【トーハク見聞録 150年のきらめき】「染付竹虎文大鉢」 初期伊万里の代表作

2023年02月06日
共同通信共同通信

 創立150年を迎えた東京国立博物館(トーハク)が所蔵する磁器「染付竹虎文大鉢」(江戸時代・17世紀 坂本一二氏寄贈)について、横山梓研究員に話を聞きました。


   ×   ×  

「トーハク見聞録 150年のきらめき」、染付竹虎文大鉢の回(漫画、いわきりなおと)
「トーハク見聞録 150年のきらめき」、染付竹虎文大鉢の回(漫画、いわきりなおと)

 

 1610年代頃、現在の佐賀県にある有田で、朝鮮半島から渡来した陶工によって日本で初めての磁器が作られました。


 粘土(陶土)を原料とする陶器と違い、磁器は陶石と呼ばれる岩石が主な原料です。有田で陶石が発見されて磁器の制作が始まり、伊万里(現在の佐賀県)の港から積み出されたことにちなんで「伊万里焼」と総称されるようになりました。


 中でも17世紀前半の作品は「初期伊万里」と呼ばれ、「染付竹虎文大鉢」はその代表作の一つです。


 口径が45センチを超える大型の鉢を径の小さな高台で支えるアンバランスな形は、初期伊万里の特徴の一つ。磁器を焼く技術がまだ十分でなかった頃の作であることを示しています。この作品は三つの脚を持ち、染付大鉢の中では大変珍しく貴重な物です。


 内側には青い染付で、伝統的な題材を手本とした竹と虎が描かれています。虎のひげが長すぎたり、遠近法が甘かったりと筆運びも稚拙なのですが、職人が一生懸命描いていることが伝わってきます。


 そのことがかえっておおらかな味わいを醸し出しており、初期伊万里は1950年代頃から、愛好家に高く評価されるようになりました。(文の構成と漫画、いわきりなおと)


 【メモ】「染付竹虎文大鉢」は4月16日まで本館13室で展示。