している。ラベル、タイトル、酒質、そのいずれものキャラが立っている。この、“キャラ総立ち酒”のおかげで、大ヒットにつながったのだ。何が幸いするか分からないものだ。

 瓶の裏ラベルが興味深い。酒度は辛口に超がつく+10、酸度は酸っぱさに超がつく2.4、アミノ酸度はコクに超がつく1.7。超超超。強い個性のぶつかり合いだが、全体としてのバランスは崩れておらず、まとまりの良さを見せている。

 裏ラベルの原料表示は「原材料名 米(岩手県産)米麹(岩手県産米)、精米歩合55%」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。「dancyu」の2016年3月号によると、使用米は主食用米の「かけはし」だという。「かけはし」は1984年、岩手県立農業試験場が、母「コチミノリ」と父「はなの舞」を交配。選抜と育成を繰り返し品種を固定。1994年に命名、1995年に種苗法登録された主食用米。

 表ラベルに「六号酵母使用」という小ラベルが後貼りされているのが興味深い。6号酵母は、秋田県の新政蔵から分離された酵母で、我が国における酒造を根本から変え、業界の近代化に多大な貢献をした酵母である。新政蔵は、プライドを持って、今も6号酵母だけを使い続けている。

酒蛙