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ニッポンのGOHAN

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30年通う人も 永く愛される「天むす」 【GOHANスペシャル】

2011.7.4 10:40 共同通信
めいふつ天むす(5個)
めいふつ天むす(5個)

 高校時代から忘れられない味がある。小さなえび天がおむすびの中に入った「天むす」だ。授業が昼前で終わりのとき、小腹を満たすのによく買って帰ったことが懐かしい。今でも時々食べたくなる、そんな「天むす」の発祥のお店がここ「千寿」(せんじゅ)だ。

 津市中心部の国道23号(伊勢街道)東側にある津都ホテルのすぐ近くにお店はある。店に入って「天むすください」。正式名称は「めいふつ天むす」となっている。

 カウンター席に座ったので、すぐ目の前で女性店主の福田さんが「天むす」を握る姿が見えた。お釜のご飯に小さなエビの天ぷらを入れる。作り方は至ってシンプルだ。

 「いただきます」。早速、ほうばってみると、いつもと変わらず、塩加減が絶妙だ。しょっぱすぎない。そして、小さなエビ天が顔を出す。塩の効いたご飯とうまく絡み合って、エビの甘さとみずみずしさが引き立っている。


■国道23号の喧騒(けんそう)から脇にそれたところに「千寿」のお店がある
■国道23号の喧騒(けんそう)から脇にそれたところに「千寿」のお店がある

 エビは、主に伊勢湾で捕れたダルマエビ。地元の津市で捕れたものも使われている。「天むす」の大きさは、大人の手のひらの半分くらい。エビは、その半分くらいだ。1個、また1個と箸が進む。というか、おむすびなので、手で食べてしまうこともよくある。

 この店の天むすは、大きさはもちろん、のりの巻き方、作り方まですべて初代の女性店主から受け継いできた。「おにぎり」とせず「おむすび」としたのも、初代のこだわりだという。天むすにフキのつくだ煮「きゃらぶき」を添えて味を際立てているのも初代のアイディアだ。

 半世紀以上続く「千寿」は、もともとは天ぷらのお店だった。初代の女性店主が「少しでも栄養のあるものを」と、お店の商品だった車エビの天ぷらをおにぎりに入れ、夫のための「まかない料理」として作ったのが「天むす」の始まり。それがおいしくてメニューとして出すようになり、名実ともに「天むす」が看板商品となった。

 今では、津市内だけでなく、名古屋や東京などからも「天むす」を買いにくるお客さんがいる。お客さんのうち、お店で食べるのは2割ほどで、残りの8割はお持ち帰りの人というのには驚いた。天むす発祥のお店と知って来る人もいれば、津のお土産として買って帰る人もいる。


■少し粘り気のあるご飯を手で割ると、エビ天が出てくる
■少し粘り気のあるご飯を手で割ると、エビ天が出てくる

 今回、訪れたときも、10個入りの天むすを3セット買っていく女性客に会った。東京から来たというその女性は、このお店に通って30年以上になるという。「津に来ると天むす。年に1回は食べたくなる味」と話す。「千寿」の「天むす」は津駅や名古屋駅でも買えるようになった。「駅弁より天むす。新幹線でも食べる」と、女性は笑顔だった。

 昭和50年代に1個80円だった天むすは、今は1個130円(注文は5個から)。米は2倍になったというが、天むすの値段は安く抑えられたままだ。

 店主の福田さんは「食べ物は、そう値上げすると食べにくくなっちゃうから」。味はもちろんだが、ちょっとした気遣いが永く愛される理由なのかもしれない。最近は若い人も買いに来てくれると、福田さんはうれしそうだった。

 

 

森本庸平@津(47NEWS)
住所  :津市大門9-7
電話番号:059-228-6798
オススメ:めいふつ天むす
営業時間:午前10時~午後5時30分(オーダーストップは午後5時)

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