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日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2895】ひこ孫 sweet10 生原酒【埼玉】 

2017.5.16 11:25
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埼玉県蓮田市 神亀酒造
埼玉県蓮田市 神亀酒造

【H居酒屋にて 全6回の⑥完】

 なじみのH居酒屋の店主からメールが入った。「新しいお酒が6種類入ったので、テイスティングにいらっしゃい」。おおっ、それなら行かなければならない。おっとり刀でH居酒屋に向かった。わたくしは、H居酒屋の酒メニューをつくってあげている。ふつうの酒メニューは酒名の羅列だが、これだとお客さんはどんな酒なのかさっぱり分からない。このためわたくしが、酒名の隣に酒質の1行解説を付けたメニューをつくってあげており、これが好評。そのためにはテイスティングが必要、というわけだ。

「隆 純米大吟醸 播州山田錦45 火入 2014年度醸造」「山川光男 2017 ふゆ 生」「高清水 純米大吟醸 和の酒倶楽部」「ひこ孫 純米吟醸 凡愚」「伊奈備前守 忠次 純米」と飲み進め、最後6番目にいただいたのは「ひこ孫 sweet10 生原酒」だった。

 酒蛙「甘い。おやっ?熟成香がいない」

 店主「おーっ! 熟成香がいない、いない。でも甘い」

 酒蛙「甘旨みはあるが、酸があまり感じられない」

 店主「なるほど、酸はいないね。ラベルによると、アルコール分は17度以上18度未満だが、数字ほどには強さを感じない。飲みやすいね」

 酒蛙「デザート・スイーツ的な甘さだ。完熟マンゴーをおもわせる」

 店主「後味は辛い」

 酒蛙「うん、エンディングは辛みと苦みだね。『ひこ孫』を名乗っているけど、熟成香がいない。不思議だなあ」

 瓶のラベルの表示は「アルコール分 17度以上18度未満、原材料名 米(国産)、米麹(国産米)」にとどまる。「酒屋源八」(山形県西村山郡河北町)サイトには「神亀とひこ孫の違いは、米違いとその米が違うことによる熟成年数の違いと言うことで した。神亀は美山錦、ひこ孫は阿波山田錦を使用し、熟成には阿波山田錦がより時間がかかるということで3年以上タンクで貯蔵されてからの出荷なのだそうです」と書かれている。ということは「sweet10」の原料米は「阿波山田錦」なのだろうか。

 瓶のラベルはこの酒を「日本酒度マイナス10。麹甘酒4段仕込みの生原酒。よく冷やして、そのままで。ロックで。炭酸割りで」と紹介している。一般的に清酒は、乳酸が薄まって雑菌が増殖するのを防ぐ目的で、乳酸が増える時間を稼ぐため、3回に分けて仕込んでいる。これを三段仕込みという。が、まれに、4回目の仕込みにもち米を加える四段仕込みが行われている。これは、甘みや旨みを出すためのテクニックとされている。このお酒も甘みを出すために四段仕込みを行ったものとおもわれる。

 それにしても、である。神亀酒造に対するわたくしのイメージは、時流に流されず、「神亀」「ひこ孫」にみられるように、熟成がウリの、燗酒に適した硬派な味わいの酒造りを愚直に貫いている、という印象だった。その神亀酒造が、熟成香が全く無く、甘みをウリにしたお酒を出すとは! わたくしにとって「sweet10」は、青天の霹靂のお酒だった。神亀酒造は、これからも、新しい酒造りに挑戦、新しい提案をしていくのだろうか。

酒蛙

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