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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3318】義侠 純米吟醸 原酒50% 平成19年度産 仕込み11号(ぎきょう)【愛知県】

2018.3.22 15:48
愛知県愛西市 山忠本家酒造
愛知県愛西市 山忠本家酒造

 ふらりと、なじみのH居酒屋に入ったら、店主が「義侠が入りましたよ」と教えてくれた。「義侠」といえば、「義侠 純米原酒 生酒 60%」(当連載【72】)が強烈に印象に残っている。飲んだ印象も強かったが、わたくしの行きつけの居酒屋の多くが、この酒を置いているからだ。

 酒蛙「『義侠 純米原酒 生酒 60%』なら、何回も飲んだことがあるよ。珍しくないよ」
 店主「うん、でも、純米原酒じゃないんだ。純米吟醸原酒なんだ」
 酒蛙「ふ~ん」
 店主「それに10年古酒なんだ」
 酒蛙「10年古酒は苦手だよ」
 店主「それが、10年寝かせても、古酒くさくないんだよ」
 酒蛙「そんなのアリか?」

 ということで、久しぶりに「義侠」を飲んでみることにする。

 店主「濃いね」
 酒蛙「甘みと旨みがあり、ややドライ感のある辛み。熟成感は若干だけ」
 店主「原酒だから、濃いはずだもんね」
 酒蛙「中盤から辛みが出て、余韻も辛み。酸が出ていないので、ややメリハリに欠けるかも」
 店主「古酒感が無いなあ。10年たっているのに、古酒感があまり無いんだ」
 酒蛙「10年置いても古酒感が無いなんて信じられない」
 店主「同感だ」
 酒蛙「酸は奥の奥に、ほんのすこしある。10年たっても、やや硬さが残っているとは驚きだ。新酒のときは、おっそろしいほど硬い酒質だったんだろうな」

 なんとも不思議な酒だった。瓶のタイムスタンプを見れば「製造年月 H20.02」。ちょうど10年前に瓶詰めされ、いつでも出荷できる態勢になった酒だ。それから10年間、低温で長期熟成された酒だが、それにしては色があまり付いていない。古酒感も無い。なんとも不思議な酒だった。一つだけ言えることは、今でも硬さが残っているということは、10年前は飲めないほど硬かったのではないか、ということ。飲みごろになってきたのが今、ということなのだろう。

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。

「この製品は味の深みを出すため、火入れしてからビン貯蔵にて冷蔵で長期熟成させています。味わいを損なうことのないように出荷に際して滓下げや炭素濾過をしておりません。したがってビン底に滓(おり)が生じておりますが清酒由来の成分が熟成によって沈殿したものであり、商品上なんら問題のあるものではありません」

 ラベルの表示は「兵庫県東条産特A地区山田錦100%使用、精米委歩合50%、アルコール分16度以上17度未満」。山田錦の産地の中でも、最も評価の高い地区で採れたものを使っている、という意味である。

 ところで、なぜゆえに任侠映画モードの「義侠」なのだろう。ネットで調べていたら、次の記述を見つけた。「山忠本家酒造の創業は江戸時代中期。酒小売り商が年間契約を結んでいた明治時代、酒の価格が急騰した際に、当初小売商と結んでいた契約を守り、採算を度外視して安値のままの酒を提供し続けた事で、小売り商より『義侠』という名を贈られたという逸話が残っています」(「地酒屋サンマート」のホームページより)。いい話である。

酒蛙

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