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文化

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【4416】天賦 純米吟醸(てんぶ)【鹿児島県】

2020.12.5 21:33
鹿児島県日置市 西酒造
鹿児島県日置市 西酒造

【日本酒研究会月例会 全6回の④】

 コロナ禍で4月から7カ月間、開催を自粛していた日本酒研究会の月例会。そろそろ再開していいだろう、と8カ月ぶりに例会を開いた。会では長年、M居酒屋をホームグラウンドに使ってきたが、諸事情があり、店を変える必要に迫られた。そこで、わたくしが新しいホームグラウンドに選んだのが、なじみのE居酒屋だった。この店は、酒の品揃えが素晴らしい。ふだん、目にしない銘柄も冷蔵庫に並ぶ。セレクションにセンスが感じられる。それが指名の要因だった。

「双葉山」「佐伯飛翔」「丹誠」に続き、4番目は「天賦 純米吟醸」だった。これには仰天した。鹿児島の酒だったからだ。これまで鹿児島県の酒は「薩州正宗」1蔵だけだとおもっていたが、新蔵登場。鹿児島県の日本酒蔵は2蔵になったのだ。

 この蔵は、「富乃宝山(とみのほうざん)」の芋焼酎でとても有名な西酒造。日本酒に新規参入するにいたった経緯について、蔵の専用サイトに書かれているので、以下に転載する。

「この度、西酒造株式会社は、日本酒の製造免許を取得いたしました。私たちは、かねてより、恵まれた風土を持つ鹿児島の地で、日本酒製造に向けて様々な可能性を追い求めてまいりました。西酒造が取り組む『愛の職人集団』としての『こだわり』、鹿児島の自然が導く『こだわり』、そのすべては天からの授かりものであると考えております。折り目正しく誠実に鹿児島の風土と向き合い、魂を込めて旨いお酒を追求してまいります」(2020年8月1日付の投稿)
「今回、製造免許をいただいてから、試行錯誤を繰り返し、造りに励み、鹿児島の地から、私たちの考える旨さを追求した日本酒を【天賦(TENBU)】と名付け、ご紹介できる運びとなりました♪ 自然を尊び、先人への感謝を忘れない職人集団として造りをこだわり抜き、当然のことをしっかりと守り抜いて踏み出す一歩の先に、“天賦”の目指すべき旨さがあります。米の旨味を十分に引き出しながら『甘み、辛み、酸味、苦み、渋み』のそれぞれが一体となり、調和のとれたシームレスな仕上がりを表現した、柔らかな味わいの食中酒となっております」(2020年8月4日)

 新しい日本酒蔵の製造責任者には、「御湖鶴」(長野県下諏訪町)を醸していた菱友醸造(2017年春自己破産)の蔵元杜氏だった近藤昭等さんを招いた。「御湖鶴」は以前に一度飲んだことがあり、やわらかで優しいお酒だった記憶が残っている。さて、西酒造第1作目の日本酒をいただいてみる。

 Y 「おーーーっ、旨っ、旨っ、旨っ!!!」
 酒蛙「おーーーっ、甘旨酸っぱい味わい。軽めの、洗練されたやわらかな口当たり。味がふんわり広がる。モダンタイプの味わいだあ!」
 I 「女性にも好まれそうなお酒だ」
 N 「今日、これまで飲んだ中で、一番きれいな酒だ。今はやりの酒質だ」
 酒蛙「うん、同感、非常にきれいな酒質だ。香りは、やさしい果実香が控え目に。余韻は軽い苦み」
 H 「これが鹿児島県の酒? 信じられない」
 M 「これ、美味しい」
 K 「昨今の売れ筋を狙ったようなお酒だ」
 酒蛙「美味しいだけでなく、最後の苦みがいい。全体を引き締めている。味のバランス良く、飲み飽きしない良い酒だ」
 H 「こういう酒こそ、『ああ、酒を飲んだなあ』という気になる」
 M 「そうだ!」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合50%、原料米 国産米100%使用、アルコール分15度、保存方法 -5℃~5℃で保存、製造年月2020.10」。また、蔵のホームページが公表しているスペックも同様。せっかくこだわってつくっているのに、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 この酒のテイスティング結果について、蔵のホームページは以下のように掲載している。

「奥ゆかしい芳香性からは、芍薬のようなフローラルな印象、そしてほのかな綿飴やバナナの香りが一体感を有しながら漂います。優しい甘みと控えめな酸味、そして滋味深さの緻密なグリップ、それぞれが静逸な均衡を見ており、味わいに美しい艶を感じると同時に、そのフィニッシュを洗練された透明感へと導きます」(テイスティングコメント: 大橋 建一 MW)

「グラスからは華やかな吟醸香、例えば洋梨やメロン、白桃の香りが溢れ出てきます。ワインのようにスワリングすると(グラスを回して空気を含ませると)、ヨーグルト、フレッシュチーズ、生栗や栗の花のような香りも感じられ、何層にも重なった香りの調和を楽しむことができます。口に含むとまろやかなアタックでオフドライの印象。旨味を伴うクリーミーなミッドパレット、そして香りにも感じた果実フレーバーが広がります。余韻にかけての浸透力が秀逸で、中盤の豊潤さとは裏腹に、スッと一本の線を引くような繊細なフィニッシュです。
 味わいの中盤に感じる旨味やクリーミーで豊潤なストラクチャーは、料理と一緒に口にすることでさらにハーモニーが生まれます。食材の味わいをストレートに食すお刺身や、出汁の効いた和食、バターやクリームを使った洋食、脂の乗った黒豚のしゃぶしゃぶ、さらには天ぷらやフライのような香ばしさがあるお料理など、食中酒として和洋中の幅広い料理と組み合わせることができるでしょう」(テイスティングコメント: 松木 リエ)

 なお、「御湖鶴」(長野県下諏訪町)を醸していた菱友醸造が2017年4月に自己破産したことに伴い、福島県の磐栄運送が後を引き継ぎ、新たな杜氏を迎えて2020年1月から2年ぶりに仕込みを本格稼働させている。新生「御湖鶴」の杜氏を務めているのは、長野銘醸(長野県千曲市)で杜氏を務め「聖山」というヒット商品を生み出した竹内重彦さん。

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