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ニッポンのGOHAN

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庶民の知恵が生んだ上品な味わい 中も外も白い鳥取市の「とうふちくわ」【GOHAN特製原稿】

2014.11.21 13:10 共同通信
「ちむら」のとうふちくわ
「ちむら」のとうふちくわ

 「中も外も白いちくわがあるぞ!」。鳥取市に転勤した大学の同級生からそんな電話がかかってきたのは、かれこれ20年ほど前だった。「『とうふちくわ』って言うんだ」。興奮する同級生には申し訳なかったが、そのときは「珍しい食べ物があるものだなあ」と思っただけで、聞き流してしまった。だが、ずっと気にはなっていた。「『とうふ』と『ちくわ』って…。どんな味だ?」。仕事で鳥取に行く機会ができたので、食べてみることにした。

 JR鳥取駅に着き、土産物などを扱っている売店をのぞくと、お目当てのとうふちくわが並んでいる。その中から「ちむら」の商品(1個170円=税抜き=)を手にした。創業は幕末の1865年という老舗だ。店員の方にとうふちくわの由来などを聞いたところ、教えてくれたのが「鳥取とうふちくわ総研(とー総研)」のホームページ(http://www.tottori.to/chikuwa2/)だった。

 とー総研は2003年、とうふちくわの魅力を全国に発信することを目的に結成された市民グループ。ホームページによると、とうふちくわは鳥取市のみで製造されており、作り方は以下の通り。「木綿豆腐」と「白身魚のすり身」を練り合わせたものに、味付けと弾力を増す役目の「塩」を加えたものを細い竹(現在はアルミの棒が主流)に巻き付けて蒸す。一般的なちくわのように焼かないのが特徴だ。

 豆腐と魚の割合は、それぞれの店で異なる。「ちむら商店」は、豆腐7に対し魚3だが、「豆腐4、魚3」や「豆腐1、魚1」の店もある。また、豆腐は各店が専用に作ったものを用いるという。かなりの手間とこだわりをもって作っていることが分かる。

 発祥の時期は定かではないが、江戸時代の末期には食べられていた。原型とされるのが、江戸中期に登場した「ちくわ豆腐」。これは、すった豆腐を棒状にした後、竹につけて加熱したものだ。

 だが、疑問が残る。なぜ、ほかのちくわと同じように魚を主に作らなかったのか? 日本海に面する鳥取市ならば新鮮でおいしい魚には事欠かないはず…。そこで、とー総研の植田英樹所長に聞いてみた。すると、意外なことが分かった。江戸時代の鳥取市周辺は漁港が今ほど整備されておらず、水揚げ高も多くなかったため、魚はぜいたく品だったのだ。「その貴重な魚を無駄にしないように、魚商人がちくわ豆腐をもとに考え出したとされています。庶民の知恵が生んだ食べ物です」

 いよいよ食べてみる。ほかのちくわと比べ、だいぶ柔らかい。だが、木綿豆腐よりはやや固い。口の中に豆腐の優しい甘みと香りが広がるのを追うように、魚のうまみがやってくる。何とも不思議な、それでいて上品な味わいだ。そのままでも十分おいしいが、ショウガやわさびとともにしょうゆで味わうのも乙だ。

 植田所長のおすすめは「できたて」。熱々のとうふちくわを丸かぶりするのは、最高だという。しかし、製造している店舗でないと食べられず、時間も早朝に限られる。うーん。これは鳥取市を再訪するしかないでしょう。

 

 

榎並秀嗣@鳥取(47NEWS)
住所  :鳥取市河原町布袋556
電話番号:0858(76)3333

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