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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(47)「労」 聖なる火の力で鋤を清める 

2009.2.21 12:14
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 農耕社会だった古代中国では虫害を防ぎ、やすらかな収穫(しゅうかく)を願うことが非常に大切なことでした。いろいろな方法で虫害を防ぐ儀式(ぎしき)をしていました。まず「嘉(か)」という字を紹介(しょうかい)しながら、それを説明しましょう。

「労」

 この「嘉」は「加」の上に太鼓(たいこ)の「鼓」の偏(へん)部分をのせた字。「加」は農具の鋤(すき)を表す字形「力」に、神への祈(いの)りの祝詞(のりと)を入れた器「サイ」を加えた文字。それにさらに太鼓の音を加えたのです。太鼓の音で大切な農具に悪い虫が付かぬようにお祓(はら)いをするのです。虫が付かないので「よい」の意味になりました。

 「静」も鋤を清める字です。現在の字形では鋤を表す「力」との関連性は分かりにくいので、古代文字を見てください。

 一番下の小さいフォーク状の字形は「手」を表しています。下から右上に伸(の)びているのが鋤。それを「手」で持っています。つまり「争」の部分は手で鋤を持つ形。そして「青」は青丹(あおに)から作る青色の絵の具で、器物を祓い清めるのに使われました。大切な農具を清め、収穫のやすらかなことを祈ったので「静」は「やすらか」「しずか」の意味になりました。

 「労」(勞=旧字)も鋤を清める文字ですが、その前に「栄」について述べたいと思います。

 これは旧字「榮」を見てください。冠(かんむり)の「冖」に「火」を二つのせた形は松明(たいまつ)を組み合わせた篝火(かがりび)です。それに「木」を加えた「榮」は篝火が明るく燃え栄えるさまを木のことに移して「花」の意味です。そこから「さかえる」になりました。

 そこで「労」(勞)に戻(もど)ってください。字形上部は松明を組み合わせた篝火。その聖なる火で「力」(鋤)を清める儀式を「勞」と言いました。

 もともと「勞」は神が「ねぎらう」「いたわる」意味でしたが、次第に「勤労」のように「つとめる」「はたらく」の意味となり、さらに働くので「つかれる」の意味となりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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