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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2444】山頭火 純米原酒(さんとうか)【熊本】

2016.6.6 23:38
熊本県上益城郡山都町 通潤酒造
熊本県上益城郡山都町 通潤酒造

【B居酒屋にて 全5回の①】

 点数カラオケ仲間のYと「自主トレしようか」「いいね、いいね」と話が即決。B居酒屋で飲むことにする。なんのための自主トレなのか、イマイチはっきりしないが、それはどうでもいいのだ。飲めれば。点数カラオケの練習場はスナックN。その近所のなじみの居酒屋はB。ということで、B居酒屋で飲むのは当然の帰結だった。

 トップバッターに選んだのは「山頭火 純米原酒」。「ほんによかった 夕立の水音が そこ ここ」という山頭火の俳句が素朴な文字で書かれたものがラベルになっている。インパクト大。

 ラベルを見ると熊本の酒。「ということは、熊本地震の復興支援のため入れたの?」と店長に聞いたら、「はい、そうです。店にとっては初めての蔵。復興支援のため、2本入れました」。それなら、この酒から飲まなければならない。

 酒蛙「ふくよかで甘みあり。なめらか感はなく粗っぽくて濃醇。飲みごたえがたっぷりある」

 Y 「苦みがある」

 酒蛙「旨みを伴う甘みが味の中心。飴的な甘み。中盤から後半は辛みと苦み。余韻も辛みと苦み。香りはほとんど抑えている。アルコール感が強めだ。濃くて強い酒だ」(ラベルによるとアルコール分は18度)

 Y 「全体的にどっしりして、強めのお酒だ。酸はあまり感じない」

 酒蛙「酸は、しばらくたってから遅れて出てくるよ。しかし、シャープでクリアな酸ではなく、ナタというか丸太のような、あまりはっきりしない重めの酸だ」

 蔵のホームページはこの酒を以下のように紹介している。「山都町の清らかな湧き水、質の良い米、そして職人の手仕事によって醸し出される『純米原酒』です。絞り立てのお酒になにも加えず零度の冷蔵庫で静かに熟成させました。まさに『地酒』の中の『地酒』です」

 ラベルの表示は「原材料 米(熊本県山都町産)米麹(熊本県山都町産米)、精米歩合60%」にとどまり使用米の品種名が非開示なのは残念だが、蔵のホームページは「原料米 レイホウ(熊本県山都町産)」と開示している。

「レイホウ」は農林水産省九州農業試験場作物第1部作物第1研究室が1959年、母「ホウヨク」と父「綾錦」を交配、育成と選抜を繰り返し開発。1969年に命名されたコメの飯米用品種。1972年には西日本を中心に15万7,000ヘクタールで栽培され、品種別作付面積では全国3位だったが、次第に作付が減り現在は、佐賀県、福岡県を中心に栽培されている。もともとは飯米用だったが、いまは酒米の掛米としての利用がほとんどだ。

 ラベルは、同じ俳句を掲載しているのではなく、毎回、違う俳句を載せている。だから、ラベルの俳句は違っても、中身は同じだ。

 なぜ、山頭火の俳句なのだろう。調べてみたら、山頭火は熊本に縁があった。種田山頭火は明治15年、山口県佐波郡西佐波令村(現・防府市)に生まれた。家業が失敗したことで大正5年、種田家は破産。山頭火は大正5年、友人を頼って妻子とともに山口から熊本へ移った。大正14年、熊本市で得度。翌年から放浪の旅に出た。

 熊本地震で、この通潤酒造も大きな被害を受けた、という。一日も早い復興を願わずにはいられない。

酒蛙

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