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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3463】若波 純米吟醸 山田錦(わかなみ)【福岡県】

2018.7.4 13:41
福岡県大川市 若波酒造
福岡県大川市 若波酒造

 友人からお酒をいただいた。「若波 純米吟醸 山田錦」である。日本国外で最も古い日本酒のコンテスト「全米日本酒歓評会」で2018年、吟醸酒部門の金賞を受賞したお酒という。この酒の生酒バージョンは3月に出たが、火入れバージョンは秋から発売の予定。今回、ひと足先に届いた。

 若波酒造のお酒は、ほっこりした普段着感覚のお酒で、わたくしの口に合い、居酒屋の冷蔵庫で見つければ、即注文モード。その結果これまで、今回の酒を含め当連載で「若波」を10種類、「蜻蛉」を4種類取り上げている。その「若波」が手元に、しかもひと足先に届いたのだ。うれしい。感謝感激だ。さっそく晩酌酒としていただいた。

 上立ち香は青リンゴをおもわせる、爽やかな果実香。含んで仰天した。「おおおおっ!」と心の中で叫び、そして、心の中で絶句した。激超旨かったのだ。甘旨酸っぱくて濃醇な球形の塊が口の中で炸裂、えも言われぬ、別次元の世界が広がったからだ。

 この蔵は、ずっと「夢一献」(福岡県の酒造好適米)という酒米を中心に醸してきたが、「若波 純米大吟醸 山田錦 生酒」(当連載【3452】)から、一気に高いステージに上ったような気がする。俗に言うと“化けた”。この蔵と「山田錦」の相性は、激しく合っているのだろう。長い道のりを経て、ようやく巡り会えたマリアージュ、とでも言えようか。

 さて、自分の能力の限りを尽くし無理を承知で、今回の酒の味わいを、表現してみたい。甘旨酸っぱくて濃醇な酒は近年トレンドで、珍しくはない。しかし、今回の酒は味わってみると、突き抜けているのだ。それはなぜか。青リンゴと洋梨と温州ミカンを合わせたような果実味が非常に良く出ており、チャーミングで果実的な酸と見事に融合し、これ以上ないくらいジューシー&フルーティーな味わいになっているからだとおもう。フルーティーというと、ひと昔前の、「山田錦、熊本酵母、精米歩合35%」時代の吟醸香を連想するが、それとは違うモロ果実的香味で、ジューシー&フルーティーといっても、ジューシーによりシフトした味わいだ。

 ふくよか、やわらか、まるみがあり、とろみ感もある。火入れだがピリ感が心もちありフレッシュ感がある。このような酒質に甘旨酸っぱいジューシーな味わいが融合すると、日本酒というよりは、極上のトロピカルジュースというか、デザートスイーツを飲んでいるようなイメージだ。甘みは、和三盆に通じる上品さを持ち合わせている。

 ここまで書くと、いかにもくどそうな酒質におもわれそうだが、実は真逆で、キレが非常に良い。スパっと潔く切れ、余韻は軽い苦み。飲んだあと、さわやか感に浸ることができる。

 温度変化も試みてみた。結論からいうと、きりっと冷やした状態がベストだ。味に凝縮感があり、非常にスリリングなのだ。温度がすこし上がり、15℃くらいになると、甘みが前に出てきて、緊張感がやわらぐ。どちらがいいかは、好みの問題だ。

 このお酒は、若波酒造のフラグシップになる素質を十分に持ち合わせている。そして、わたくしは外国人ではないので、外国人の味覚を実感できないが、このお酒は海外に十二分に通用するのではないか、とおもう。

 テイスティングをしていたら、4合瓶は、あっという間に空になった。やっと飲み干した、というのではなく、気が付いたら空になっていた、という感覚。自然体で身体に入っていくお酒でもある。

 瓶の裏ラベルの表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)山田錦100%、精米歩合55%、アルコール分15%」。

 銘柄名および蔵名「若波」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。「大正11年創業。蔵の傍を流れる筑紫次郎(筑後川)のように『若い波を起こせ』と銘々されました」

酒蛙

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