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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2976】冨國論 大吟醸(ふこくろん)【福島】

2017.7.21 22:50
福島県耶麻郡西会津町 栄川酒造
福島県耶麻郡西会津町 栄川酒造

【日本酒研究会月例会 全6回の②】

 日本酒研究会月例会は、Tが仕事で欠席し6人で開かれた。場所はいつものM居酒屋。メンバーのBとFMは異動が決まっており、研究会参加は今回が最後となる。

 店主が「藤乃井 純米大吟醸」に続いて持ってきたのが「冨國論 大吟醸」だった。この酒も見るのも聞くのも初めての酒だ。わたくしは全蔵の酒を飲むことを目指しており、これに賛同した店主が、わたくしにとっての初蔵酒を探して出してくれるのだ。感謝感謝、だ。

 なによりも驚いたのは、この酒の名。国富論というとアダム・スミスではないか! 浅学菲才のわたくしは国富論を読んだことはないが、世界史の授業で知っていた。酒の名は「冨國論」。国富論とビミョーに違う。

 酒蛙「アダム・スミスって福島県出身だったのか?」

 みんな「まさか!」

 酒名の由来について、裏ラベルに書かれているようだが、字が小さいうえ、薄暗い店内と老眼が相まって読めない。撮影し、あとでパソコンで拡大して読むことにする。

 B 「辛い。硬い」

 酒蛙「まったりしている。甘みがあり、とろみがある。Bさんの意見と真逆だな」

 F 「トップバッターの『藤乃井 純米大吟醸』とタイプが似ている」

 酒蛙「うん、そうおもう。甘い」

 FM「最初は華やかに感じた」

 B 「平坦な味わいだ」

 酒蛙「うん、最初は酸が感じられなかったので、まったり平坦なタッチにおもっていたが、飲んでいたら、酸が中盤から出てきた。しかし、酸はすぐにいなくなる」

 FM「はい、酸がすぐ消えますね」

 酒蛙「やわらか、まろやか、ふくよかなタッチ」

 F 「特徴があまりないかも」

 B 「甘みがある」

 K 「個性がないかも」

 酒蛙「飲み進め、口が慣れてきたら、辛みも酸も出てきて、しっかりした味わいになってきた。メリハリも出てきた。大吟醸のわりには吟醸香がすくない」

 F 「はい、吟醸香はあまりしませんね」

 表ラベルには、以下のように書かれている。

「明治15年4月  

英國 亜〓斯密 著(アダム・スミス。〓は「ツ」の下に冨)

日本 石川暎作 譯」

 ラベルの表示は「原材料名 米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール、精米歩合45%」。使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 瓶の裏ラベルは、この酒名の由来について、以下のように説明している。

「今から220年前、イギリスのアダム・スミス(1723~1790年)によって『国富論』(1776年)が発表されました。近代経済学の誕生を意味したこの著書が、19世紀自由主義時代のイギリスを初めとする近代世界の経済政策の基調になり、日本ではその百年後に『冨国論』(1882年)として発刊されました。

翻訳者の石川暎作(1858~1887年)は、西会津町野沢に生まれ、福沢諭吉の慶応義塾で学び、“竹馬の友”で野口英世の恩師として知られる渡辺鼎(1858~1932年)とともに女性の洋髪化を勧めるなど、黎明期日本の教育と文化に大きな足跡を残しました。

暎作は、15歳まで学業の傍らこの地で酒造に従事しました。その“幻の酒”こそが、この『冨國論』の前身です。近代経済システムを象徴する『神の見えざる手』というフレーズに誘われ、明治のロマンに酔いしれてみて下さい。  15代目 石川屋 市十郎 敬白」

 福島民友のサイトによると、石川暎作は、ここの10代目蔵元さんの三男にあたる、という。

酒蛙