素朴な古里の手作りうどん「するすみうどん」 【GOHANスペシャル】


栃木県が推進する食をテーマにした地域おこし「食の回廊」事業では、県内各地に10の「食の街道」が設けられている。その街道の一つが栃木県南西部に伸びる「足利佐野めんめん街道」。同街道にある「根古屋亭」を訪ねて、素朴な「するすみうどん」を味わった。
一般的にうどんと言えば白いものだが、この「するすみうどん」は漂泊していないため、やや黒みがかっている。太めの麺はもちもちとして腰が強く、腹もちがいい。田舎の手作りの味をそのまま伝えている。これでもお客さんの要望を入れて改良を重ね、当初に比べて麺はだいぶ細くなったのだそうだ。麺つゆにはこだわり、静岡から取り寄せた宗田ぶしと花かつおから取っただしを使う。

「根古屋亭」は山林に囲まれた佐野市飛駒地区にある。かつてはタバコの栽培と養蚕が盛んだったが、次第に作られなくなり、土地も荒れてしまっていた。過疎化が進む中、地域の活性化を図ろうと結成されたのが、「飛駒地区むらづくり推進協議会」だった。
「根古屋亭」は協議会の食堂部会が運営する。ほかにも和紙会館、直売所、みそ部会などがあって、それぞれの分野で地域おこしに取り組んでいる。店では厨房(ちゅうぼう)に立つのも接客も地域住民が担っている。

この地域の農家では小麦が作られ、各家庭では昔からごく当たり前に、自家製のうどんを打って食べていた。「お祭りなどの際には、お客さんに自分の家で作ったうどんを振る舞うのが普通だったんですよ」と、店の責任者を務める藤倉てるさんは話す。「するすみうどん」の誕生には、こうした背景があった。
店は1993(平成5)年に開店し、1年後に現在地に移転して営業を行っている。当初はうどんだけだったが、強い要望に応えてそばも出すようになった。そばもまた、この地方の特産品だ。

「するすみ」という名前は、馬の生産地だったこの地方の伝説に登場する2頭の名馬にちなんでいる。「するすみ」が黒馬、「いけづき」が白馬。うどんがやや黒いため「するすみ」とする一方で、手作りの白い炭酸まんじゅうを「いけづき」と名付けて同時に売り出した。「いけづき」も根古屋亭のほか、道の駅などで売り出され、懐かしい味が評判を呼んで、店の隣に専門の生産所を設けるまでになった。この辺りにも地元住民の古里への思いがうかがえる。
藤倉さんは「いろいろ苦労はありましたけど『ここのが一番』と、わざわざ遠くから食べに来てくれる人も増えて、やりがいにつながっていますね」。これからの寒い季節には地元で採れた里芋、大根、ニンジン、ゴボウなどをたっぷりと入れたけんちんうどんもお薦め。地元の人たちの人情も加わって、身も心も温まりそうだ。
電話番号:0283(66)2218
オススメ:するすみうどん
営業日 :土曜、日曜、祝日のみ営業