甘味とでも言うべき味わいが広がる「ゆうゆう庵カレー」 【GOHANスペシャル】


所用があって鎌倉へ行った折、駅に着いた途端におなかが減った。ちょうど時間もあったため、駅前で店を探すことにした。すると2、3分も歩かないうちに「ゆうゆう庵」というカレー店の看板を見つけた。こういうときは直感である。自分を信じて店に入ると、外れることは少ない。あまり迷いもせずにカレー店へと続く階段を上った。
階段を上るとすぐ右手に店はあった。それほど広くはない店内ではあるが、ほどよくおしゃれにまとめられ、気軽に入れる雰囲気である。愛想のよい店長さんに迎えられ、カウンター席に座る。メニューを見てすぐに「ゆうゆう庵カレー」を注文する。なぜなら店の名前を冠したメニューだからだ。いわば看板メニューである。その店を代表するであろうメニューを頼むこともまた「当たり」へと近づくテクニックの一つである。

ほどなく注文したカレーが出てくる。おなかも減っていたので、あまり考えることなく素直に口に運ぶ。すると、辛さ控えめのコクのあるカレーが口に広がる。いや、カレーというよりはむしろハヤシライスに近い。辛さはほとんど感じることがなく、トマト風味のシチューをライスにかけて食べているような感覚だ。しかし、食べ進めていくうちにだんだんと辛さが増してきて、食べ終わった時の印象はやはりカレーであった。空腹であったことも手伝い、一気に平らげてしまった。「カレーは飲み物である」という名言を思い出してしまう。
この「ゆうゆう庵カレー」はトマトをベースにしてルーを作っている。そのためか、カレーでありながら、爽やかな酸味、いやむしろ甘味とでも言うべき味わいが口の中に広がるのが特徴的だ。聞けば、店長さんはイタリアンの店で働いていたことがあり、その経験を踏まえて作ったメニューなのだそうだ。いわばイタリアンをベースとした「日本のカレー」である。
そんな感じで全体的な印象としてはハヤシライスやシチューといった傾向はあるものの、それでいてちゃんとカレー特有の辛さもある。ハヤシライスのようなコクとカレーの風味の両方を楽しめる。カレーの持つ辛さをトマトでやわらかく包んだようなカレーであるため、私のように辛すぎるカレーが苦手な人や、女性にもお勧めしたい一品である。

他のメニューとしては「黒船カレー」(800円)というイカスミをベースとしたカレーもある。イタリアンが料理の下地になっているこの店らしいメニューと言えるであろう。店長さんによると、このメニューは海産物が好きな人にはお勧めなのだそうだ。次回、この店を訪れた時は私も試してみたいメニューである。私も魚介類が大好きだからだ。今回、私が食した「ゆうゆう庵カレー」と、この「黒船カレー」は以前、横浜カレーミュージアムでも販売されていたという。ランチ限定で500円のポークカレーもある。まさにデフレ経済の申し子とも言うべき、懐に優しいメニューである。
「ゆうゆう庵」はもともと静岡県下田市で創業、7年間営業したという。店長さんは横浜市の出身であるそうだ。海のある町を転々と移動しながら、現在は鎌倉市へ居を移して6年半になる。できればこのまま鎌倉の地にとどまってほしいと願っている。
電話番号:0467-24-6796
オススメ:ゆうゆう庵カレー