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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3555】玉川 特別純米 強力 無濾過生原酒(たまがわ)【京都府】

2018.9.16 22:32
京都府京丹後市 木下酒造
京都府京丹後市 木下酒造

【K居酒屋にて 全13回の⑦】

 酒友の唎酒師Nさん・Dさんと半年ぶりの飲み会。いつもは、TT居酒屋で飲み会を開いてきたが、TT居酒屋が店を閉めたため、Nさん推薦のK居酒屋で開いた。酒を1合単位では出さない店で、激しいカルチャーショックを受けた。長い居酒屋人生で初めてのこと。フロアには、知識豊富な20歳代女性の日本酒ナビゲーターがいて、あれこれ教えてくれる。お酒はすべて彼女に任せて飲むことにする。

「神蔵 七曜 純米大吟醸 無濾過生原酒」「月山 芳醇辛口 純米 無濾過生原酒 おりがらみ」「木内 純米吟醸 生酛造り 生原酒 しぼりたて」「瀧自慢 純米吟醸 雄町 本生」「悦凱陣 純米吟醸 ブルーボトル 無ろ過生」「李白 やまたのおろち 超辛・特別純米 黒ラベル」に続いて彼女が持ってきたのは「玉川 特別純米 強力 無濾過生原酒」だった。

「玉川」は今回の酒を含め、当連載で4種類を取り上げているが、連載が始まった2010年1月より以前にけっこう多くの種類を飲んだ。甘みが出る、力強い濃醇酸味酒という、強烈な印象が脳細胞に強く強く刷りこまれている。

 今回の酒は、復刻米「強力」を使っていることに興味が惹かれた。わたくしの印象では「強力」で醸したお酒は、非常にシャープな酒質になる傾向にある。濃醇酒を得意とする蔵が、すっきりシャープな酒になる強力米を使うと、どんな答えになるのか。興味津々でいただいてみる。

 N 「香りがすごい」
 D 「なるほど、これまでの6種類のどれとも似ていませんね」
 酒蛙「うん、クラシカル香味」
 N 「舌にぴりぴりくる」
 D 「昭和レトロ的香味がきました」
 N 「懐かしい香りだ」
 D 「木の香りを感じる」
 酒蛙「確かに木の香りがする。甘旨酸っぱいけど、これまでイメージしていた『玉川』とは違う。『玉川』がイメージされてきた、力強い濃醇酒の真逆に位置する、すっきり系だ。酸が際立ち、甘み、旨みも適度にある。これは面白い玉川だ。すっきりシャープな酒になる強力米を『玉川』が使うと、このような酒になるのか。う~ん、面白い」

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。「まぼろしの協会1号酵母、鳥取県産『強力』で仕込んだ特別純米酒。素朴な香り、さわやかな酸味、優しい旨味の味わいです」

 裏ラベルの表示は「アルコール分19度以上20度未満、精米歩合71%、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、原料米 強力100%、仕込水 城山の湧き水を使用」。

 使用米の「強力」は復刻米。「いなば鶴 純米 生酛 強力 無濾過生原酒」(鳥取県鳥取市 中川酒造)の箱に入っていた蔵のしおりは、「強力」について、以下のように説明している。

「『強力』は大正時代に鳥取県立農業試験場により在来種から選抜育成され、特産酒米として一時期には六千余町歩も生産されていました。
 強力米の歴史は古く、『山田錦』の祖先と言われている優良酒米『雄町』の更なるルーツであるという説もあります。 昭和20年代の食糧難の時代、反当たりの収穫量の少なさ、尋常でない背丈、大粒の為倒伏の危険といった理由から、特産酒米『強力』は姿を消しました。(中略)

 鳥取大学農学部で、永年、少量だけ育種、保存されていた種籾から、やっと、わずかではありましたが、単一品種醸造ができる量まで収穫することができました。

 低タンパクな米質を重視するため、低収穫量を覚悟の上で減農薬・低窒素肥料などを心がけ、見事、酒米『強力』は復活しました。その強力米と清らかな水を使った地酒がここに蘇りました」

 また、今回の酒は協会1号酵母でつくられているのが特徴。この酵母は、明治政府が国立醸造試験場を設立してから最初に頒布されたもの。明治39(1906)年に兵庫県の「桜正宗」蔵から分離された。大正6年から昭和10年まで第1号酵母として、日本醸造協会から頒布された。

 1号酵母で醸した酒は今では珍しく、わたくしはこれまで「Sogga pere et fils Numero Un 純米吟醸原酒 生酒」(当連載【1646】)を1種類飲んだだけだ。

 酒名「玉川」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「玉川は天保13年(1842年)、京丹後久美浜の地で創業しました。玉川という名前の由来は蔵のすぐ隣に川上谷川という川があり、玉砂利を敷き詰めた感の、清流であったそうです。当時、川や湖を神聖視する習慣もあり、玉(とてもきれいな)のような川というところから、玉川と命名されました。以来この地で綿々と酒造りに励んでいます」

酒蛙

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