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異色経歴の脚本家・一雫ライオン氏、処女作で号泣必至の一冊 売れない俳優から転身 

2017.10.7 10:00
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小説家デビューを果たした一雫ライオン氏 (C)ORICON NewS inc.
小説家デビューを果たした一雫ライオン氏 (C)ORICON NewS inc.

 売れない俳優から人気脚本家に転身を果たした一雫ライオン氏(44)が初の小説『ダー・天使』(集英社)を発売した。身近な存在の生と死から着想した一冊は“人前で読めない”と言われるほどの感動作となり、話題となっている。売れない俳優時代から脚本家となった理由など包み隠さず語ってくれた。

【写真】腕を組んでポーズを決める一雫ライオン氏

■全く売れない俳優生活が一転 人気脚本家に

 一雫氏は「35歳まで全く売れない俳優をしておりました」と、あっけらかんと振り返る。それが映画『サブイボマスク』(2016年)、『イイネ!イイネ!イイネ!』(17年)などを手掛ける人気脚本家となった。「とあるキッカケがあって脚本という仕事を始めさせていただいた。幸いなことに役者では19年間、うんともすんともメシが食えなかったんですけど、脚本を始めたら食べられるようになった」と一笑した。

 脚本家として確固たる地位を得ているが、書き下ろし小説で腕を試すことになる。「(脚本が)仕事として順調に成立してきたんですけど、ちょっと前ぐらいから、このままだとよろしくないなって思いだした。脚本も俳優と似ているところがあって、受ける仕事なんですね。映画を作るのは安いお金じゃないから、オリジナル作品であっても監督さん、プロデューサーさんとみんなの意見を聞いてやっている。クレジットに名前があるのは1人なんですけど。これが一生続いてもいいのかと思った」。

 仕事に満足しているが、不安もあった。「書くことが好きだから書いている。一方で44歳で家族もいますからメシを食わせなきゃいけない。その中で何か自分は面白くないなって思う企画でも、“メシを食わせなきゃ”ってなってやり始めたときにおかしくなるなって思ったんです」と小説を書き始めた理由を説明。「1から10まで自分で責任が持てる、自分が本当に書きたいと思うものを書くということをしていかないと自分の中で整理がつかないと思う。なので、どうしても小説を書いてみようと思った」と熱い胸のうちをさらけ出した。

■『ダー・天使』は登場人物が全員熱いハートフルな作品 自身の人生を重ねる

 通り魔事件に巻き込まれて幼い娘と妻を残して死んだ男が天使になって家族を見守る。夫、父がいないことで家族は苦労するが、自身は何もできない歯がゆさを抱えながら、見守り続け…、という物語。不慮の事態で歯車が狂ってしまいながらも、登場人物は全員、必死に何かに向けて頑張る、涙なしには読めない一冊になった。

 そして、このストーリーのアイデアについて「実は昨年、親父が亡くなったんです。僕は結婚したのが遅くて39歳で籍を入れて40の年に娘ができた。親父は働くのが好きで結婚するちょっと前に仕事を引退して『第二の人生、楽しむか』ってなった。で、孫ができて喜んだ。苦労も迷惑もかけたんで、ちょっと楽しんでもらえるかなって思ったら娘が生まれて半年後に末期がんが見つかった。で、結局、3年闘病して亡くなった。娘は人間として上昇していく中、真逆に親父の心と体が朽ち果てていく。上と下の線が重なった。そのときに、このストーリーがふっと浮かんだ。不謹慎なんですけど物書きなので、書きました」と明かしてくれた。

 そこから一気に書き上げた。また、物語のキーになる神様は17歳の青年という設定。これにも一雫氏の人生が反映されている。「全然、重く受け取ってほしくないんですけど、2つ下に弟がいて、生まれつき自閉症という障がいがある。言葉もしゃべれないですし、お風呂も一人で入れない。5歳ぐらいになるといろいろ感じるじゃないですか。自分だけ普通で、なんで弟はしゃべれないんだろうと。そうなると自然と『神様はなんてヒドいヤツなんだ』と。スタートで神様を八つ当たりの対象として作っちゃったんです。そうなると神様は大人じゃないなって認識になった。子どもだから、まだ無邪気で人生のわけが分かっていないっていうぐらいの人じゃないと人類は作れないなって思ったんです(笑)」と生きてきた中で感じた思いを作品に込めた。

 そのため、主人公は自分自身、主人公の妻も自身の妻がモデルだ。娘・凜にいたっては自身の娘と名前まで同じ。「半分、私小説みたいなもんですね。自分の娘への愛情がきっかけでアイデアが生まれた。ほかの名前にするより、娘と同じ凜という名前の方が筆は進むと思った。書き終わったときに変えた方がいいと思ったら、変えようと。でも、書き終わって読み返しても、ほかの名前はしっくりこなかった。妻には実名にさせてもらうよって許可を取りましたけど。娘が物心つくと、なんてことしたんだと怒られると思う。そしたら、アイスキャンディー買ってやるから許してくれと誤魔化そうと思ってます(笑)」と照れくさそうに笑っていた。

■俳優スキルがなかったことで脚本家への道が開ける

 一方で「俳優への未練はないです」ときっぱり。「35歳で脚本家を始めたきっかけもエラい方に肩をトントンとされまして『40歳もあと5年だぞ。男でメシ食えないとどうしようもない。諦めたらどうだ』と言われた。覚悟はしていた。そのときに、ちょっと考えがあって1年間だけやらせてくれと。ドラマも映画も出る場所はないから劇団を自分で立ち上げて、そこで芝居をしてみて何もなかったら…、と逃げたんです」と2008年に演劇ユニット『東京深夜舞台』を結成した際のことを回想。「主役やろうと思って書き始めたんです。でも、みっともないんですけど、この主役はできないなって思った。2番手のコミカルな役も技量がないな、3番手、4番手と順に行って7番手までの登場人物に自分で書いててキャスティングされなかった。そのときに明確に思いました、売れないわけだって(笑)」と自虐した。

 そんな俳優が脚本家としてはトントン拍子に進んだ。「役者では何百本のオーディションを受けても通らなかったのに、脚本でラジオドラマのオーディションに送ったら通った。今度は新人脚本家オーディションに送ったら通った。これは、こっちだなと。好きか嫌いかの問題じゃなくて、こっちはメシの匂いがするってなりました」と隠れた才能に気付いた瞬間を明かしてくれた。

 父と娘という身近な存在2人をもとに着想した処女作。一雫氏は「大切な人がいる方、逆に大切な人がいない方も読んでもらいたい。人間の平等は唯一、死ぬことと思っている。親も子どもも友だちも自分もいつかは死にますから読んで何かを感じていただければと思います。乱暴に言えば、どうせいつか死ぬから、頑張ろうってことですね」と豪放磊落(らいらく)に宣伝。作家としてもこれから注目が集まりそうだ。

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