メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

ニッポンのGOHAN

全国の新聞社スタッフの食べ歩きブログ。グルメ情報誌に載っていない隠れた郷土料理や意外な日常食、おもしろい食べ方などが満載!

寒さ極まり、味も際立つ「寒晒しそば」 【GOHANスペシャル】

2012.2.6 11:38 共同通信
手間をかけて繊細な味に仕上がった出流の「寒晒しそば」
手間をかけて繊細な味に仕上がった出流の「寒晒しそば」

 「食」をテーマに栃木県が取り組む地域おこし「食の回廊」事業には、現在、県内各地に10の「食の街道」が名を連ねる。その一つが栃木県南西部に位置する「足利佐野めんめん街道」。同街道の一角にある栃木市出流町は、素朴な「出流そば」で知られるが、4年前から「寒晒しそば」の提供を始めた。

 東北自動車道を栃木ICで降りて、走ること約30分。栃木市の西北端に出流町はある。周囲はうっそうとした山林。一本道の両側に60軒ほどの集落が軒を連ね、登り詰めた先には坂東十七番札所「出流山満願寺」がある。お寺の参道沿いに十数軒のそば店が営業している。物産店なども加わって出流観光会をつくり、地域振興に努めている。


■そばの実を浸すのは満願寺境内の「不動の滝」。水から上げた後、寒風にさらし、ほとんどの店で自家製粉する
■そばの実を浸すのは満願寺境内の「不動の滝」。水から上げた後、寒風にさらし、ほとんどの店で自家製粉する

 観光会の副会長の新里宗一さんが経営するのが「さとや」。ここで新名物の「寒晒しそば」をいただいた。そばは弾力に富み、歯応えがある。かむとほのかな甘みが鼻に抜ける。雑味がなく、そばの味が凝縮された上品な味わいだ。失礼ながら、こんな山の中でこれほど繊細な味に出会えるとは驚きだった。

 「寒晒しそば」は、その名が示す通り、そばの実を冬の一番寒い時期に清冽(せいれつ)な水に徹底的に浸し、さらに寒風にさらしたものを使う。この過程で実からアクが抜け、そば本来のうま味だけが残るのだという。良質なそばの実はもちろん、きれいで冷たい水、冬場の寒い気候などの条件がそろって初めてできる。何よりも手間がかかる。

 出流地区は東にひと山を越えると永野(鹿沼市)、西は仙波(佐野市)とそばの産地に囲まれている。それらの地から嫁いできた女性らが、地粉をひき、手打ちをする家庭の味として伝えたのが「出流そば」だ。「山仕事の人たちや参拝客に頼まれ、普段食べているそばを提供したのです。60年ほど前にお店を出す人が出て、その後、徐々に増えて今の形になりました」と新里さんは話す。


■石垣を組んだ高台にある「さとや」。県内ばかりでなく関東一円からそば好きが訪ねる
■石垣を組んだ高台にある「さとや」。県内ばかりでなく関東一円からそば好きが訪ねる

■「さとや」の店内。和を基調に落ち着いた空間が広がる
■「さとや」の店内。和を基調に落ち着いた空間が広がる

 「出流そば」は「一升そば」「五合そば」の名前で有名。大きなざるに豪快に盛られたそばを5~6人で食べる。素朴で昔ながらの味と、大勢で食べる楽しさが手伝って根強いファンが多い。「それはそれでいいのですが、昔からのやり方だけでは自己流に陥ってしまって限界があります。自家製の味は残しつつも、新しいものを提供することが必要だと思うのです」と新里さん。商品の質を高めるため、観光会として技術向上の勉強会を開いた。この中で行きついたのが「寒晒しそば」だった。

 観光会に加盟するお店の共通ブランドとして700円の統一価格で販売する。例年1月20日ごろから約1カ月間、1万食の限定販売だ。

 新たな味は大きな反響を呼び、時季になると問い合わせの電話が相次ぐようになった。また、冬場に作った素材を使って夏にイベントを開き、大勢の人出でにぎわった。栃木県内のそばどころで「寒晒しそば」を採り入れるところも増えている。「栃木県の名産品になればと思いますね」と新里さんは期待を寄せる。

 

 

下野新聞社(下野新聞)
住所  :栃木県栃木市出流町179
電話番号:0282(31)0919
オススメ:寒晒しそば
営業時間:11時~17時

最新記事