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文化

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【4295】浦霞 純米吟醸 №12(うらかすみ)【宮城県】

2020.8.12 21:44
宮城県塩釜市 佐浦
宮城県塩釜市 佐浦

【E居酒屋にて 全9回の⑦】

 コロナ禍による非常事態宣言が解除された当地では、居酒屋が徐々に営業を再開してきている。なじみのE居酒屋も同様だ。この店は、酒の品揃えのセンスがなかなか良いので気に入っている。久しぶりに暖簾をくぐった。

「花邑」「東の麓」「白岳仙」「七本鎗」「聖」「山和」と飲み進め、7番目にいただいたのは「浦霞 純米吟醸 №12」だった。「浦霞」は、宮城県の老舗蔵。当連載でこれまで、9種類を取り上げている。今回のお酒はどうか。いただいてみる。

 甘・旨と酸が感じられ、さらりとした口当たりでやや軽いのだが、けっこうしっかりした味わい。線香のような、木香のような、菌類香のような、独特の含み香が特長的。これは、わたくしの好みの含み香。これは旨い。余韻は苦み。ジューシーで、モダンタイプの味わい。キレが良い。う~ん、一晩、一升瓶を立てて、ずっとこいつを飲んでいたい。そうおもわせるお酒だった。

 瓶の裏ラベルは、使用した酵母が同蔵発祥であることを以下のように説明している。「昭和40醸造年度に弊社の吟醸醪より分離された酵母は、日本醸造協会に『きょうかい12号酵母』として登録、頒布されました。この度、久し振りにこの酵母での酒造りを復活。爽やかな香り、心地良い酸味が特長のキレの良い味わいの純米吟醸酒に仕上げました」

 また、蔵のホームページは、12号酵母を以下のように紹介している。「昭和40年頃に浦霞の吟醸醪(もろみ)から分離され、後に日本醸造協会に登録された「きょうかい12号酵母」を使用しました。爽やかな香りと心地良い酸味、後味のキレの良さが特長の純米吟醸酒です。

 一方、各酵母について詳しく載せているサイトは、12号酵母について、以下のように紹介している。「昭和40年(1965年)宮城県酒造組合醸造試験所の佐藤和夫らにより、同県『浦霞』吟醸醪から分離。低温長期型醪となり、山廃にも適し、芳香の高い吟醸酒向き。特有の吟醸香を醸し出すが、極度に水と造りを選ぶので一般的とはいえない。協会系酵母としては平成7年(1995年)まで頒布された」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、原料米 蔵の華100%、精米歩合55%、アルコール分15度以上16度未満、製造年月19.11、おすすめの飲み方 ◎ 冷して(5~10℃) 冷や(15~20℃)」。おおおっ、とおもい感心したのは、「冷やして」と「冷や」を使い分けていることだ。「冷や」とは、冷蔵庫の無い時代、燗酒に対する飲み方。つまり室温なのだが、燗酒の「熱い」に対し、室温酒を「冷や」と呼んできた。いま、言葉の意味合いが変化し、居酒屋の99%以上は、冷蔵庫で冷やした酒を「冷や」と言っているが、「冷や」の意味は前述の通り。そして、冷蔵庫で冷やした酒は、ラベルに書いているように「冷やして」とか「冷酒」という。今回のラベルのように、きちんと使い分けているのを見ると、うれしくなってしまう。

 使用米の「蔵の華」は宮城県古川農業試験場が1987年、母「東北140号」と父「『山田錦』と『東北140号』の子」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定、2000年に品種登録された酒造好適米だ。稲は倒伏しづらく、病気に強く、穏やかな香りとすっきりした味わいの酒ができるのが特徴という。

 酒名「浦霞」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「『浦霞』の酒銘は、鎌倉時代(1185年頃~1333年)の武将であり、歌人として知られる源実朝が古来より歌枕の地であった塩竈の景色を詠んだ歌から命名いたしました。酒銘『浦霞』には、塩竈の浦に霞がかかったやさしく美しい景色が表現されており、ほのぼのとした春の風景が浮かんでくるような味わいを目指して醸されています。

 《塩竈の浦の松風霞むなり 八十島かけて春や立つらむ》(金槐和歌集 源実朝)

(訳)塩竈の海をやさしく風が吹きわたり、まるで霞がかかっているようだ。湾内に浮かぶ島々にもいっせいに春が訪れたのだろうか」

 蔵名の「佐浦」は、蔵元さんの名字。

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