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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2486】酔仙 吟醸酒 初呑みきり(すいせん)【岩手】

2016.7.4 22:15
岩手県大船渡市 酔仙酒造
岩手県大船渡市 酔仙酒造

【H居酒屋にて 全3回の①】

 異業種間の登山グループがある。1年に1回くらい登山し、1年に何回か飲み会を開いている。昨年の初夏に登り、反省会を開いてからというもの、納涼会、忘年会、新年会、送別会も開かれないまま時が過ぎていった。理由は、メンバーの家族の不幸が相次いだためだ。

 で、忌明けが終わったあと、忘年会兼新年会兼「今年の決起集会」をいつものH居酒屋で開いた。懐かしい面々もあれば、新しい人も。なにしろ、送別会も開かれなかったから。

 お酒は主要メンバーが持ち込んだ。まずトップバッターは「酔仙 吟醸酒 初呑みきり」。名が知られた岩手県の地酒だが、わたくしがこの蔵の酒を飲むのは初めてだった。冷酒でいただいてみる。

 酒蛙「上立ち香の熟成感的昭和レトロ的風味がすごい」

 A 「わっ、この上立ち香はすごい。個性的だ」

 E 「これ、悪くないね」

 S 「辛みを感じる」

 F 「上立ち香の熟成感的昭和レトロ的風味はすごいけど、含み香はそれほどでもないね」

 酒蛙「甘みがあり、やわらかタッチ。中盤から酸が出てくる。キレが良い。全体として軽快な感じ。とにかく、熟成感的昭和レトロ的風味がすごい」

 I 「昭和的な酒ですね」

 A 「吟醸香があまり感じられない」

 ラベルの表示は「原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール、精米歩合50%」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 ラベルに「初呑みきり」と書かれている。これは、酒の熟成程度を知るため、杜氏さんが6-8月ごろ、それまで封印されていた貯蔵タンクの口を開け、味を確認、その後の出荷計画の参考にする重要な作業と位置付けられている。「初呑みきり」とラベルに書いた、ということは、蔵の杜氏さんにしか味わえない“楽しみ酒”を、ユーザーにも味わってもらおう、という趣向だ。

「酔仙」という酒名の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「岩手県沿岸の最南端(旧気仙郡)に永い伝統を誇る8軒の造り酒屋がありました。戦時中の『企業整備令』により、この8軒が1つにまとまり『気仙酒造』を設立します。これが『酔仙酒造』の前身です。地元出身の画家・佐藤華岳斎はこの酒をこよなく愛し『酔うて仙境に入るが如し』と讃え、銘柄を『気仙』から『酔仙』へ改めるよう勧めたことが酒名の由来です。 その名の通り、『地元の風土に合った美しい酒』、『芳醇にして呑み飽きしない酒』を目指し、陸前高田の本社工場では操業開始以来、改良と試行錯誤を重ねて自分たちの酒造りを確立してきました」

 この蔵は、東日本大震災で、壊滅的被害を受けた。被害状況と復興までの道のりを、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「平成23年3月11日、14時46分、東日本大震災発生。今まで聞いたことの無いような地響きと激しく長い揺れが続きました。 その30分後、海岸から2キロに位置する酔仙酒造まで津波は到達し、瓦礫まじりの大津波により木造4階建ての倉庫を含む全ての建物が水面下に沈み、壊滅・流失しました。高台に登り、瓦礫の山と化した酔仙を初めて見た時は『あぁ、これでもう全ておしまいだ』という気持ちになりました。しかしながらこの直後、報道カメラのインタビューで社長は『必ず復興する!』と明言しました。このことで会社としての方向性が決まり、酔仙の復興が始まりました。

(中略)

翌年、3月には岩手県大船渡市に新工場の建設を開始しました。国の復興事業補助金が決まり、異例の早さでの新工場建設でした。完成までわずか5ヶ月。ゼロの状態から仕込みを開始できるまで半年間。その中で全ての準備をしなければならないため困難な道のりでしたが同8月、新工場にて仕込みを開始するに至りました」

酒蛙