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文化

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【4250】星泉 5号 無濾過生原酒(ほしいずみ)【愛知県】

2020.6.25 20:28
愛知県知多郡阿久比町 丸一酒造
愛知県知多郡阿久比町 丸一酒造

【B居酒屋にて 全4回の③】

 当連載「日本酒津々浦々」は、原則として同じ酒を2回載せることはしていない。ごく例外的に2回載せたものが2種類ほどある程度だ。このため常日ごろ、飲んだことがない酒を求めている。このB居酒屋は、わたくしが飲んだことがない酒が冷蔵庫に入っていることが多いので、必然的にしばしば“取材”に訪れることになる。

「晴雲」「美保」と飲み進め、3番目にいただいたのは「星泉 5号 無濾過生原酒」だった。「星泉」は当連載でこれまで、1種類を取り上げているが、正直に言って、記憶に無い。したがって、初蔵酒の気持ちでいただいてみる。

 酒蛙「甘旨酸っぱい。極めて果実感あり。例えるなら巨峰やマスカットなどブドウ系。フレッシュな南国果実が弾けているようなイメージのお酒だ。極めてインパクトがある。これ美味しい。厚みあり、ふくよか、ふくらみがある。とろみあり、どっしり感もある。すげぇ!」
 仲居N子さん「アテ要らずのお酒ですね」
 酒蛙「すこし紹興酒の香りも。すこし微発泡を感じる。味にメリハリとシャープ感があり、極めてジューシー」
 店長「酒を売っている自分が言うのも変だが、久しぶりのヒットだ」
 酒蛙「実に美味しい。そして、くどさは無くキレが良い。だから、飲み飽きせず、飲みやすい」

 以前に飲んだ「星泉」は記憶に残っていなかったが、今回のお酒はずっと記憶に残るものとみられる。それだけインパクトが強いお酒だった。実に美味しいお酒だった。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「アルコール分17度、原材料名 米・米麹 国産米100%使用、精米歩合60%、原料米 夢吟香100%、酵母 5号、酸度1.8、アミノ酸度1.2、日本酒度±0、製造年月2020.2」。

 注目べきは5号酵母を使っていることだ。酵母は、糖分をアルコールに変える役目を果たしている。現在も使われている最古の酵母は、6号酵母だ。1930(昭和5)年、秋田市の新政酒造の醪から分離された酵母で、以前の酵母とは比べものにならないほど安定した醸造特性、また近代的な酒質が評価された。6号酵母がデビューしてから、日本の醸造方法は一躍、蔵付き酵母に頼る自然発生的なものから、醸造協会が頒布する培養酵母添加方式へと様変わりした。

 したがって、6号酵母以前の1~5号酵母は、今ではほとんど使われていない。その5号酵母を使って醸したのが、今回のお酒だ。注目すべき酒、と前述した理由はここにある。

 5号酵母は、1923(大正12)年ごろ、広島県西条(現 東広島市)の賀茂鶴酒造の酒母または新酒から分離された。発酵力が旺盛、さらに果実のような芳香(のちにいう吟醸香)で評価が高かった。1925(大正14)年から1936(昭和11)年まで、協会5号酵母として日本醸造協会から全国に頒布された。今回の酒が、極めて果実感豊かだったのは、酵母の特性によるものかもしれない。

 使用米の「夢吟香」(ゆめぎんが)は愛知県農業総合試験場作物研究部が、母「山田錦」と父「育酒1764」を交配、選抜と育成を繰り返し品種を固定。2010年に命名、2012年に種苗法登録された新しい酒造好適米だ。「奥」を製造している山崎合資(愛知県西尾市)など、愛知県の酒蔵でよく使用している。

 気になるのは、この酒の特定名称酒の区分。ラベルのどこにも区分が表示されていない。しかし、全国各地の酒屋さんのサイトはおしなべて、この酒の区分を純米吟醸と表示している。なぜ、ラベルに純米吟醸と書かないのだろうか???

 この蔵の主銘柄は「冠勲」「星泉」。その由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。「『冠勲』は冠や勲章を与えられるような立派な酒になるようにとの願いをこめて付けられた名前。『星泉』は、仕込み水に使われている井戸に映る星から「星泉」、という名前が付けられた」

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