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日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2894】伊奈備前守 忠次 純米(いなびぜんのかみ ただつぐ)【埼玉】 

2017.5.14 11:24
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埼玉県蓮田市 神亀酒造
埼玉県蓮田市 神亀酒造

【H居酒屋にて 全6回の⑤】

 なじみのH居酒屋の店主からメールが入った。「新しいお酒が6種類入ったので、テイスティングにいらっしゃい」。おおっ、それなら行かなければならない。おっとり刀でH居酒屋に向かった。わたくしは、H居酒屋の酒メニューをつくってあげている。ふつうの酒メニューは酒名の羅列だが、これだとお客さんはどんな酒なのかさっぱり分からない。このためわたくしが、酒名の隣に酒質の1行解説を付けたメニューをつくってあげており、これが好評。そのためにはテイスティングが必要、というわけだ。

「隆 純米大吟醸 播州山田錦45 火入 2014年度醸造」「山川光男 2017 ふゆ 生」「高清水 純米大吟醸 和の酒倶楽部」「ひこ孫 純米吟醸 凡愚」と飲み進め、5番目に選んだのは「伊奈備前守 忠次 純米」だった。この酒も「ひこ孫」同様、神亀酒造のお酒だ。いただいてみる。まずは冷酒で。

 酒蛙「うおっ! 熟成香むんむんだ。直前に飲んだ『ひこ孫 純米吟醸 凡愚』に似るが、『ひこ孫』の方が熟成香が強くて、より濃厚。でも、この『忠次』も十分に力強い」

 店主「熟成香があるある」

 酒蛙「酸が出ている」

 店主「甘みもある。キレが良い」

 酒蛙「酸がいい。旨みがたっぷり。中盤から余韻は苦み」

 店主「熟成感がたっぷり。すごいな」

 酒蛙「熟成風味たっぷり、酸がたっぷり、旨みたっぷり。みんなたっぷり。直前に飲んだ『ひこ孫 純米吟醸 凡愚』の方がより個性的だが、この『忠次』も十分に個性的だ」

 次に燗酒をいただいてみる。温度は50℃の熱燗。

 酒蛙「酸が立つ」

 店主「いい感じだ」

 酒蛙「古酒香の広がりが、直前に飲んだ『ひこ孫』よりすくないかな」

 店主「酸は『ひこ孫』より、こっちがさらに立つ」

 酒蛙「同感。いいね、いいね」

 店主「渋みもある」

 酒蛙「同感」

 店主「あああ、旨いわあああ」

 ラベルの表示は「精米歩合55%、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、掛米 彩のかがやき100%使用」。「彩のかがやき」は、埼玉県農林総合研究センターが1992年、母「祭り晴」(愛知92号)と父「彩の夢」(玉系88号)を交配。育成と選抜を繰り返して開発。2005年に品種登録された埼玉県の酒造好適米だ。

 また、瓶の裏ラベルは、伊奈備前守忠次について、以下のように紹介している。

「忠次は、33歳で徳川家康に仕え、天正18年(1590)家康とともに関東に入国し、武州小室(現伊奈町丸の内)に陣屋を構え、代官頭として関八州(現在の関東一円)を中心に検地・治水や新田開発等に尽力した人物です。

 伊奈町の町名も忠次の功績を讃え名付けられたものです。この度、伊奈町、町観光協会、町商工会そして埼玉県のご支援により純米酒・伊奈備前守忠次を発売することができました」(酒蛙注…伊奈町は、埼玉県北足立郡にあり、神亀酒造のある蓮田市や、上尾市、桶川市に隣接している)

 なぜこの酒が世に出たかについては、裏ラベルの説明だけでは分かりにくい。そのあたりの経緯について、2016年10月13日付の毎日新聞サイトの記事が分かりやすいので、以下に転載する。

「戦国時代から江戸時代にかけ、関東一円の治水事業などで功績を残し、伊奈町の名前の由来ともなった武将、伊奈備前守忠次の名を取った日本酒『純米酒 伊奈備前守忠次』の今年の製造分が完成した。10日から、町内の酒店やコンビニエンスストアなどで販売が始まった。限定1000本。

 忠次は、武蔵国小室(現在の伊奈町)に陣屋を構え、関東各地で治水、土木、開墾などの事業を行ったことで知られ、同町は忠次を生かした町おこしに取り組んでいる。その一環として、町観光協会が町内の酒店などとともに日本酒の製造を企画し、隣接する蓮田市にある神亀酒造の協力で2012年から販売を始めた。

 原料の一部には、伊奈氏が開墾した綾瀬川流域で生産された県のブランド米『彩のかがやき』を使用。まろやかだが、さっぱりした味わいに仕上がったという」

 このお酒は伊奈町観光協会の企画商品だったのだ。だから、酒名に「神亀」や「ひこ孫」という神亀酒造の看板銘柄が付いていなかったのだ。

酒蛙

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