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文化

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【4267】富久長 新橋の男達の酒 辛口純米 本生(ふくちょう しんばし おやじ)【広島県】

2020.7.15 14:03
広島県東広島市 今田酒造本店
広島県東広島市 今田酒造本店

【E居酒屋にて 全12回の②】

 ほぼ4年ぶりにE居酒屋の暖簾をくぐった。この店は酒の品揃えがなかなか素晴らしいのだが、どういうわけか近年縁遠く、不義理を欠いていたわたくしだったが、ママはにこやかに迎えてくれた。

 最初に選んだのは「花笑み 純米吟醸」。そして2番目は「富久長 新橋の男達の酒 辛口純米 本生」だ。冷蔵庫のガラス越しにラベルを見て決めた。いわゆる“ジャケ買い”(音楽をダウンロードで入手する今の若者には分からない言葉だ)である。ヴァンジャケット(VAN)創業者の石津謙介華やかりしころ、雑誌平凡パンチによく掲載されていたモード画を彷彿とさせるラベル絵。その世代のわたくしとしては、飲まずにいられない。

 また、キャッチコピーばりの酒名もいい。「新橋の男達の酒」。う~ん、いいなあ。「男達」と書いて「おやじ」と読ませる。う~ん、いいなあ。東京・新橋駅の烏森口から広がる、日本最大のサラリーマンの聖地。そのにぎわいがこの酒名で見事に表現されている。う~ん、いいなあ。

 酒販大手・はせがわ酒店(東京)のPB商品(裏ラベルに同酒店のロゴあり)。醸したのは「富久長」で知られる今田酒造本店だ。この蔵のお酒は当連載でこれまで、7種類を取り上げている。いずれも「富久長」。甘みが出る酒、というイメージがある。さて、今回のお酒はどうか。以下は、わたくしのテイスティングメモの原文ママだ。

 酸と旨みが出ており、旨い。旨みがけっこう出ている。ジューシー。飲み飽きしない。辛みも感じキレが良い。

 後日、ラベルの写真をじっくり見たら、なんと「辛口純米」と書いているではないか(飲むときはラベルをちゃんと見ていない。老眼には暗すぎて見えないし、撮影したラベルをあとでパソコンで見るから)。これには驚いた。

 なぜなら上記、わたくしのテイスティングコメントには、辛みは申し訳程度にしか書いていないから。また、酸と旨みが味の主体で、ジューシーさを感じたから。ジューシーさは、旨みと酸がある旨口酒によく感じられ、ふつう辛口酒には感じられないからだ。瓶の裏ラベルには「日本酒度 プラス10程度」と書かれている。+10は、飲んでかなりの辛口に感じる数値だ。しかし、今回のお酒は+10にはまったく感じない。むしろ旨口寄りの飲み口だ。

 当のはせがわ酒店は、自社サイトでこの酒を以下のように紹介している。

「キレの良い辛口ながら幅のある旨味で人気の新橋の男達(おやじ)の酒。季節限定の生酒です。生酒ならではほんのりとした甘味が加わりますが、富久長らしい辛さ、渋味が徐々に現れ後口に続きます。なめらかでありながらハリのある味わい。オヤジのための生、ぜひお試しください」
「働く日本の男たちを応援する酒です。冷でも燗でもいける超辛口純米。辛さがありながら、ほど良い旨味の幅がありますので、様々なお料理に合わせやすいです」

 また、瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。

「とうとう日本酒の時代が来ました。永い低迷時代を乗り越えて国酒の復権です。ワイン、焼酎、ハイボールと他の酒に隅においやられていた日本酒の出番が来ました。世界遺産登録となった和食とともに世界へ羽ばたいていますよ。ワールドワイドな酒になりつつある日本酒。貴兄も乗り遅れてはなりませんぞ。しかも飲るなら純米酒でいきましょう! 冷でよし、燗でよし、オンザロックも旨し。そうそうハイボールも案外いい感じ。飲み方自由に楽しんで明日への活力にしましょう! 時代は日本酒です」

 裏ラベルのスペック表示は「製造年月2019.12、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、精米歩合60%、アルコール度15度、日本酒度 プラス10程度」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 酒名「富久長」の意味は明らかにされていないが、命名の経緯について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「広島県の酒造りの歴史は古く、天正年間(1573年)ころに遡ります。近代のような発展を遂げたのは明治28年の日清戦争以後、広島杜氏の里でる安芸津町の醸造家三浦仙三郎(1847-1908年)によって軟水醸造法が確立されたことによります。仙三郎は第1回全国清酒品評会の審査員をつとめ、杜氏の育成に力を注ぎました。その結果、広島の酒が上位を独占。吟醸酒が広島で生まれたとされる理由はここにあります。ちなみに、『富久長』の酒銘も三浦翁につけていただいたものです。広島の酒を創りあげてきた三浦仙三郎翁の座右の銘は『百試千改』。その情熱と由緒ある酒銘を引き継いでいるのが富久長です」

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