メニュー 閉じる

47NEWS

文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(27) 「文」 朱や墨でかき加える入れ墨

2008.9.27 12:29
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加

 前回「文章」の「章」が入れ墨(ずみ)関係の字であることを紹介(しょうかい)しました。「文」のほうも入れ墨関係ですので、今回はこれについて説明しましょう。

 「文身(ぶんしん)」という言葉があります。これは入れ墨のことです。その文身の「文」は人の正面形の胸部に「×」や「心」や「∨」の形の入れ墨を加えた字形。「文」のイラスト部分に各種の古代文字をかいておきました。

kanji27.gif

 この文身は「絵身(かいしん)」というもので、朱(しゅ)や墨(すみ)などで一時的に文様をかき加える入れ墨です。絵身は誕生や成人式、結婚(けっこん)、死亡時などの際、儀礼(ぎれい)的な目的で加えられます。

 例えば「産」も、その絵身の文身に関係した漢字。「産」の旧字をイラストのほうに書いておきましたが、この旧字形でないと文身(絵身)との関係がわかりません。「産」の旧字は「文」「厂」「生」を合わせた文字です。「厂」は額や崖(がけ)などを表す字形。生まれたばかりの赤ちゃんの額(厂)に×などの絵身(文身)を朱や墨でかく儀式を「産」というのです。

 赤ちゃんに悪い霊(れい)が入り込(こ)まぬように額に絵身を加えたのです。日本でも子ども誕生時に額に文字を書く「アヤツコ」という儀式がありました。

 昔の成人式、元服に関係した文字が「彦」です。この旧字形は「文」と「厂」と「彡」です。「厂」は額。「彡」は美しいことを示す記号的な文字。額に美しい文身をかいて元服の儀式をすませた男性が「彦」です。

 最後は「顔」。「彦」の旧字形に「頁」を加えたのが「顔」の旧字「顏」です。「頁」は儀礼に参加している人を横から見た形。「顏」は男性が美しい文身をして、厳かに元服の式に参加している「かお」のことです。

 これらの「産」「彦」「顔」はいずれも現在の字形では漢字の意味を理解することができせん。戦後の漢字改革にかかわった人たちが、これらの漢字と文身の関係を知らないまま字形を変えてしまったのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

最新記事