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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3326】仁喜多津 純米吟醸(にきたつ)【愛媛県】

2018.3.29 12:42
愛媛県松山市 水口酒造
愛媛県松山市 水口酒造

【日本酒研究会月例会 全7回の①】

 異業種間の酒飲み会である日本酒研究会。2007年にスタート以来、毎月欠かさず開催、足掛け12年目に入る。人事異動でメンバー交代があり、現役メンバーは7人。今回は7人全員参加。とくに新メンバーSが初参加という記念すべき例会となり、いつになく盛り上がった。会場はいつものM居酒屋だ。

 会では日本の全現役蔵の酒を飲もう、という無謀な目標を持っている。M居酒屋の店主はこれに賛同、わたくしたちが飲んだことのない蔵の酒をせっせと取り寄せてくれる。今回は愛媛県の初蔵酒5種類を出してくれる、という。ありがたい。感謝感激だ。店主がまず持ってきたのは「仁喜多津 純米吟醸」だ。見るのも聞くのも初めての酒だ。

 T 「軽やかな酒だ」
 KI「美味しい」
 S 「スッとくる。古酒的かな」
 酒蛙「そうそう、おっしゃる通り。昭和レトロ感的熟成感的クラシカル香味がある。吟醸酒だが吟醸香はしない」

 ここまで来たところで、Sがびっくりする発言をした。「『にきたつ』って、たしか万葉集に入っている歌の詞で、歌は額田王がつくったんじゃないかな?」。みんな「え~~~~っ」と驚きの大声を発したあと絶句。足掛け12年、とにかくバカ話をしながら大酒を飲み続けてきた会ではあるが、文学・古典系の話題はこれまでゼロ。それがいきなり、万葉集、額田王だから、驚かずにはいられない。

 そこで、中学・高校で学ぶ科目に特化した日本初の学びの情報共有サイト「マナペディア」で調べてみた。それによると、歌は「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」で、作者はSの言う通り額田王。彼女は飛鳥時代の歌人で、天武天皇(?~686年)の妃といわれている。

 マナペディアの現代語訳(口語訳)は「熟田津で船に乗ろうと月が出るのを待っていると、潮の流れも(船出の条件と)合致した。さぁ、今こそ漕ぎ出そう」。

 この歌の意味するところは、マナペディアによると以下の通り。「この歌が詠まれたのは、白村江の戦いと呼ばれる戦いの時期です。この戦いは朝鮮半島で当時勢力を持っていた国々の争いです。高句麗、百済、新羅、任那の4カ国がありました。日本は任那を通して朝鮮半島で一定の力をもっていたのですが、この戦いのために日本からわざわざ出兵をしました。熟田津でちょっと旅の疲れをいやして、『さぁ出発だ!』というときに詠まれたのがこの歌です」

 さて、歌に出てくる「熟田津」は「にきたつ」と読み、愛媛県道後地方の古称なのだそうだ。酒名「仁喜多津」の由来について、コトバンクは「酒名は、伊予・道後の古称『熟田津(にきたつ)』にちなみ、『仁愛』と『喜び多き』の字を当てて命名」と説明している。

 万葉の歌で大いに戸惑い、それがひと息ついたところで、再び飲み始める。

 酒蛙「酒の旨みが舌にまとわりつくような印象だ」
 H 「この酒、いいんじゃないか?」
 S 「当地に無いような味わいの酒だ」
 T 「トップバッターとしていいですねぇ」
 KO「うん、一番目としての酒に合う」
 酒蛙「中盤から余韻にかけては辛みと苦み。けっこう辛く、味がやや太い。酸がすくないなあ」
 H 「一番目、合格!」
 KO「OK!」
 酒蛙「基本的には淡麗辛口酒か」

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。「日本酒の粋。それが『純米吟醸』。厳選した伊予の酒米を磨き上げた、純米100%の豊かなうまみと、塾田津の良水の澄みきった味わいが絶妙のハーモニーを奏でます」

 ラベルの表示は「アルコール分15度以上16度未満、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合60%」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。しかし、蔵のホームページでは、原料米が愛媛県産「しずく媛」である、と開示している。

「しずく媛」は愛媛県農林水産研究所農業研究部が1999年、酒造好適米「松山三井」の細胞培養による突然変異株を得、育成と選抜を繰り返し開発。2010年に品種登録された新しい酒造好適米だ。

酒蛙

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