メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2430】鴎外 原酒(おうがい)【島根】

2016.5.29 21:11
島根県鹿足郡津和野町 財間酒場
島根県鹿足郡津和野町 財間酒場

【P居酒屋にて 全9回の③】

 半年ぶりの、酒友・オタマジャクシ&U&美女軍団との飲み会。オタマジャクシは蛙のわたくしより若いため、そう自称している。この飲み会の場所は、P居酒屋と決めている。お茶目な店長が、各地の面白そうな酒を集めてくれるので実に楽しい。

「御慶事 純米吟醸 ひたち錦」「猩々 純米吟醸 露涼し」に続いて店長が持ってきたのは「鴎外 原酒」。3つとも、わたくしが飲んだことのない蔵の酒。P居酒屋の店長は、わたくしが飲んだことがない蔵の酒を用意してくれるのだ。ありがたいことだ。

 ところで、この酒は、栓の直下を一周する小さなラベルが貼られており、そこに酒名とスペックが書かれている。酒名は崩した字で書かれており、わたくしたちは「酸外」と呼んだ。酒に酸はつきものだが、なんだか変な名だなあ、と心の中でおもっていた。

 今回、この記事を書くにあたり、調べてみたら、「酸外」ではなく、なんと「鴎外」だった。森鴎外の名をちょうだいした酒だったのだ。わたくしのようなウスバカ酔脳の飲み手も多くいる(たぶん)とおもうので、酒名は、カッコつけて崩したりせず、猿にも分かるように書いていただきたい。年間550種類の酒を何年も飲み、幾多のラベル字を見てきているわたくしが感じていることは、「読めない酒名」は多くの場合、(地元で)高名な書家に依頼して書いてもらったケースである。読めない酒名より、活字酒名の方がよっぽどうれしい。

 ウィキペディアで調べてみたら、森鴎外はこの蔵の所在地・津和野町で生まれているのだ。だから、酒名に鴎外の名をちょうだいしたのだろう。ちなみにウィキペディアのその部分の記述は以下の通り。

「1862年2月17日(文久2年1月19日)、石見国鹿足郡津和野町町田村(現島根県津和野町)で生まれた。(中略)1872年(明治5年)、廃藩置県等をきっかけに10歳で父と上京。墨田区曳舟に住む。(中略)翌年、残る家族も住居などを売却して津和野を離れ、父が経営する医院のある千住に移り住む」

 さて、「鴎外」をいただいてみる。

 オタマジャクシ「酸味の陰に熟成感的昭和レトロ的風味が…。三位一体」(酸に引っ掛けた駄洒落に、一同「さぶっ……」)

 M 「(熟成感的昭和レトロ的風味が)います、います」

 F 「あ、いるね」

 ウッチー「そう言われてみれば…」

 酒蛙「酒に色がついている。無濾過の色か?熟成の色か? 熟成感的昭和レトロ的風味がいる。味が強いなあ。酸が立っている。旨みたっぷり。辛みもたっぷり。余韻の辛みが長いなあ」

 F、M「ラベルはかわいいんだけど、酒質とイメージが合わない」

 酒蛙「たしかに。辛い、辛い」

 ウッチー「きついよ、これ」

 誰か「(ラベルのスペックを見て)わーっ、アルコール分が19度以上20度未満だってよ~!」

 酒蛙「すげぇ。清酒のアルコール分のマックスは21度くらい」

 みんな「ということは、清酒アルコール分のマックスに近い強さなんだ。道理で強く感じるわけだ」

 酒蛙「それにしてもつぇぇぇ~! 味の各要素がみんな強い。ナタのような力強さ。大砲のようなパワーがある。こりゃ、男酒だあ」

 強くてパワフルな酒質と、かわいいラベルはまったくそぐわない。このラベルは、瓶を一周しているため、一枚の写真では表現できない。そこで、どんな絵が描かれているのか、簡単に説明する。正面は、満開の桜の下で、カッパの酒盛り。アテは魚。カラスもいる。その右側は、緑をたたえている木にホタルが明かりを点滅させ、種類不明の鳥が舞っている。その右は、赤い紅葉の下でカッパが魚釣り。アマガエルが見物している。その右は、赤く熟した柿の木の下で、カッパが蒸気機関車に乗っている…。ひとことで言えば、四季を表現したラベルだ。

酒蛙