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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3480】基峰鶴 Velvet 生(きほうつる)【佐賀県】

2018.7.16 16:54
佐賀県三養基郡基山町 基山商店
佐賀県三養基郡基山町 基山商店

【H居酒屋にて 全2回の①】

 なじみのH居酒屋の店主から「テイスティングしてほしい酒が2つ入ったので来てほしい」と連絡が入った。わたくしはH居酒屋の酒メニューをつくっている。ふつうの居酒屋の酒メニューは、酒名と値段の羅列だけ。これでは客はどんな酒なのか分からない。そこで、酒質の1行解説をつけたメニューをつくってあげている。これだとお客さんの選択要素になり、喜ばれている。そのためには、まずテイスティングをしなければならない。

 まずいただいたのは「基峰鶴 Velvet 生」。「基峰鶴」は当連載で、今回を含め6種類取り上げており、全般に甘みの立つ濃醇なお酒、というイメージを持っている。さて、この酒はどうか。まずは冷酒で。

 酒蛙「甘い! やわらか、ふくよか」
 店主「うむ、すっごく甘い」
 酒蛙「甘いフルーツを飲んでいるイメージ。スイーツみたいだ。甘濃醇酒だが、キレが良い」
 店主「旨いね」
 酒蛙「実に美味しい。南国フルーツみたいだ」
 店主「分かる、分かる。メロンでもバナナでもなくて」
 酒蛙「うん、リンゴでもない。よく分からないけど南国フルーツだあ。上品な甘みだ」
 店主「ベタつかない甘みだから、上品に感じる」
 酒蛙「おおっ、飲んでいたら、背後に酸が出てきた、出てきた。甘みと酸のバランスが実に良い。まじ、スイーツだあ。これは旨い。食中酒じゃないね」
 店主「うん、食前酒に適している」

 次に、ぬる燗にして飲んでみる。蔵元さんは、この酒を燗酒で飲むとは想定外だとおもうが、H居酒屋で初めての酒を飲むときは、冷酒と燗酒の“往復”で飲むのがお約束だ。ちろりで湯煎。温度は40℃ちょうどのぬる燗だ。さて、いただいてみる。

 店主「おっ、いいなあ。酸があるぞ。甘みは抑えられている。フルーティーさが増す」
 酒蛙「そうそう。フルーティーさと酸が増す」
 店主「その分、甘みが目立たない」
 酒蛙「同感」
 店主「これは旨い。(店にこの酒を入れたときの)想像以上に旨い」
 酒蛙「同感。燗酒にすれば、甘みが妙に強調されるのでは、とおもっていたが、違っていた」
 店主「冷酒より旨い」
 酒蛙「同感。造った人は、燗酒を想定していないだろうなあ」
 店主「同感」
 酒蛙「これは美味しい」
 店主「だいぶ旨いわ」
 酒蛙「かなりのハイレベル。いいなあ」
 店主「燗冷ましがまたいい。甘みが抑えられ、さらりとしている」
 酒蛙「いや、温度が下がると、やはり甘みが出てくる」
 店主「この酒を店に入れて、大正解だった」

 瓶の裏ラベルの表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、原料米 全量レイホウ、精米歩合50%、アルコール分16度、29BY、仕込14号、上槽日 30.3.14、杜氏 小森賢一郎」。なぜか、特定名称の区分表示が無い。このスペックだと純米大吟醸か純米吟醸だとおもうのだが、なぜ区分表示をしないのだろう。美味しい酒だけに残念だ。

「レイホウ」は農林水産省九州農業試験場作物第1部作物第1研究室が1959年、母「ホウヨク」と父「綾錦」を交配、育成と選抜を繰り返し開発。1969年に命名されたコメの飯米用品種。1972年には西日本を中心に15万7,000ヘクタールで栽培され、品種別作付面積では全国3位だったが、次第に作付が減り現在は、佐賀県、福岡県を中心に栽培されている。もともとは飯米用だったが、いまは酒米の掛米としての利用がほとんどだ。

 蔵のホームページは酒名の由来を「銘柄の『基峰鶴』は、国の特別史跡基肄城がそそり立つ基山の山懐を悠然と舞う鶴の優美な姿から名づけられたものです」と説明している。

酒蛙

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