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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2392】吟風國稀 純米(ぎんぷう くにまれ)【北海道】

2016.4.24 0:01
北海道増毛町 国稀酒造
北海道増毛町 国稀酒造

【函館にて 全3回の①】

 去る3月26日に北海道新幹線が開業した。北海道がついに新幹線で本州と結ばれた。おそらくは、観光客が大勢、函館に押し寄せるだろう、とおもい、にぎやかになる前に函館に遊びに行った。といっても、函館には何回か訪れており、名所はあらかた知っている。今回は、毛ガニを食べるのを最大の目的にした。

 函館に着いてすぐ毛ガニを食べたため、所期の目的を早々と達成。あとは居酒屋で飲むだけ。函館市内の居酒屋は非常に多いが、驚いたことに、どこもかしこも「活魚」をウリにしている。わたくし、酒を飲みながら刺身を食べない。ましてや、死後硬直で硬く旨み・甘みが全くない活魚の刺身は全くの苦手だ。が、活魚居酒屋ばかりなので、しょうがなく、そのなかの一つに入り、鍋をアテに酒を飲むことにする。

 まず最初に選んだのが「吟風國稀 純米」。ここの蔵は、日本最北端の酒蔵として知られる。「國稀」は何度か飲んだことがあり、素朴でしっかりとした味わいの酒、という好印象を持っている。これはどうか。冷酒でいただいてみる。

 しっかりとした酸味が印象的。これが第一印象。旨みけっこうあり、これにコメの甘みが続く。中盤から余韻にかけては辛み。余韻には苦みも混じる。香りが抑えられ、全体的に、けっこう力強い酒。芯が一本通っているようなイメージ。中でも酸味が非常に立ち、ひとことで言えば酸旨辛酒。飲み飽きしない、長く飲める食中酒として最適のお酒だとおもった。このような酒の一升瓶を立て、仲間とゆるゆると飲み続ければしあわせだろうな、とおもわせる酒だった。

 瓶の裏ラベルはこの酒を「北海道産酒造好適米 吟風を使用しています。純米酒のこくがありながら、さわやかな後味で料理をひきたてる淡麗な中辛口です」と紹介している。また、蔵のホームページはこの酒を以下のように紹介している。

「暑寒別岳連峰を源とする質の良い水と厳選した北海道産 吟風を65%まで磨き南部杜氏の伝統の技で醸しています。このお酒は純米酒のこくがありながらさわやかな後味で料理を引き立てる淡麗な中辛口です。北海道の寒冷な大地が育んだみずみずしい味わいです」

 ともに、淡麗酒であることをうたっているが、わたくしの口には、淡麗でははく、けっこう力強いしっかりとした味わいのお酒に感じた。ま、人それぞれの舌は違い、100人いれば100人の味覚が違うのだから、これでいいのだ。

 瓶のラベルの表示は、原料米:北海道産「吟風」100%、精米歩合:65%。「吟風」は北海道立中央農業試験場が1990年、母(「八反錦」と「上育404号」の子)と父「きらら397」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定。1999年に命名、2002年に種苗法登録された酒造好適米。

 ところで、なぜ國稀なのか。蔵のホームページを開いて、調べてみた。そこには、ドラマがあった。ちょっと長いが、そのまま、ここに貼り付けてみる。

「現在、当社の社名ともなっている酒の代表銘柄の『國稀』も、その昔は『國の誉』でした。『國稀』という名の酒が、乃木希典元陸軍大将の名前にちなんで、定番の商品名として登場したのが大正9年のことです。明治35年、旭川の第7師団は盛岡の第8師団と共に、寒さに強いという理由で日露戦争に出征します。この第7師団にはたくさんの増毛町民(国稀酒造の所在地)が入隊しており、激戦地ともなった203高地での死者数も多数となりました。戦後、戦没者を弔うために慰霊碑を建てる話が持ち上がり、当社創業者である本間泰蔵がその発起人となったのです。町民の寄付を募り費用をまかない、明治40年頃、泰蔵が東京の乃木希典元陸軍大将に碑文の揮毫の依頼に赴きました。実際に面会し乃木大将の人格に大きな感銘を受けた泰蔵は、増毛に戻り、乃木希典の希の一字をもらい『國の誉』を『國稀』と改めました。『希』ではなく『稀』としたのは、そのまま使用するのはおこがましいと考えたためで、『のぎへん』をつけて『国に稀な良いお酒』という意味合いももたせました」

 いい話である。

酒蛙

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