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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2628】きらい 特別純米 黒 旨口【徳島】

2016.12.1 0:47
徳島県美馬市 司菊酒造
徳島県美馬市 司菊酒造

 会社から帰宅、普段着に着替え、近くのH居酒屋へ。今回は「きらい」を飲むことをあらかじめ決めていた。醸造元は司菊酒造。わたくしにとって初蔵酒であることを店主が知っていて、店に入れてくれたのだ。ありがたいことだ。

 それにしても酒名が「きらい」とは! 「嫌い」を連想させる禁じ手をあえて使ったとしかおもえない。絶大なインパクト。一度知ったら、忘れられない酒名だ。あとで調べてみたら、この蔵の主銘柄は「司菊」と「喜来」(きらい)の2つで、「きらい」は「喜来」の新バージョンだったのだ。

 酒販関係サイトで同蔵は「きらい」という酒名について、次のように言っている。「『きらい』とは、弊社酒蔵がある地名が別名『喜来』である事から由来する。H28年5月に立ち上げたばかりの新ブランドです。キライはスキの裏返し、嫌いになりたくてもなれないほど『虜』にするお酒を目指しております」

 今回、「きらい」を飲む1週間ほど前に、テイスティングのため、同じ酒を冷酒でいただいている。このテイスティングは、1行コメント付きの酒メニュー表をつくるためだ。酒名だけずらり並んだメニューを見ても、ほとんどのお客さんはどんな酒なのか分からない。H居酒屋では、お客さんのために、酒質を1行で紹介する酒メニューを出しており、そのコメント書きはわたくしの役目、というわけだ。

 テイスティングのため「きらい 特別純米 黒 旨口」を1週間前に飲んだときの感想は以下の通り。

 酒蛙「甘みがきて、中盤から余韻にかけては辛みが強い」

 店主「辛いな。酸が分からないなあ」

 酒蛙「旨みがあって、酸も適度にあって、けっこうしっかりとした味わい。余韻に苦みも出てきた」

 店主「甘みを感じる」

 酒蛙「この酒、いいじゃないか!」

 店主「普通に飲めるね」(この場合の普通は若者言葉で、かなり肯定的ニュアンスを持つ)

 酒蛙「甘・旨・酸・苦・辛がいずれも感じられる。香りは抑えられている」

 1週間後、今度はこの「日本酒津々浦々」の記事を書くため、飲み直す。まずは冷酒で。

 酒蛙「さらっとした飲み口で酸を感じる」

 店主「うん、酸だな」

 酒蛙「旨みがいいね」

 店主「すこし冷やし過ぎたかな。温度がすこし上がったら、味がだんだん出てきた。酸・甘・苦・辛がいいね」

 酒蛙「こりゃ、いいなあ。いい感じの酒だ。酸が良い。余韻も酸だ」

 店主「瓶の裏ラベルに『やや濃醇』って書いています」

 酒蛙「濃醇とはおもえない。むしろ、さっぱりした感じだ」

 店主「飲みやすいっす」

 酒蛙「酸が出て、さっぱり系だから、飲み飽きしない」

 店主「クセが無いね」

 酒蛙「香りは抑えられている。温度がすこし上がってきたら、とろみが出てきて、やや濃醇になってきた。冷蔵庫で冷やし過ぎたから、最初のうちは、味が縮こまっていたんだね」

 1週間前とあとでは、基本的には同じだったが、違っていたのは酸の出方。1週間前の酸は目立った出方をしていなかったが、1週間あとでは、酸がかなり前に出るようになった。おそらくは、開栓に伴うデキャンタ効果の一つではないか、とおもっている。

 次に、ぬる燗にして飲んでみる。湯煎で、温度はちょうど40℃。

 酒蛙「酒質がやわらかくなった」

 店主「酸が長い。辛い。甘・苦・酸・辛それぞれの味が大きくなる」

 酒蛙「バランスが良い。甘・旨・酸・辛・苦のバランスがちょうど良い。軽くて、実に飲みやすい。甘みが出てくる。余韻の酸がいいね」

 瓶の裏ラベルはこの酒を「口に含むと穏やかな香りが懐かしく、しっかりとしたお米の旨みが広がります。甘辛度『やや辛口』、濃淡度『やや濃醇』、おすすめの飲み方/室温、ぬる燗」と紹介している。

 また、裏ラベルの表示は「原料米 吟のさと100%、精米歩合63%(掛米63%、麹米50%)」。「吟のさと」は(独)農研機構九州沖縄農業研究センター筑後研究拠点稲育種ユニットが1996年、母「山田錦」と父「西海222号」を交配、育成と選抜を繰り返し品種を固定。2007年に命名、2010年に種苗法登録された、新しい酒造好適米だ。

 蔵のホームページによると、社名および銘柄名の「司菊」の由来は「菊の花のふくよかで気品ある香りを酒の理想として命名された」という。

酒蛙

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