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ニッポンのGOHAN

全国の新聞社スタッフの食べ歩きブログ。グルメ情報誌に載っていない隠れた郷土料理や意外な日常食、おもしろい食べ方などが満載!

「グルメの時代」への挑戦 知的探求心? それとも悪趣味?【GOHAN特製原稿】

2015.12.14 15:15 共同通信
棚にはカレーを盛る和式便器型の皿が並ぶ
棚にはカレーを盛る和式便器型の皿が並ぶ

 初めにお断りします。

 今回の「GOHAN」には、かなり、とても、ものすごく、著しく、不快で不愉快、そして目を背けたくなる表現や単語、写真が含まれます。これから、食事を取ろうという方や「おいしい」料理を探そうという方、そして朝起き抜けの方は、気分を害されてその後の時間が台無しになること請け合いです。ですので、決して読み進めないよう伏してお願い致します。

 ■  ■  ■  ■

 東京・新宿から小田急小田原線の各駅停車に乗って約20分。千歳船橋駅から徒歩5分足らずの雑居ビル地下一階にその店はある。「カレーショップ志み津」。今年8月にオープンした日本初、いや、世界初、いや、間違いなく人類史上初であろう「ウ●コ味のカレー」専門店だ。

 階段を下りていくと、思わず足が止まる。かすかだが、明らかに不快かつ危険な香りに、本能が拒絶反応を起こしているのだ。だが、取材の申し込みをしてしまった。相手が待ってくれている。何よりどんな味か知りたい…。すっかり捨て去ってしまったはずの〝記者魂〟が、こんなときになぜか発動してしまい、ドアを開けてしまった。

 うおッ!!!???

 腐った+生臭い+下水…。あらん限りの不快な臭気が固まりで襲ってきて一瞬、意識を失う。何とか店内に入ると、さらに衝撃が。7席あるU字形のカウンターに先客が4人―1人は女性―いた。男性の1人は何と香港から来たという。聞くと、米CNNのニュースなどで取り上げられたため食べるのが夢だったと爽やかに答えてくれた。うーん。この世はなかなか狂っている。

 主成分はくさや? 気付くと、臭いを分析していた。恐ろしいことに鼻が慣れてきたのだ。「30分もいると気にならなくなります」。構成作家やイベントプロデューサーが本業という店長の岡田紘樹さんがそんな恐怖の言葉とともにサービスのお茶を勧めてくれた。「苦い」。テレビ番組の罰ゲームなどでおなじみのセンブリ茶だ。メニューにはミネラルウオーターもあるが、価格は千円。しかも、コップ一杯(200ミリリットル)でだ。

 「まずは食べてみますか?」 岡田さんに言われたが、どうしても食べる勇気が起きない。話を聞きながら、食べないで済む方法を探ることにした。

 きっかけについて尋ねる。「昔から●ンコ味のカレーを食べたかった」。そんな身の毛もよだつことを岡田さんが淡々と話す。やるからには継続して提供しようと、開店を決意。詳しく事情はとても書けないが、なぜか「ウン●の味」を知っている友人などの〝テスト〟を経て、完成した。

 変な薬物とか危ないものは入ってないのか。材料はタマネギ、にんじん、ゴーヤー、鳥ささみのひき肉、くさや、にがり…など。それをセンブリ茶でコトコト煮込む。「体に良い物ばかりです」。岡田さんが胸を張る。何より気を配るのは「うまみを出さない」ことだ。野菜は計2時間近く煮込んで味がなくなった後に炒めてぱさぱさに。当初、豚のひき肉を使っていたが、うまみが出すぎるという理由で鳥のささみに変えた。その日の材料によって、うまみの出が違うので微妙な調整は欠かせない。

 30回以上来店したリピーターが複数いるなど確実に定着はしている。しかし、自身の人件費を出すと経営を維持するのは厳しくなるという。「まあ、道楽ですよ」。自嘲気味に岡田さんがつぶやく。 それでも、ここまでこだわるのにはもっと別の動機があるに違いない。 「グルメの時代というが、おいしさの基準は画一化されている気がする。食文化はもっと奥深いもののはず。言ってみれば、現状への挑戦です」。岡田さんが〝真の狙い〟を語る。


これが問題のカレー
これが問題のカレー

 意を決して注文する。頼んだのは、3サイズある中で最も量が少ないもの(一皿400円=税込み)。いい話を聞いたからといって気を許してはいけない。和式便器の形をした皿に、ベストな味になるという「人肌」に温められたルーが盛られて供された。できる限り少なく取って、恐る恐る口に運ぶ。

 まずいッ!!!!

 予想どおり、やっぱりまずい。まず、何より苦い。そして、悪臭が鼻に抜けて、とにかく後味が悪い。息をするのも嫌になる。そして、なぜだろう。次第にむかついてくる。そんな感想をノートに書き留めようとしたところ、手が震えて、うまく書けない。食べて、恐怖に支配されるなんて初めてだ。

 落ち着くはずもないが、何でもいいから一息つきたくてセンブリ茶を口に含む。あれっ!? 甘い。苦さはしっかり感じるが、その奥にある甘さを味わえるようになっていた。驚く記者を見た岡田さんは「味覚が鋭くなるんです。本当のおいしさは何かが分かりますよ」とニヤリ。

 そんな効能を教えられたら、元気に「もう一口!!」。そう言いたいところだが、すでに体はスプーンを持つことを拒否していた。残してすみません。ギブアップです…。

 外に出ると、冷たく澄み切った冬の空気が心地よく、思いっきり息を吸った。「うまい」。おいしいもの、快適なものが普通にあることのありがたさが身に染みる。あっ。その瞬間、岡田さんの伝えたいことがストンと、ふに落ちた。

 追記 服にかなり強烈なにおいが付くので、その覚悟を。持参した大きなビニール袋にコートやジャケットなどを入れて自衛する客もいる。店ではスプレータイプの消臭剤を無料で使用させてくれるが、数日間は確実に「残り香」に悩まされる。高価な服は着ていかないことを勧めます。

 追記② この原稿をアップした翌日、1月4日をもって閉店するとの知らせが届いた。理由は「世間から惜しまれる間に終わらせたい」からだという。大みそかや3が日は休まず営業。「遠方からも来店してほしい」と呼び掛けている。

 

 

榎並秀嗣@東京(47NEWS)
住所  :東京都世田谷区船橋1-1-17 ジョイパーク千歳船橋B1-A
電話番号:非公開
営業時間:午後6時~午後11時

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