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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(11)「歩」 左右の足をかいた字

2008.6.7 14:16

 これまで「手」や「人」に関連した漢字について紹介(しょうかい)してきましたので、今度は「足」に関係した漢字についてです。

 「足」についての漢字の基本は「止」です。「止」は足跡(あしあと)の形をそのままかいた漢字です。この「止」がもともとの「あし」を意味する文字でした。でも「止」が次第に「とまる」の意味に使われだしたので「足」の字が作られました。

 「足」は「止」に「口」を加えた字形です。この場合の「口」は神への祝いの祝詞(のりと)をいれる器「サイ」のことではありません。この「口」は膝(ひざ)の関節の皿のことです。

 「止」に膝の皿の形「口」を加えて「足」の字を作ったのですが、足に関連した漢字の基本はあくまでも「止」です。

 例えば「歩」という文字は左右の足をかいた字形です。古代文字を見ると分かりますが、「止」に、さらに左右逆の「止」をもう1つ加えて、左右の足を示して「あるく」意味になったのです。

 では「走」はどんな漢字でしょうか。これも古代文字のほうが、ずっと分かりやすいです。現代の字形は「土」と「止」を合わせた形です。でも古代文字で「土」に相当する部分を見てみると、両手を振(ふ)っている人の姿です。それに、足を示す「止」を加えて「はしる」意味となったのです。

 漢字は非常に体系的に作られた文字です。そのことを「先」の字を例に説明したいと思います。

 「先」の古代文字の上部をよく見てください。「止」の古代文字形をしていますね。前回「兄」という漢字を説明する際に、人を表す文字「儿(じん)」の上に、1つの字形をのせ、その機能を強調して漢字を作ることを説明しました。「見」「兄」「光」などがそうです。

 この「先」も「儿」の上に「止」(足)をのせた漢字なのです。つまり人の上に足をのせて「ゆく」意味を強調。そこから「さき」に行く意味となったのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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